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20240926 学振落ちたけどおじさん

 まず最初にこのNOTEをみた人が「今年の学振の結果が不安なあまりにこの駄文へのリンクを開いてしまった若手研究者」であったなら,春の桜じゃないけれど秋の桜の「サクラサク」が訪れること祈っておきます。


 学振の発表の時期のようですね。Twitter(現X)で,そろそろ「学振落ちたけど研究者になれたよ大丈夫だよ」っていうおっさん(通称:学振落ちたけどおじさん)が多数出てくるから気をつけろよ!というツイートをみて,自分の認識と全然違うなあとびっくりしました。
 というのも私の場合「学振(DC1,DC2,PD,SPDなど)はほんの一握りのスーパー優秀な人だけがもらえるもの」「学振とれなくても博士号を取れれば大学教員になれる可能性は高い」という認識だったので,学振に落ちることは哀しいことではあるけど死活問題ではないと思っていました。
 
 自分の時代を振り返ると,大学院の博士後期課程で同じ学年に心理系は16人(臨床系8名,非臨床系8名)であり,私は非臨床系8名のうちの1人でした。他の研究科に実験心理学系とか情報系の心理の人たちも同学年にいっぱいいたと思いますが交流がほぼなかったのでその人たちは割愛させていただきます。
 非臨床系8名の中で,確かDC2に通ったのが1人でした。その後その人はPDには採用されず,PDには他の1人が採用されました。そして現在,8名全員が大学や研究所で研究を続けています。
 そういう状況だったので,学振を取れたら給料がもらえてさらに研究費ももらえていいな~うらやましいな~というプラスのイメージがありましたが,それが取れないことで不安になるようなマイナスのイメージはなかったように思えます。

 私の時代に死活問題だったのは「育英会の奨学金がもらえるかどうか」であり,博士後期課程に進んで奨学金を申請してその結果がでるまでは本当にどきどきしていて,奨学金が出なかった場合はどれだけアルバイトをすればいいのかと不安でいっぱいでした。そのため,8名全員に奨学金がでるという掲示がなされたときは本当にうれしかった記憶があります。
 その次の死活問題は「博士後期課程単位取得中退後に免除職に就職が決まるか」であり,記憶では「博士後期課程後2年以内」だった記憶があります。博士後期課程を3年で単位取得中退したあと研究生として大学院に在籍し,生活費を得るため非常勤講師を何校も掛け持ちしていた頃は「この調子で大丈夫だろうか…」と不安がいっぱいだったので,あの時が一番「死活問題」だった記憶がありますし,ここで免除にならなかった人も結構出た記憶があります。
 
 では,現在の大学院生のおかれている状況はどうなのか…私は研究大学に勤務していないので大学院生と触れ合う機会がすくなく状況はわかりませんが,おそらくこんな感じなのではと思っています。
 
1.   大学院生の数は昔と比べると減っている
2.   奨学金は免除制度がなくなったが優秀者の免除制度ができより競争を増している
3.   学振は合格率は増加している
 
 
1.大学院生の数は昔と比べると減っている
 
 これは文部科学省のHPの情報からも明らかだと思います。PDFへの直接リンクしかなかったので画面キャプチャですがお許しください。
 

2.奨学金は免除制度がなくなったが優秀者の免除制度ができより競争を増している
 
 私の時代は「2年以内に免除職につく」のが条件だったので,同じ学年に何人いてもその基準をクリアしてその後15年働けば奨学金は免除になりました。この場合,お互いに蹴落としあう必要はなかったので気が楽だった気がします。しかし現在の奨学金の免除制度は,おそらく「各大学の各学科に全額免除と半額免除のおおよその枠が存在している」と思われるので,同じ学科の中での競争が激化しますし,数値になる活動へののめり込みを誘発させていると思われました。
 
3.学振は合格率は増加している
 
 これは文科や学術振興会のHPではみつけられなかったので科研費.comさんの記事を拝読しました。グラフをコピペ引用するのは怖いのでリンクを貼っておきます。
【書誌情報】
科研費.com 学振の採択率と傾向(2024年9月27日閲覧)

 基本的に,DC1,DC2は2010年あたりに30%台という大盤振る舞いがあったけどその後は減少し今では20%弱となっているようです。ちなみに2006年よりもっと前は約10%だったそうなのでこれは私の記憶と合致します。
 PDに関しては2004年で10%ちょいだったのがその後は微増傾向にあり現在では20%ちょいくらいになっているようです。
 
 ということで,私の時代はDC1,DC2,PDそれぞれ採用率は10%くらいだったので,「受かればラッキー」という感じで気楽だったのが,今では20%くらいになっているため,「受かる確率が2倍になり“あたるかも…”って期待する度合いも高くなってしまっているがゆえに落ちた時のショックが大きい」ように変化してきたのだろうかと思います。
 あとはまあ,分野による大学などへの就職可能性の違いも大きく,「学振をもらえたなら大学等への就職は確実にできる分野」もあれば,「学振をもらえても大学などへの就職ができるかは分からない分野」というのはあると思いますので,後者の分野にいると「学振がだめだった…それだと将来も…」と悲観的になるのは分かる気がします。
 でも,今学術振興会のPD,DC2,DC1の応募数と採用数の一覧をみてみましたが…こんなに採用数すくなければどの分野でも採用されたひとは確実につよつよ研究者になれ,採用されなかった人でも大学などのポストを得ることはできそうに思ったのですが…これは本当に分野によるのだろうなあと。

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