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20240420 参加者視点の山笠本

 これまで少しずつ山笠関係の書籍を読んできました。その大半は、山笠振興会会長を務めた偉い人や、長年山笠に参加されてきた各流の重鎮にあたりそうな人などが書かれれることが多かったと思います。
 当然、偉い人はこれまで山笠に参加し続けてきたからこそ偉くなっているわけで、参加者の視点を持ってはいると思います。しかしやはり偉くなることで「管理者」的な視点で見たり、「台あがりした山の上から舁き手を見下ろすような俯瞰的な視点での書き方になってしまい、すげ~と思いながら山を見上げる一般の参加者や見学者的な視点での記述はなかなかできないのもまた確かだと思います。
 では、初めて山笠を体験する人の体験記が面白いのかというと、確かに面白いのですがまた別の問題があるように思われます。よくテレビなどで「高校生や大学生の若い青年の初参加に密着」とか「海外から来た人の山笠体験!」などを取り上げらることが多いですが、それはなんというか「ストレンジャー過ぎる」気がして、なんというか何の前知識もない国に行って初体験に驚きまくるのは面白くはあるけれど、でもそれは結局は表面だけをなぞる浅い理解にとどまるだけで、『世界ウルルン滞在記』をみるときのような短い時間の出会いの別れというきまりきった感動パターンを国を変えてみるだけの水戸黄門状態になるような気がします。
 なのでそうした「玄人すぎる視点」でもなく「素人すぎる視点」でもない、ある程度の洞察力を有した人がけれども新鮮さをもって山笠に参加してその体験記を文章化してくれているといいのになあ~と思っていましたがこれまで見つけることができませんでした。
 んでも、本日発見!1994年に発行された以下の本はその存在は知っていたのですが今まで入手できていなくて、ようやく安価で手に入れる機会があって読んでみたらすごく自分の知りたい情報が存在していてうれしかったです。

【書誌情報】
プランニング秀巧社 1994 ぐんぐんわかる博多祇園山笠ガイドブック げなげな読本. ふくおか文庫.
(なぜかCiNiiに書誌情報がないのでリンクを貼れません。)

 プランニング秀巧社といえば『シティ情報ふくおか』の出版社で、私も福岡に最初に住み始めた時は『ふくおかWALKING MAP』を買って非常にお世話になったよなあと。
 で、げなげな読本の編集チーフである長浜弘之氏が以下のような状況で参加されてその体験に基づきp.59~92の大ボリュームで書いてくださっているので貴重な資料だなあと。

「博多のコトば、雑誌でちゃ~んと紹介するとやったら、やっぱア、いっぺんは山笠にでらんといかんちゃないと?」
≪シティ情報ふくおか≫の好評連載シリーズ「FUKUOKAなるほど図鑑」の打ち合わせ中において、葦ペン画伯・中村洋一しはこう言った。正直なところ、こいつは胸に頭巾、頭にガチンと来た。福岡で生まれ育ち、地元のタウン誌で仕事をしている自分にとって、山笠はアキレスの踵であり、弁慶の向う脛だつた。つまり、日頃は地元通のしたり顔で記事を書いておきながら、山笠という伝統的祭りをほどんど何も知らなかつたのである。

 ということで、街を言葉で表現する能力にたけ、福岡についての知識も有している筆者がそれでも初めて山笠に参加するという状況で書かれたボリュームある記述は一見の価値があると思いますので山笠好きの人はぜひぜひ。


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