SNSのレスバトルを合気道で考える【サバの話:落合陽一VS堀本見を題材に】
ネット上のレスバトルや炎上みたいなものを見てきて、なんとなく傾向が掴めて気がするので書いてみる。
基本的に合気道というのは如何にして相手の下に入るか?相手を支えるか?というのが一つのテーマになっている。そしてたぶんレスバトルも同じだと思う。
というわけで今回は題材として最近よく燃えた「ゆる言語学ラジオ」堀本見と「筑波大学准教授」落合陽一のバトルを題材にします。
炎上までの経緯
堀本氏は今回の炎上で揶揄ナスなどと呼ばれるようになるほどの悪趣味な悪口有料ノート(月額500円)を運営しており、元quiz knockのYoutuberこうちゃんに関して書いた記事が本人の目に留まり、めでたく炎上した。
ところが事態は思わぬ方向へと動き、筑波大学准教授である落合陽一先生が突如参戦してきたのである。
実は落合先生は5~6年ほど前にこの揶揄ナスによって自身の出演する番組を茶化されて壮大なコントのようにされてしまい、さらにこの炎上の結果、悪趣味な有料ノートが誕生したというある種の始祖的な存在だったのだ。
ちなみにこの話の和解は成立しているので、誤解なきように。
落合陽一の戦略
今回の件で非常に興味深かったのは横から参戦してきた落合先生の取った戦略で、彼は長年サバの話をこすられ続けていたせいなのか、炎上しても構わない本人にいくら文句を言ってもムダだという判断の下、堀元氏の関係者を問い詰めるという戦法にでた。
これは炎上した人に対して職場や家族に直接連絡を入れたりする抗議の手段によく似ていて、落合先生自ら解説するには「後味の悪くなる」やり方なんだそうだ。
確かに今回は本人が意図したとはいえ落合陽一のやり方が気に食わないという人が比率的には多かったように思える。
落合先生は堀本見がYouTubeでコラボした大学教授や共演者、あるいは知り合いのインフルエンサーなどに「このような悪質なコンテンツをつくる人間を容認するということはそんな社会を望んでいるのか?」的な問いを投げかけて関係者を困惑させていった。
実際これには、堀本見じゃなくてもっと悪い奴いっぱいいるだろ、というツッコミも多々あったことを申し添えておこう。
決着
しかしこの戦略に根をあげた形で堀本氏が「落合陽一さん、僕のことは攻撃して構いませんが、周囲の人を攻撃するのはやめてください。」と題する記事を挙げて落合陽一に答弁した。
要約すると「裁判とかで争ってもいいけど全然メリットないし、自分が生意気でした申し訳ありません。対面での謝罪の用意があります」という感じ。
これに対して落合先生は「これで手打ちにしましょう」という感じでアッサリと和解し、騒動は終結した。
下を取った者が勝つ
SNSなどにおけるバトルにはひとつの傾向があると思っていて、それは相手より低い立場にいる者の方がその立場を理解した時は強いということだ。
「サバの話」の当時、落合先生は新進気鋭の会員制ニュースサイト『NewsPicks』で番組を持っており、対する堀本氏は『月額村づくりサービス』の運営や街行く人にバリカンで頭を刈ってもらう『フリーハゲ』の記事を書いたりしてたまにネットで話題になる虚無の人であり、ふたりの差は歴然だった。
だが「サバの話」はめちゃくちゃバズり『NewsPicks』は訴訟をチラつかせたりしてこの記事を消させようとしたが「持たざる者」であった堀元氏には効果がなかった。
カイジの「王は市民に強く、奴隷は市民には弱いが王を刺すことができる」というゲームのように、当時、持たざる者だった堀元氏はまんまと落合陽一という王を刺して名を上げたと言えよう。
どうやって下に入るか?
では何故、今回はダメだったのか?
それは落合先生が自ら下を取りに行った、つまり「持たざる者」がやるはずの動きをすべてをかなぐり捨ててやってみせたことと、堀元氏が地道な活動を続けてちゃんとした実業家となり地位が上がり「王」になっていたことが挙げられる。
「ゆる言語学」をはじめとするYouTube番組のプロデューサーとなり書籍を二冊出版し、文藝新潮で連載するなど社会的な立場が高まったのだ。
合気道での勝敗の分かれ目がそうであるように、こうした炎上でも相手よりも下の立場、つまり失う者が少ない方が勝てるのだ。
今回面白かったのは落合先生というのは失う物がバッチリあるのに、振る舞いとしてまるで失う物がないかのような戦略を取っており、AIのようだとすら言われる動きをしてみせたところにある。
つまりこれは実際の立場がどうか?という話ではなく、どちらが自分をあえて下げられるか?ということでもあるのだ。
下を取った方が強いことの実例
以下では他の炎上を参考にしつつ、下にいる側がなぜ強いのかを解説してみよう。※ここは長いので別に飛ばしてもいいよ。
ベテランち VS 令和の虎・岩井社長
これはベテラン中学生を名乗る超高学歴(東大理三)YouTuberのベテランち氏が、令和の虎に呼ばれてボコボコにされた人(聖杯)をゲストに招いてその時の動画を4秒だけ引用した所、岩井社長から暴言と共に2000万円請求されたという恐ろしい事件だ。
後に聖杯戦争と呼ばれるようになるこの事件は、ベテランち側が岩井社長の発言をひたすら茶化すことで色んなYouTuberを巻き込み、とうとう岩井社長の方が一切触れなくなるという形で収束している。たぶん。
これも客観的な立場としては東大の学生であるベテランち氏とそれなりの企業の社長である岩井氏とではかなりの差があった。
勝って当たり前かのような岩井社長側の「驕り」と普通なら謝罪して動画を消したりするところをポジションを理解して的確にネタにしたベテランち氏の戦略が功を奏した形だ。
上から潰せると思っていると、下のポジションをしっかりと取られて負けることがあるという好例かも知れない。ただ、やられた方は絶対に根に持つので逆襲される可能性だってあるにはある。
Corabo VS 暇空茜
こちらは東京都の補助金を受けていた女性支援団体Coraboに対して暇空茜氏が住民訴訟を起こし、Coraboが結成した7人の弁護団が国会議員の申請がなければ使えない議員会館で記者会見を開いた係争中の事件。
議員会館を借りて暗にバックに議員がいることすらほのめかされながらNHKなんかの取材も入ってる中、7人もの弁護士に訴えるぞと記者会見を起こされたので、本来ならこの時点で逃げてもいいくらいの状況だ。
ところが暇空氏は記者会見の内容をネタにしてYouTubeでライブしたりTwitterでネタにすることによって逆に1億円近いカンパを集めてしまった。
この問題もやはり高確率で相手を潰せると踏んだ記者会見が逆に下に潜りこまれてひっくり返された形だと思われる。
ピンチはチャンスと言われるように、圧倒的に不利な状況というのは視点を変えれば相手の下に潜りこんでひっくり返すチャンスでもあるということだ。
しかし人生は長い
さて、下をうまく取れば勝てる、ということの意味はわかって貰えると思うけれど、下を取り続けることは難しい。
堀元氏はいつの間にか立場が上がったことによって下に入られやすくなってしまったし、誰でも下のポジションを取っていたとしても、気づかぬ内に上がってしまうことはあるのだ。
そこに的確に自分を下に入れられる相手が攻めてきたなら、いつも通りに対処できると高をくくっていると痛いしっぺ返しを食らうことになる。
そもそも落合先生は本来は活動家がするような戦略を取るべき人ではない。それなのにそれを取ってくるということは損をしても構わないと思われているわけだ。
こうなってしまうと対等な関係での戦いは成り立たず、下から攻め込まれてしまう。
王と奴隷の立場を反復横跳びできるような人間はそうはいない。
ではどうしたらいいかというと、話は簡単で「市民」でいればいい。別に本気で争わなきゃいけない事なんてSNSの上にはそんなにないのだ。
何万人もの人間が見ている所でケンカをおっぱじめる意味などない。ほとんどの人にとっては悪影響でしかないわけで、あまりにも高いポジションに行こうとするべきではないし、かといって常に低い位置にいるべきでもない。
市民でいて、適時ポジションを変えられるようにしておけばいいのだ。
どこかのポジションに居着くということは、動けなくなり、相性の悪い相手に勝てなくなるということでもある。
そう、つまりーーーーーーーーーーー
合気道やろうぜってこと
ちなみにぼくも他人の悪口を公然と言うなんて絶対に許せないし、悪口をネタにするコンテンツに課金するような奴なんてマジで性格悪いやつだけだと思います。