20231122 承認欲求とインスタ映えの関連を探る(2章)

 承認欲求とインスタ映えの関連を探るため,心理学の研究の中で承認欲求がどのように測定され検討されてきたのかを振り返ることにしました。
 具体的には,CiNiiで「承認欲求」を検索してきてでてきた論文より,査読誌掲載のものを中心に目を通し,問題と目的の箇所で定義や他の概念との関連の記述があればそれを引用し,方法の所で測定方法があればそれを引用して,結果の所で面白いものがあればそれを引用したいと思います…って結構本格的な手続きになのでちょっとどれくらい時間がかかるか分からないのが怖いです…ただ,祭と承認欲求の検討はしようと思っているのでこれは寄り道ではなく本道だと思っております。
 
 本日見つけたのは以下の論文です。
諸井克英 1986 大学新入生の生活事態変化に伴う孤独感. 実験社会心理学研究, 25(2), 115 – 125.

 

 調査実施の際に考慮すべき問題の一つに,「他者による承認を得るために社会的に望ましい方向に行動する傾向」,すなわち社会的承認欲求によって反応が歪む可能性が挙げられ る。そのような影響を排除するには無記名による調査の実施が望ましいが,後述する追跡調査では記名方式を用いざるを得ないという事情がある。
 ところで,記名・無記名についての明確な記述はないが,Russell et al. (1980)はMarlowe-Crowneの社会的望ましさ尺度が,工藤・西川(1983)はCPIの自己顕示性下位尺度が,それぞれUCLA孤独感尺度と有意な負の相関を示すとの結果を得ている。いずれも,それほど強い傾向ではないが(前者:r=-.203;後者:r=-.254),社会的承認欲求が高い者は孤独感尺度得点が低いと考えられる。したがって,記名方式による孤独感尺度実施の際に社会的承認欲求による影響の程度を予め調べておく必要があろう。

 承認欲求として社会的望ましさが取り扱われているのが自分にとっては新鮮でした。しかしよく考えると社会的に望ましい方向に嘘をつこうとしたりするのは確かに承認欲求だよなあと。
 そしてこちらも新鮮だったのが「社会的承認欲求と孤独感に負の相関がみられる」というものです。なんとなくですが現代の承認欲求は孤独感の高い人が持っていそうで,「リアルでの孤独感を埋めるためにネット上で承認欲求が高まる」というストーリーを持たれている人が多い気がします。そしてこの論文での測定では,「全体やA大学では社会的承認欲求と孤独感は無相関だが,B大学では負の相関」ということになっていました。この承認欲求と孤独感の関係は,所属していると思う集団によって変化しそうなのでこの2者の関係も追跡したいと思いました。
 
 ここからは余談ですが,私は学部生の時にこの社会的望ましさに興味を持っていて,それを質問紙で除去するための方法としてEPPSがすごいな~と思っていて,その流れでこの諸井先生の論文を学部生のことに読んでいたような記憶もわきあがったきました。これはうその記憶かもしれませんがなんだか懐かしいなあと。
 
 そして次に見つけたのが以下の論文です。
藤村美子・秋葉英則 1998 親子関係認知と承認欲求,達成動機との関わりについて. 大阪教育大学紀要 第IV部門 : 教育科学, 46(2), 167 – 179.

 

3.子どもの承認欲求を高めうる要因
 Lobel & Bempachatによれば,承認欲求の高い人は他者の承認を得んがために達成動機が高くなるというが,では子どもの承認欲求を高めうる要因とは何かというと,子どもについては社会的に不利な状況にあること(Crandall et al.)とされている。しかしながら,この社会的に不利な状況というのは, Crandall et al.がその研究結果(社会的望ましさ得点は,男子よりも女子の方が高く,年長児よりも年少児の方が高く,白人よりも黒人の方が高い)を概観して社会階層的に考察しているにすぎず,実際の生育環境の状況との関係から考察しているわけではない。また, Lobelは,排斥への恐れを育成したり,自尊心を低める子育て変数が,承認欲求と関わりがある(増加させる)と仮定するとともに,他者による承認の重要性を高め,社会的規範や習慣に従うという両親の教育も,子どもの承認欲求を増加させる傾向があるのではないかと仮定し,調査している。
 
 子どもの承認欲求の測定には「児童用社会的望ましさ測定尺度(Social Desirability Scale for Children : SDSC)」(桜井)を用いた。承認欲求の測定に社会的望ましさ尺度を用いることについては,社会的望ましさを定する質問紙で高得点の者は,他の人からの承認を得ようとして社会的に望ましい仕方で振る舞おうとする一般傾向をもっているということから,この得点は間接的に承認欲求の高さを示すものと考えられており,実際にLobelは,母親の承認欲求を測定するのにCrowne & Marloweの「Marlowe-Crowne Social Desirability Scale(MC-SDS)」を用いており,Lobel & Bempachatは,子どもの承認欲求を測定するのに,Crandall et. al.の「Children's Social Desirability Questionnaire(CSD)」を用いていることから,本研究においても,承認欲求の泚定に社会的望ましさ尺度を用いた。

 この論文でも,承認欲求は社会的望ましさ尺度で測定されているのは共通していると思います。そして「社会的に不利な状況にあること」という,あいまいですが自尊心を低める子育てなどと関連するような状況との関連が想定されているのは現在の承認欲求と似た感じがします。
 先日引用した森永先生の論文が1984年,そして本日引用した諸井先生の論文が1986年ですが,その次の藤森先生,秋葉先生の論文が1998年なのですが,その間に菅原先生による尺度化の研究があるはず…。承認欲求とは違う言葉だからCiNiiでひっかからないのかなと。
 菅原先生の尺度は絶対に見ておく必要があると思うので次回はそれをみることにして本日は2つの論文に目を通すだけで終わらせていただきます…このペースだと本当にどれだけ時間をかければ終わるのかちょっと怖くなってきました…既に承認欲求の研究歴についてまとめた論文やシンポジウムが存在することも把握しておりますが,一応それらは見ずに昔からたどりなおしてみたいと思います。

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