# 胃袋をつかまれるな!
「胃袋をつかむ」と言う表現があって、これが何だかピンと来ない。一体どんな顔したヤツが言い出したのかと探し出したい気分になる。料理で誰かの気持ちをつかむと言うほどの意味で使われているが、私には手のひらを大きく広げたプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックの姿しか思い浮かばない。幼い頃、プロレス好きの兄貴がよく「ストマッククロー!」と叫びながら私の腹を力まかせに鷲づかみして、私を苦しめた。そんな思い出ばかりがよぎってしまう印象の良くない言葉でもある。
味で気持ちをつかむのだから「味覚をつかむ」とか「味覚に鈴をつける」とか、味覚を目的格にした表現になるはずで、胃袋が目的格になるのは物量で気持ちをつかむ場合である。決して料理の腕前が主体となる表現ではない。ゆえに、「胃袋をつかむ」と言う表現は正しくない。最初に言ったヤツ出て来いと言いたい。そして無批判にそれを使った者も同罪だ。並んで正座して両手上げてバンザイして1時間そのままでいろと私は言いたいのである。