
『ブギーポップは笑わない』作品と合気道のつながり方は同じ:上遠野浩平作品解説
合気道の思想を理解するにあたって上遠野作品を読んでいたことはかなりプラスになっていたと思う。
本当に大事なものというのは、実は泡のように他愛のないものだったりするからだ。
そんなわけで、合気道的な観点から上遠野浩平のデビュー作である『ブギーポップは笑わない』について解説してみよう。
合気道とブギーポップの共通点
まず合気道とは中心を探す武道だと思う。
表と裏、呼吸、天地、勝負、そうしたもののどちらでもない『はざま』を探す。
ブギーポップも同じく『はざま』にいる存在だ。
高校3年生の竹田くんの彼女、宮下藤花から泡のように浮き上がってきた人格・ブギーポップは世界の敵となる人喰いを探しているという。
何の変哲もない高校生活の日常と非日常の『はざま』として現れたのがブギーポップだ。
彼氏の竹田くんは最後までブギーポップと学校の屋上で言葉を交わしただけで、学校内に本当に人喰いや怪人がいたことは知らないまま終わる。

ただブギーポップという非日常の存在が、この世界ではどんなことも起こり得るということを証明するかのようにその後の話をつないで物語の中心へと迫っていく。
世界の繋げ方
上遠野浩平の作品は別々の物語が網のように交差する中から核心のようなものが見えてくる。
SF作家のコードウェイナー・スミスの影響や、ジョジョなどの漫画の影響がみえる部分があるけれど、それが一つの作品の中に放り込まれていること自体が異様だ。
SF、ファンタジー、ミステリー、能力バトル、伝奇、そういった要素が何もなしにひとつにまとまったりはしない。
それをまとめているのは緩いつながりだ。
「わかる人にだけわかる」ような緩いつながりそのものが上遠野浩平の作品の魅力だと思う。

ジョジョとのコラボ作品ではある意味でその手法が遺憾無く発揮されていた
相手との繋がり方
この作品の繋げ方は合気道で相手とつながることとも共通している。
強すぎれば相手に抵抗されるし、弱すぎれば簡単に切れてしまう。
抵抗したくても捉え所がなく、離したくても離せない、そんな繋がりをつくることが合気道の技においても大事なのだ。

『ブギーポップは笑わない』は普通ならひとつにまとめるのが難しい要素があるのだな、ブギーポップという異様で曖昧な存在がつなぎとめている。
これがある種のつながりの「妙」だ。
ハッキリとした強い関係性ではなく、曖昧で弱いのだけれど、無視できないつながり。そういう存在が狭間にいると、物語は円滑につながる。
これ以降のブギーポップは回を追うごとに曖昧なものがテーマとなって作品の芯になっていく。
そうしたものは合気道の思想を理解する上でも良いものだと思うので、また機会があれば解説していきたい。
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