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20250131 大学教員の主観的幸福感

 私が大学教員のTwitter(現X)アカウントをいっぱいフォローしているからそう思うだけかもしれませんが,SNSでは大量の大学教員が研究や教育などについて発信していて,その楽しさと共に大変さなどについてよく語られていると思います。
 大学教員は研究を通じて達成感を得たり幸福を感じたりする一方,ストレスを感じて不幸に感じたりすると思うのですが,大学教員を対象にした達成感,主観的幸福感,教員ストレス研究ってあまり見かけたことが無いように思えます。
 高校までの教員に関しては,達成動機も主観的幸福感も教員ストレスもそれぞれ研究があるのに,大学教員を対象とした研究って思いつかないな~と思っていましたが以下の論文で検討されていました。
 
【書誌情報】
Rinas, R., Kiltz, L., Dresel, M., & Daumiller, M. (2023). How University Instructors’ Achievement Goals Are Related to Subjective Well-Being: A Cross-Lagged Panel Analysis. Journal of Educational Psychology, 115(8), 1141–1157.

 対象はドイツの大学の教員に限定されおり,かつ新型コロナの感染拡大期である2020年11月から2021年の2月に行われているので国と時期の特殊性を考慮して結果を解釈する必要はありますが,大学教員を対象に達成動機(Mastery,Performance,職務回避,他者との関係性)と主観的幸福感(ポジティブ,ネガティブ,職業満足,生活満足)を測定しているのは価値があると思います。

 現在までに、教員集団における達成目標とSWBの関係を調査した研究は比較的少なく、その大半は大学教員ではなく学校教員を評価したものでした。

 という記述もあり,その後の表で引用された先行研究も確かに多くは小中高の先生を対象としたものでしたので,「大学教員を対象とした研究を行う意義」はこの論文で指摘できると思います。
 ただ,本研究では小中高の先生を対象とした研究との連続性を重視されたからか,達成動機も主観的幸福感のどちらもかなり抽象的というか全体的に測定しているように思えました。そのため,今後「小学校,中学校,高校,大学の各教員の主観的幸福感の違いを比較する」ことが出来そうな測定の方法になっているため,「研究と教育と家庭のバランスが~」などの大学の教員のリアルなところを理解するのは難しい測定方法だったかもしれないと思いました。
 まあでもそういう意味では大学教員のリアルを測定する方法を考えて達成動機と主観的幸福感との間の関係を検討する余地があるとも思われましたので,学部や研究分野の違いの処理は難しそうですがどなたかやってくれないかなあと。

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