師匠より授けられた「子どもが主体となる祭」に関しては,師匠が主催されている研究会でも何度も話題に上がっています。研究会には中国と韓国から留学してきた後輩もいるのでその二人に「中国や韓国でそういうお祭はないのですか?」と聞いてみたことがありました。そしてその答えはどちらも「(子ども主体とか関係なく)日本的な祭というのは中国や韓国にはないよ。」というものでした。
自分も日本の能や歌舞伎のことは全く知らず,相撲なども全く知らないので「中国や韓国に生まれ育っても中国や韓国の祭のことを知らないから“ない”と答えたのだろうなあ。」とその場では思っておりました。
で,本日論文探しをしていて農村祭祀の日中比較をしている論文があったので読んでみました。
田仲一成 2018 神と人間の関係から見た農村祭祀構造の日中比較論. 日本學士院紀要, 72(3), 49 – 76.
論文を読んだ結論から言うと,後輩の言っていたことは正しく,日本と中国の農村祭祀にはあまり共通点がないため,「日本的な祭があるか?」の答えは「ない。」なのだと思います。
以下,論文より具体的な違いを引用していきます。
1.日本と中国の農村祭祀が異なる理由
これはもう引用を要約するまでもなく明確に書かれていますね。公家文化では中国との共通点があっても武家文化は異なるからというのはなるほどなと思いました。
2.日本と中国の農村祭祀の具体的な違い ~人名表読み上げより
これはまず図での説明が分かりやすいので図を引用させていただきます。
中国の場合神々と各家族が直接的に結びついているのに対し,日本の場合は村落共同体を媒介するというのも違いが分かりやすいなと思いました。
3.祭祀の目的
これは私の感想ですが,中国の祭が「ご利益」をダイレクトに祈るのに対し,日本の祭の場合は,その農村の地の神様に祈り,その祈りが農作物の豊饒などで返ってくるという感じで「地の神様」という媒介があるのが特徴であり,それが日本の祭を祭たらしめているのではと思いました。
4.祭祀の主体
5.祭祀における役務のあり方
この,日本では「農民自体が」という姿勢があるのに対し,中国では専門職を雇うという違いもそうなのだろうなあと納得しました。
こんな感じで日本と中国の祭の違いをみると,中国の祭はどちらかというと「正月の初詣」的なもので,賽銭と共に個々人がご利益を直接神様に祈り,縁起物を購入し,境内にいる獅子舞などに噛んでもらったりするものに相当するのではと思いました。
しかし,中国などでは日本の祭的な物がないとしたら…広い世界で日本の祭に一番近い祭はどこの何になるのかなあと。この手の国際的な視点が全然ないのが困りものですがゆっくりと関心は持ち続けたいと思います。