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20240419 日程調整の心理学

 複数の人間で共同して仕事をするときには、打ち合わせなどの日程調整をする必要があると思います。最近では、「調整さん」などのサービスもあって、調整のプロセスがみやすく客観的になり日程調整はしやすくなったように思えます。
しかし、こうしたサービスが出てきたことで、昔より余計に「不公平感」や「我田引水感」を覚えることも増えたような気がするので、今日はそれについて考えてみたいと思います。

1.設置した人が有利すぎる

 設置時に「都合を聞く日時を設置者が設定したうえで他のメンバーはその選択肢に自分の都合を入力する」というシステムなので、設置者は自分の都合の良い時間のみを設定することができます。多くの場合、設置する人はその打ち合わせに必須の人であることは多く、その人が出席しないと成立しない場合もあるので仕方ない面ありますが、メンバーの重要性が均等な場合、設置者になることが自分の都合を通す最善の手になるため、「なんでお前が勝手に設置者になるんだ」という不満を他のメンバーが感じることもあると思います。

2.早く回答した人が有利である

 基本的に「他の人が都合の悪い場所を選ぶことで他の人の迷惑にはなりたくない」という気配りの心理が働くと思います。また、多くの人が「都合がよい:〇」としてつけている場合、それが集団規範的に働きそれへの同調圧力が高まると思います。その視点で言うと、最初にこたえるのが一番「他者への遠慮」をする必要がないため、心理的な負担が少なく自分の都合を主張できると思います。

3.雰囲気を読まない人のどんでんがえしに脆弱

 こうして前に回答した人の結果に配慮しながら回答が続き、「全員が〇をつけている選択肢が1つしかない」ような状況になって、「たぶんここで決まるのだろう」と思っていても、最後の人がそこに×をつけるとこれまでのプロセスが全部無駄になってやり直しになります。

 こうした問題を解決するには「全員が回答するまで他者の回答はみえないようにする」「後から回答する人も候補の日時を追加できるようにする」などの機能があればよいように思えます。プログラムの知識ゼロなので間違っている可能性高いですが、おそらく調整さんはサーバーなどを使うのではなくHTMLの機能だけで実現しているように思えるのはそのような機能の実装はむずかしいように思えます。また、「他の回答が見えない」のはいいとして、「後で日時の候補を増やせる」というのはゴールポストを無限に移動できる悪手ではありますので誰も喜ばないと思います。

 と、ここまで書いて「何か上手でみなが満足する日程調整の方法についての研究とかないかな?」と思って探してみると、そうした研究は探せませんでしたが心理学的に面白そうな論文をみつけました。

【書誌情報】
酒井耕平・松永崇秀・高橋健一・川村尚生・菅原一孔 2019 不愉快さを用いた入力促進システムの簡易実験. マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2019論文集, 663 – 669.

 時間がないので本のさわりしか読めてなくて済みませんが、日程調整の回答をしていない人の回答を促進するために、不愉快な通知を送るだけでなく、パソコンの作業ウィンドウにお化けを表示させて「仕事できない状況をつくることで回答を促進させる」というかなりの荒治療で効果をだしておりました。表示されるお化けが結構かわいくて、「猫が仕事の邪魔をするけどかわいい」状態になるかもしれないと思いましたが、やはりウィンドウが見にくいのは致命的のようで無事返信が早くなるという効果を出すことに成功されていました。
 このあたり、ネガティブな動機づけとか罰をさけるための動機づけとかありましたが、それが可能になるのは「仕事をしたい」という仕事への動機づけがあるからこそであり、勤労意欲の高い人たちが多くてよかったなと思った次第でした。


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