見出し画像

教師として、どのように本文内容を理解させる?

前回の記事で、「英語は全て日本語に完璧に訳す必要はない」、また「その対策として代わりに何が出来るのか」ということを学習者目線で紹介させてもらいました。(以下リンク参照)

今回は英語教師として「全訳をノートに書く」生徒に対して授業で何が出来るかを紹介させていただきます。また最後に、私の失敗談も含めて、生徒の気持ちになった留意点を紹介します。

まず英語教師として何が出来るか?

私たち教員は、一学習者として「全訳する」と莫大な時間がかかることや、英語は英語で理解をした方が良いというのは百も承知です。

また、Ambiguity tolerance「曖昧さへの耐性」は言語習得にとって必要な能力なので、「外国語を学ぶために全て母国語に完璧に訳す必要はない」というのも様々な研究で証明済みです。

それでは英語教師として、「全訳しないと気がすまない」生徒に対し、授業で何が出来るでしょうか?

先日(2023年3月某日)、都内で行われたCambridge主催の英語教員研修に参加した際、授業で使える具体的な対応策をのヒントがあったので、こちらでご紹介させていただきます。基調講演をされた敬愛大学教授の向後秀明先生のお言葉です。

「《英文を理解する》の定義に多様性を持たせる。」

基調講演にて

また、向後先生は以下のような具体的な方法を提示されていました。

① ストーリーの並び替え
② 要約
③ Q and A
④ リテリング

などです。また、当然ですがこういった活動にInformation Gapを持たせて生徒のコミュニケーション活動に「意味の伝達を含める」ことの大切さもおっしゃっていました。(→まつぼー解釈:つまり同じものを読んで、お互いに知ってる内容を、サマリーで言い合うというのは、意味の伝達が行われていないということで、不自然なコミュニケーション活動であり、効果的ではないという事ですかね?)

Paul Nation ポール・ネーションの主張

英語教育において広く名の知られている応用言語学者のPaul Nationも、英語教師が生徒に言語習得させるためには言語活動に以下の4つの要素を持たせるように主張しています。 

The Four Strands
① Meaning-focused input (MFI)
意味の伝達に焦点を当てたインプット
② Meaning-focused output (MFO)
意味の伝達に焦点を当てたアウトプット
③ Language-focued learning (LFL)
言語形態に焦点を当てた学び
④ Fluency development (FD)
流暢さの向上

What Should Every EFL Teacher Know? Paul Nation より引用

Information Gap(異なった情報を持っていること)がなければ、「意味の伝達」が行われませんもんね。逆に言えば、Information Gapを持たせれば、生徒のコミュニケーション活動に「意味の伝達」が入り、Paul NationがここでいうMFIとMFOがカバーできるということですね。2023年現行の学習指導要領のいう「対話的で深い学び」に繋がりそうですね。

まつぼーのおすすめアクティビティ

理解を促すという観点で、私の一番のおすすめは、登場人物がいる場合に限りますが「ロールプレイ」です。

これは私の学習者としての経験談ですが、実際に書いていないセリフや登場人物の感情を本文のシチュエーションから生徒に想像させることで本文理解がグッと高まります。また、ロールプレイを通じて自分の持ってる英語力を使わなければならないので実践力が高まります。

教師としても、ウォーミングアップ等でできるだけロールプレイの機会を設けていますが、生徒も登場人物になりきって演技をするので、やる方も見ている方もとても楽しくコミュニケーション活動ができます。ぜひ授業でもお試しください。

その他、いろいろな方法があるでしょうが、今後英語教師として多様性が持てると仕事も面白くなりそうだなと思う今日この頃。いろいろと勉強ですね。

注意点:生徒の気持ちになろう。

英語教師を10年以上やっていればたくさんの失敗をしますが、今回の件に関する私の失敗談を一つ紹介します。

全訳をノートに書く生徒に対しては、「全訳することを完全否定しない」ということがすごく大切です。
生徒の中には全訳すること自体を楽しんでいる生徒も少なくありません。そういった生徒には、熱く助言をしたつもりが、結果として生徒との軋轢を生みます。(経験談)

あくまでも経験則ですが、全訳をノートに書く生徒は、頑張り屋さんが多く、完璧主義が多い傾向にあります。また、丁寧にノートに書くということは莫大な時間を費やしているので、それを否定をされれば嬉しいものではありません。中にはその過去の努力自体を全て否定されたと考える生徒もいるでしょう。どんな人間にも承認欲求があるので、良かれと思って助言をしているつもりが、否定をしていると捉えられ、結果として先生自体を信用しなくなったり、英語学習自体が嫌いになったりもします。

生徒の努力を認めつつも、もし行き詰っているようだったら今後の別の学習方法として提案すると良いと思います。

学習アドバイスの方法を学ぶためのおすすめ書籍

最後に、補足にはなりますが、アドバイスの方法として具体的にはこの記事には書きませんが、こちらの本が非常に勉強になりました。『英語教師のための 自律学習者育成ガイドブック』(監修:関屋 康・Jo Mynard、著:加藤 聡子・山下 尚子)

英語版で内容として似たものはこちらです。
Reflective Dialogue: Advising in Language Learning (Research and Resources in Language Teaching) (English Edition)


さて、重なりますが、いろいろ勉強ですね。生徒の多様性を認めることもわれわれ英語教員としては大切だということですかね。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?