見出し画像

20250106 共食としての給食

 先日、飲み会研究から共食研究も調べる必要が出てきたことに書きました。そして本日CiNiiで「共食」で調べてみるとすごく有益な研究を発見できました。

【書誌情報】
辻本帆花・赤松大輔 2025 家庭と給食における食事中の会話と共食態度による小学生の生活満足度の促進プロセス. 日本教育工学会論文誌, advpub

 まだ2025年になって6日しかたってないのに発行されたのか…と思って調べると日本教育工学会の早期公開制度のもののようです。以下、要約を引用します。

 本研究では,家庭と給食における食事中の会話が積極的な共食態度を介して小学生の生活満足度を促進するプロセスを検討した.まず,先行研究をもとに食事中の会話と積極的な共食態度を測定する尺度を作成して因子分析を行った結果,食事中の会話と積極的な共食態度は,それぞれ異なる因子として区別された.次に,パス解析の結果,家族およびクラスメイトとの食事中の会話がそれぞれ対応する積極的な共食態度を介して独自に生活満足度を高めるプロセスが示された.最後に,Big Five性格特性が食事中の会話と積極的な共食態度の効果を調整するかどうか検討した.その結果,家族との食事の場合,食事中の会話の効果は協調性の低い児童において強まり,積極的な共食態度の効果は勤勉性の高い児童において強まることが示された.また,クラスメイトとの食事の場合,積極的な共食態度の効果は開放性が高い児童において強まることが示された.

 結果はざっとしかみれていませんが、「クラスメイトとの積極的な共食態度」と「家族との積極的な共食態度」の間の相関は.39であり、BigFiveでは外向性と.36、協調性と.35、開放性と.29で有意な正の相関がみられるけれど、勤勉性と神経症傾向との相関は有意ではないと。
 「家族との積極的な共食態度」の場合、外向性と.28、協調性と.20、勤勉性と.29で有意な正の相関がみられるけれど、神経症傾向と開放性との相関は有意ではないと。
 外向性と協調性の2つはコミュニケーション能力の2側面として取り扱われることが多く、これらはクラスメイト、家族いずれの共食態度にも正の関係を有している。
 神経症傾向はクラスメイト、家族いずれの共食態度にも関係を有していない。
 家族との積極的な共食態度に関しては勤勉性との関係があるが、クラスメイトは開放性との関係がある。
 家族との共食を楽しめるくらい良好な家族関係があると勉強頑張ろうって感じにもなれて成績の良さとかに関連がみられる可能性ある一方、クラスメイトとの共食を楽しめるのは「給食を一緒に食べるのは学校で求められているから頑張らないと」という意識ではなく、広く色々なことを体験してみようという意識の中で給食の共食も楽しんでみようとしているといった感じなのかなあと。
 このあたり、自分が飲み会に関して検討したものでも「開放性」の関連の仕方が結構面白いものを示していたのですごく参考になりました。
 この調査は小学生の給食を対象としていますが、おそらく小学校の給食はその時に決めれれている「班」で食べる一方、中学高校になると「友だち同士で席を移動してたべる」ことになるので、Big Fiveとの関連の様相もかなり変わる気がします。また、小学校の時の共食でみについた食事時の会話スキルなどは、中学校以下ではあまり関心を示さない可能性もありそうで、この研究を中学校や高校でしてみるとどうなるのかなあと思いました。

いいなと思ったら応援しよう!