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20240905 自由で守られた場所としての学会大会

 新型コロナ禍において多くの学会が大会を成立するためにオンライン開催を実施しましたが,その後の開催状況はどのようになっているのでしょうか。

 私が知っている範囲では,2024年度の大会に関しては

日本心理学会:対面+オンラインのハイブリッド
教育心理学会:対面
社会心理学会:対面を予定していたが台風10号でオンラインに

 などと基本的には対面に戻した学会が多い気がしますが,日本学校心理士会などではオンラインとオンデマンドの併用で対面がないものも存在しているようです。
 基本的には日本心理学会のように対面とオンラインをハイブリッドで開催し,そのどちらも片手間にせず十分に参加できるものにするのがよいのでしょうが,そのためか今年の参加費は18000円とかなり高額なものになってしまっており,ちょっときついなあと思い始めたのも正直なところです。海外学会の大会参加費の馬鹿高さを思えば全然安いですし,日心の大会システムは使い勝手もそこそこよく機能もそろっていて「そりゃお金かかるのもわかる」となるものなのは確かなのでこの価格を問題視する気はありませんが。
 まあでも私はよほど日程の調整ができない時をのぞけば対面の大会を重視したいと思いますし,その方が自分には向いているなあと思います。
 オンライン開催のメリットとして,「旅費や宿泊費が不要」「会期の一部に用事があるときなども参加できる」などの参加するための経済的および時間的な負担の減少とそれによる自由度の向上を理由に挙げる人が多いと思います。
 しかしその自由度の高さは災いになることが多いことを何回かオンラインで参加して実感してきました。
 職場でオンライン参加していると,どうしても「いつもの仕事の中で学会に参加する」という感じになるので,没頭できないのを如実に感じるようになりました。シンポジウムの講演などを聞いていてもついつい仕事の連絡が入るとそれを優先させてしまうし,急な来客や電話対応なども無視する気にはなれないなあと。
 これは,映画をみるときに映画館で見ればそれがどんな駄作であっても最後まで見られるのに対し,自宅で動画配信サービスなどをつかってみているとスマホを見たり家事をしたり向いてないなと思ったら即他の映画に替えたりしてなかなか集中できないのと似ていると思います。
 あと,対面学会でよその地域に行くときは,出先で作業をしなければならなくなるのを避けるためにいろいろな仕事にけりをつけておこうとすることが多いなと思います。大会期間中に完全に仕事がない状態をつくるのは困難ですが,「出先で資料がなかったりすると詰む仕事」とか「すごく負荷が高くて全力をつぎこまないとできない仕事」などの優先度の高い仕事は出張の前になんとかすますぞ!と頑張れるのは出張があるからこそだろうなと。
オンラインの場合は,そういう調整なしでいきなり大会に参加することになるので,結構負荷の大きい仕事を残したまま会期を迎え,そのため仕事に専念してしまい大会参加がお留守になることが多いだろうなあと。
 でもそう考えると,大会が開催されることが多い東京の人はそうした「仕事からの隔離」の効用が得られることが少なくて大変だなあと思いますが,そういうこともあって昔から大会の開催地は全国持ち回りだったのだろうなあと。
 まあでもここまで書いたことをまとめると,学会大会で出張するというのは,日ごろの仕事というものから逃れて自由に自分を発揮できる「自由で守られた場所」としての大会会場 に行くためなのだろうなあと。
 こうした効果は学会の大会に限定されず出張全体に存在しそうなので出張の心理的効果などに関する研究がないかな…と思ってCiNii検索していると全然違ったのですが祭に関してすごく参考にしたい科研費があったのでそれを自分用メモとして挙げさせていただきます。

【書誌情報】

蘆田徹郎 1991 – 1992 祭りと現代社会-祭りと「祭り的なもの」に表れる現代人の共同性志向と非日常性願望-. 熊本大学 日本学術振興会(JSPS)


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