20240307 素人質問で恐縮ですが
タイトルの「素人質問で恐縮ですが」は、学会大会などでの質疑応答の時間に、実際には素人ではないその道の専門家が、多くはそれを隠しつつ意地悪だったり核心を突くような質問をすることに関するネットミームになっている気がします。
まあでも実際のところ、大会の発表の部屋には同じ関心を持つその世界の専門家が集まるわけであり、全員がプロであればそれはまた全員が素人と呼べる以上、「自分の質問は素人質問ではない」と自信をもって質問できる人はなかなかいないからこそ「素人質問で恐縮ですが」と言わざるを得ないのもまた確かだと思います。
まあでも素人でも玄人でもその質問が誰かを攻撃する目的でなされない以上なんでも歓迎されると思いますが、実際に大会に参加していると「いい質問がバンバンでてくる会場」と「全然質問が出てこずお通夜状態になってしまう会場」って明確に分かれる気がします。
昨日の大会ではその両方を体験したので以下振り返ってみたいと思います。
【いろんな質問がバンバン出たもの】
・人数は30名程度
・話題提供者は3名で中心となる概念の専門家ではない
・中心となる概念の定義や類似概念との相違が明確になっていない
・質疑応答の時間が30分程度あった
この場合、「そもそも概念はどうなの?」「類似概念との違いは?」「測定法は?」「実践との結びつきは?」みたいなことがバンバン出てきて質問者も自分の専門とする概念の専門家として発表された概念とのもみ合わせをしたりして「いろんな視点の人が話し合うメリット」を感じることができました。
【全然質問がでなかったもの】
・人数は150人程度
・司会・企画・指定討論者がビッグネーム
・話題提供者も研究バンバンされてる優秀な中堅
・指定討論者からのコメントに話題提供者が返答した時点で残り10分弱
・司会・企画のビッグネームは司会と進行のみで発言がない
司会の方が「フロアから質問ありますか~」と丁寧に探ってくださったのですが、司会や企画のビッグネームが質問していないのに自分なんかが質問できるはずがない、だから司会と進行の先生から何かご発言をいただけないかとフロアの皆が縮こまっているのを肌で感じて当然自分もまだありませんとうつむくことしかできませんでした。
まあでも基本大会のシンポジウムやラウンドテーブルなどは後者の方になりやすく、特に指定討論者がキレッキレのナイス質問を連発してくださったあとなどはフロアからの質問など出るはずないのですよね。
若いころはそうした優秀な指定討論者の視点の鋭さをありがたがっていて、「話題提供者の発表内容は論文読めば理解できるから指定討論者の意見こそ重要」と思っていた気がします。
でも最近はもうちょいわちゃわちゃ低レベルな質問でもバンバン出るような発表の場を体験したいな~と思うことも増えてきた気がします。まあ、それは私が指定討論に呼ばれるような鋭い視点を持った研究者にはなれなかったからそう思うのだけかもしれませんが。
ちなみにCiNiiで「素人質問」で検索すると0件でした。「学会 質疑応答」で検索すると6000件以上でてきてこれは無理…と思ったのですがちょっとスクロールしてみると以下の文献が見つかりました・
【書誌情報】
宮永愛子・舩橋瑞貴 2023 人文系研究発表における質疑応答発話の特徴 : 発話文末に注目して. 専門日本語教育研究, 25, 19 – 26.
残念ながら本文は読めませんでしたがかなり面白そうだなあと。