20240615 芥川賞の質の変化を検証する
先日,芥川賞の過去の受賞作をチャットGPTにまとめてもらおうと思ったら作家名と作品名がズレたリストが作られて,そのズレが「そんなのあっていいのか!」という絶妙なものが多くて笑えたことについて書きました。
で,なぜそんなことをAIにお願いしたのかというと,受賞者一覧をみていると「昔はけっこう該当者なしがあったのだなあ」と思ったからでした。
先日利用しようとした公益財団法人日本文学振興会の一覧は複数ページに渡っていて使いにくかったので,1ページにまとまっていたebookjapanのデータを参照することにしました。
【書誌情報】
ebookjapan 芥川賞 受賞作品一覧. (2024年6月15日閲覧)
エクセル形式にしてそこから「受賞者なし」の年数を抽出すると以下のようになりました。
で,これを1930~1935を「~1935」として5年刻みで該当者なしの年の数(上,下両方とも該当者なしの場合は2回と数える)でまとめてグラフにしたのが以下のものです。
これをみると「1980年代前半(1980~1986年)にかなり該当者なしが集中している」「2000年代になってからの該当者なしは2009年,2011年のみであり,それ以降は毎年出ている。」というのがデータで示されているのが分かります。
これはおそらく,1980年に入るちょっと前くらいから「従来の芥川賞とは違う毛色の作品の受賞」が増えてきて,選考委員の中でも「こんなものに芥川賞を与えていいものか」という悩みが存在していたから,該当者なしの連発があったのだろうなあと。
それで1980年代前半はすごくもめ,その後1980年代後半もその状況は続き,1990年代くらいからかなり1980年代以前のものとは毛色の変わったもののほうが主流になっていったのだと思います。
このあたり,選考委員の変遷などとあわせてみると考察できそうですが,私は小説は好きですが文学の知識はまるでないのでできないのが残念無念です。なんかでも,肌感覚でも1990年くらいで変化が固まった気がするのでそれを支持してくれるデータなのではと思います。
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