ミスチル桜井和寿、スピッツ草野マサムネが好きだと公言する「小谷美紗子」とは何者か
昨日東京FMのラジオを聞いていたらリリーフランキーが、小谷美紗子の「自分」という曲を流した。1997年、20歳でリリースした小谷美紗子2枚目のシングルだ。
当時大学生だった私は、彼女(今の妻)に小谷美紗子のことを教えてもらって、一緒にコンサートにも何度も行った。札幌コンサートホールkitara小ホールで体験した弾き語りのコンサートは素晴らしかった。
小谷美紗子は去年でデビュー25周年。その記念としてサブスクも公開され、Spotifyで昔の曲が聴けるようになり、過去曲のミュージックビデオがオフィシャルyoutubeで公開された。「自分」も聞くことができる。
音楽の才能を持って生まれた人だということを、コンサートで弾き語りをする姿を一目見て理解した。圧倒されるというのはこういうことなのだろうと思った。ほとんど同じ年の小柄な女性がコンサートホールで見せる存在感。自分が何者でもなく、何をやって生きていきたいのかもわからない学生にとってはまぶしすぎる存在だった。
ただ、彼女の詩はストレート過ぎて、聞くものに拒絶感を与えてしまうところがある。説教くさいとか、正論とか、詩の内容が具体的過ぎて頭に入ってきすぎるせいで、音楽に集中できなくなる時がある。
去年の新聞記事で彼女が家族のことを語っていた記事があった。
この中で父親から言われた言葉が紹介されていて印象的だった。
父親はよく娘を見ていたということだと思う。デビューから25年間、第一線のアーティストとして活動しているのだから、売れていないとは言わないけれど、知名度はそれほど高くなく、知る人ぞ知る的なポジションに収まっている印象だ。父の言う「世間に受ける歌詞」を書く才能があれば爆発的に売れたのかもしれないけれど、彼女は自分を曲げてまで世間に受ける詩を書こうとは思わないのだろう。
最近(と言っても5年前)の曲に「手紙」と言う名曲があるのだけれど、その中でも次のような歌詞が出てくる
「手紙」の他の歌詞と比べるとここだけが完全に浮いている。具体的過ぎて正論で、説教くさい、デビューの頃から変わらない部分だ。
この部分の歌詞を変更するように周りのスタッフから再三アドバイスされたけれど、絶対に変えなかったという話を当時ZEPP札幌のライブのMCで話していた。私はそのエピソードがとても好きだ。
世間に受けるための歌詞を書くくらいなら、売れなくても自分の歌いたいことを歌う。彼女はきっとそういう人間なのだろうということが伝わってくる。
「手紙」はセルフカバーのときのMusicVideoがあってとても印象深い仕上がりになっている。子供の頃の8mmビデオの映像が使われていて、家族とのシーンがたくさん出てくる。私と彼女は同じ世代なので、子供の頃の田舎の感じが自分の記憶ともシンクロする。
小谷美紗子は、著名なアーティストが好きなアーティストとして名前をあげることが多い。スピッツの草野マサムネは、自分のラジオ番組で毎年クリスマスに小谷美紗子の「あなたはやって来る〜Dear Santa〜」を流す。番組が続く限りこの曲を流し続けると決めているそうだ。「これよりも好きなクリスマスソングはないから」というのがその理由だ。
Mr.Childrenは2015年の2マンライブツアーの札幌公演に小谷美紗子を指名した。ボーカルの桜井和寿がラジオで流れる「The Stone」というラブソングを聞いて衝撃を受けたのが小谷美紗子を知ったきっかけ、ということ。
小谷美紗子はクリスマスソングとか、ラブソングの方が歌詞の強さが和らいで歌がスッと入ってくる。歌詞の強さも彼女の持ち味なのだけれど、お父様の慧眼のとおり、彼女の社会に対する熱い思いが伝わりすぎる歌詞は、万人に受ける詩では、ない。
昔のmusic videoがオフィシャルyoutubeで公開されていたのでうれしくなって、自分なりにまとめてみた。25周年を記念してyoutubeやサブスクが充実したので、それをきっかけにして聞いてくれる人が増えたらうれしい。