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20230306 祭と地域への「参加資格」前編

 「祭によって地域住人の絆が深まる」「祭に参加することで地域への参加がしやすくなる」という現象についてはこれまでもこの祭心理学NOTEでも紹介してきて,その効果は絶対あるよなあと思っています。
 しかし,そのあたりについて研究にもとづいて整理できていなかったので整理をしたいなあと思っていたら,今日CiNiiで調べて最初に出てきた以下の論文にそれがまとめてあったので今日はラッキーだなあと。以下,文献の引用の仕方を自分が読みやすいように変更させていただきましたが内容はそのままで引用させていただきました。
 
三浦 茜・薬袋奈美子 2017 都市型居住地の地域祭礼参加組織の運営実態からみる住民ネットワーク. 都市計画報告集, 15(4), 278 – 283.

 
 

 地域祭礼による新住民の地域への溶け込みに関する研究としては、神野ら(2008)が神社の祭礼の運営手法の違いから新住民が認知しやすい組織構成を考察しており、町会と氏子組織を織り交ぜた運営が、地域住民の自主的な組織運営になると述べ、マンション住民への祭礼の認知を高めていることを明らかにしている。
 また、祭礼の地域生活への展開に関する研究としては、前村ら(2013)により住民が祭りへ積極的に参加することがその後の地域活動への参加に繋がっていることを明らかにしている。
 祭礼運営が地域コミュニティ形成へ与える影響に関する研究としては、根岸ら(2007)が、地域の祭事の運営における他世代・町外者の参加が次世代育成、広域的な地域運営体制の形成を促していることを示し、町間の連携も祭事運営組織が可能にしていることを明らかにした。
 また、木田ら(2011)が、商店街組織が地域祭礼を復活させ運営する中で、個人的な繋がりから運営主体の繋がりが構築されることを明らかにした。
 祭礼への参加や運営と地域の空間認知の関わりに関する研究としては、赤澤ら(1998)による地域の空間構造と生活活動圏域からみた空間認知の関係に関する研究の中で述べられており、非日常生活としての地域祭礼が、日常生活での挨拶圏の広がりにも影響を与えていることを明らかにした。

(上記の記述に引用されていた先行研究)

 【有料】神野夏子ほか 2008 都市祭礼による地域コミュニティの再構築に関する研究 -二つの巡行が重層する大阪市桃園・桃谷・金甌・東平連合を事例として-. 日本建築学会近畿支部研究報告集, 13 – 16.
【有料】前村聡司ほか 2013 岸和田だんじり祭りと地域生活に関する研究 -岸和田市大北町を対象として-. 日本建築学会大会学術講演梗概集, 545 – 546.
根岸亮太ほか 2007 祭事が地域運営に与える影響に関する研究 -埼玉県秩父市における秩父夜祭を対象として-. 日本建築学会計画系論文集第622,129 –136.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/72/622/72_KJ00004786881/_article/-char/ja/
 木田恵理奈ほか 2011 商店街振興組合による祭礼運営を通した地域コミュニティ形成に関する研究 -高松市丸亀商店街 を事例として-. 日本都市計画学会都市計画論文集, 46(3), 481 – 486.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/46/3/46_3_481/_article/-char/ja/
赤澤宏樹ほか 1998 住宅密集市街地における空間構造と空間認知の係わりに関する研究.ランドスケープ研究61(5),705 – 710.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila1994/61/5/61_5_705/_article/-char/ja/

 有料記事というか建築学会の会員以外には読めないことの多い建築系の論文で5本中3本無料で読めるのはうれしい!って多くの大学だと工学部があって建築学会の雑誌も読めるのだろうなあ…。そういう意味では投稿料や掲載料がいらず有名どころはだいたい無料で読める日本の心理学の分野はありがたいなあと。んでもおそらくですが国内に関しては現在会員しか読めない雑誌も無料化されていくのではと期待しているのですがどうなのかなあと。
 
閑話休題
 
 ここまでのことをまとめると,基本的に「祭への参加は地域参加にポジティブな関係がある」とさまざまな研究で見いだされているといえると思います。
 まあでも,なんというかこの関係って,「そりゃ祭に参加できるくらいなら地域参加は容易で,地域参加の内容も良くなるよなあ。」という面もあると思うのですよね。大学で良い成績を取れた人は就職の状況も良いですって関係が見いだされた時,「経済的などの理由で大学に入学できない人などを考慮できてないですよね」と言われるのと同じような構造がここにはあるのではないかなあと。
 
 という点についてもう少し丁寧に説明していきたいのですが今日は時間がなくなってしまったので前後編として明日後編を書かせていただくことお許しください。

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