見出し画像

20240809 無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)の心理学

 パリオリンピック2024は開会式の演出や食事への不満などあまり良いイメージがない感じで進んでおりましたが,トルコの射撃の銀メダリストの「無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)」が結構ポジティブな印象で話題に上がったと思います。
 射撃といえばファミコンの「ハイパーオリンピック」のクレー射撃のイメージしかなかったのでアバウトなイメージしかなかったのですが,以下のNHKの動画で実際に無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)が競技されているところを見て「これは無茶苦茶繊細で神経研ぎ澄ますしかなくて心理的な面が大きそうな競技だなあ」との思いを新たにしました。なんというか「画竜点睛を欠く」の竜の絵を描いて最後に目を入れる所だけを15回も繰り返させられるというか,1点物の博多人形を焼き上げて絵付けをして最後に瞳に命を入れる時の緊張が続くというか,すごく神経がやせ細る競技なのだなあと。
 Twitter(現X)での静止画やGetWildなどがバックのネタ動画でしか無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)をみたことがない人は,以下のNHKの動画の45分以降からの決勝を見ると「他の3人の選手が思い思いに動いているのに無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)のみずっと仁王立ちのままほぼ動かない冷静沈着さというか威厳」の様なものを感じるのではないでしょうか。

 Twitter(現:X)では,「個人成績では無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)が一番良かった」などという報告があったので,オリンピックの公式HPより決勝の結果を確認してみました。

https://olympics.com/ja/paris-2024/results/shooting/10m-air-pistol-mixed-team/fnl-000100--

https://olympics.com/ja/paris-2024/results/shooting/10m-air-pistol-mixed-team/fnl-000100--

 これみると本当に15回を7対7の一進一退のシーソーゲームで進み,最後の最後でセルビアが優勝したのが分かります。
 
 で,ここの個人成績のスコアについては「点数が高いほど真ん中に近い」と思うので,そのスコアの平均を出すと確かに無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)が一番高いです。

 ただ,1要因の分散分析(被験者内)で分析すると,F(3,42)=1.04(n.s.)なので,平均点においては誰かが有意に優れているわけではなく,本当に4人それぞれの実力が伯仲していたのが分かります。
 
 では,どこで勝敗が別れたのか…。

 よくわかりませんが,射撃の場合「それぞれの回での2人の合計得点が高い方が勝ち」を15回繰り返すようです。そのため,なんというか「1位と4位」よりかは「2位と3位」を取れる方が勝ちに近いように思われます。そうした視点で得点から尺度水準を下げて順位で比較すると…

 無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)は1位の回数が7回で圧倒しているのですが4位にも4回なっています。無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)のペアの女性は1位が1回で4位が4回なので一番成績が悪い感じです。セルビアの男性は1位は4回ですが4位には2回しかなっておらず,高い順位をキープで来ていたようです。
 これは平均値と標準偏差からもわかり,無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)とセルビアの男性では平均値は無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)の方が高いですが,標準偏差はセルビアの男性の方が小さく,よりばらつきが少なく成績が安定していることが分かります。とはいえども以下の折れ線グラフで「どの色の線が一番すごかったか」というのは視覚的にもピンとこないのがわかるように,本当に勝負は最後の運で決まったように思われます。

 で,最後にここからは数値に関係のない全く非科学的な感想を書かせてもらいます。
 この決勝で一番印象的なのは,第11回目で無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)のペアの選手が7.30と大きく外した所にあると思います。

 こうした若い仲間がピンチになると,年配としては「私が落ち着いて成績を維持することで安心させてあげたい」と自然に思えてそれで気負いなく頑張れたのではないかと思います。
 そのおかげもあって,10.80,10.70,10.40,10.60というほぼ真ん中を4連続で打ち抜くという好成績を出し続けられたのだと思います。
 しかし,こうしたほぼ満点に近い結果を4回連続で出し続けると「そろそろ外してしまうかも」とかいう考えが頭をよぎってしまうのが人の常…しかも,次の射撃は「7対7で迎えた最後の15回目」!
 そんな緊張が2倍どころか2乗されてしまう状況で,さらにおそらく先にうったトルコの女性ペアが10.40と良い数値を出したことで,「優勝できるかどうかは無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)の結果に純粋に依存する」というすごく責任のある状況になってしまったのだと思います。そのため,動画を見ると最後に打つ前はこれまで見たことがない感じで結構表情が崩れており,かつ腕の上がりも悪く打つまでに時間がかかっていたように思えます。
 試合後のインタビューで「あまり気にせずひょうひょうと打たれているように見えましたが」と聞かれていて「いやいや心臓バクバクだったんですよ。」と答えられていたようですが,この最後の射撃はまさに心臓バクバクになってしまい,それまでの冷静さを一挙に失ってしまわれたのだと思います。そしてそのため無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)の決勝での15回のうちワースト2の9.10という結果になり,金メダルを逃してしまったのが実情だろうなあと。
 
 なんかでも本当に射撃は運動競技であることは間違いないと思いますがメンタルの影響がものすごそうだと思いますので,何かしらの心理学的なサポートも得た上で次回のオリンピックにも出てもらって無課金おじさん(DIKEC Yusuf氏)に再びおじさんの星になってほしいなあと思いました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?