昨日読んでNOTEに書いた以下の論文,自分の関心に合致しすぎて1本のNOTEにまとめられなかったので前後編とし,今日は後半について書こうと思います。
渡邊洋子 (2013). 8 「祭り」という文化伝承・継承空間. 円環する教育のコラボレーション, 120-131.
論文の後半部分は,主に祭への参加の時期による学びや人間形成の違いについて記述されており,博多祇園山笠をみていて祭当日よりもその準備の段階の方が面白いなあと思っていたところなのでその点について学問的な説明を与えてくれてありがたかったです。
どの文も貴重なので引用ばかりになってすみませんが,正統的周辺参加が起きるプロセスについて,どのように各人に役割が付与されていき,役割を果たすことで各人がそれぞれに自主的に関与できたという自己効力感を得られるシステムが存在し,そこから何を学ぶことができ何をみにつけていけるのかについて細やかに具体的に,けれどもケース報告ではなく研究として検討しうる心理学的な概念や変数を用いて説明してくれているので非常に貴重だなと思いました。
こちらの記述も,準備期間とはまた違う祭という非日常の中で個人がどのように祭に没入していくのかについて自己概念や感情体験などから詳細に記述してくれているのでありがたいなあと思いました。
そして祭体験のあとに,そこで得られたものによっていかにして参加者が地域に結びつけられていくのかについても細やかにかつ検証可能性な用語で説明されていてすごいなあと思いました。
そして最後の,地域の中に「ハレ」と「ケ」をつなぐ「しかけ」があるかどうか?という記述についてですが,山笠の場合本当に終わった後の「ハレ」が一挙に消えて数時間,いや数十分後には「ケ」に博多の町が一挙に変身することを体験することを通じて,参加していない,みていただけの人も祭の参加者と同じような脱力感や倦怠感を体験出来,それが「見る山のぼせ」を大量に発生させることができているのでは?などと思ったりします。
このあたり,参加者だけではなく見学者にも地域への愛着を生むことができる祭りにはどのような「ハレ」と「ケ」をつなぐ「しかけ」があるのかについて,山笠を題材にまとめたいなと強く思いました。以前出して落ちた「見る山のぼせ」に関する科研費の申請書類を書き直しますかね~。