結婚2年目 インド在住35歳 体外授精に至るまで
子がいる人生も楽しいだろうけど、夫とふたり今の生活を続けていくのもなかなか楽しい。
自然な流れで、というのが一番良いんだろうけどこればかりはタイムリミットがある。選択する必要がある。
数年後に「やっぱり」と後悔するのは避けたいし「いつかは」みたいな希望と可能性を残しながら生きるのもすっきりしない。今トライしてだめであっても後悔はしないだろうし。自分自身を納得させられるポジティブな言い訳が欲しいのかもしれない。
さらには、女に生まれたからには、妊娠・出産・子育てというイベントを経験できるのであれば経験してみたい。女であることを楽しみ尽くしてみたいという気持ちもある。(現段階では絶対に子どもが欲しいといった強い欲求が出てきていないのだが良いのだろうか)
という理由で、私35歳(夫36歳)。予想もしていなかったが、体外受精をスタートさせることにした。
ちょうど一時帰国したタイミングで、軽い気持ちでふたりで行ったクリニックだったが、結果的に自然妊娠の確率がそこまで高いものではないということがわかった。
この結果からすると、本来であれば人工授精、体外受精とステップアップしていくようだが、我々は海外在住かつ、年齢的にそれほど時間もかけてはいられない。ということで体外受精一択になるようだ。
今なら、今クールに乗っかれるので最短で進められること、ビザの手続きの関係で日本滞在が延びたという条件も重なり「体外受精を始める」という決断に至った。
翌日から採卵に向け、卵子を育てるための注射が始まった。自己注射というのは、文字通り自分で打つようだ。震える手で注射を打つ毎日。自分ほと信じられないものはない。
予備知識もないまま、たくさんの説明を受け、ネットには大量の情報が溢れる中、ものすごいスピード感で進み、頭も気持ちも追いつかなくなっていった。
わたしは、35歳にしてもまだなお「まだまだやりたいことがある」という欲深い気持ちが全面的に出てしまう。きっとこれは何歳になろうと止まらない。しかしながら、幸いにも私は石原さとみでも北川景子でもない。社会的なインパクトを考えると彼女たちほどブランクを空けることに抵抗はないはずだ。と久しぶりな日本のドラマを見て心を落ち着かせた。
とにかく素晴らしい日本の医療
母国語が通じる安心感。採卵も静脈麻酔で一瞬だった。
ネットでは体外授精は大変だとか、金額の負担が大きいとか、ネガティブな情報や恐怖を煽ってくるもの、感情的になっているYoutubeの動画など多くを目にした。もちろん体外授精は大変ではあるものの、インド訛りの英語での「牛肉を食べているからだめなのよ」など、なかなか理解に苦しむ説明もされることもないし、血液検査で7万円を請求されることもない。明瞭会計!そして高額を支払っても次のアクションに結びつくような結果や説明もらえず、モヤっとすることがないのが本当に素晴らしい。
保険が適応され、市町村の助成金が申請でき、取り合えずミニマムで入っていた医療保険でも、採卵・胚凍結・顕微授精・胚移植などカバーされていることがわかった。(駐在員時代含め今も税金だけはしっかり納めているので、しばし恩恵をありがたく)体外受精を始めることは、想像していたより高いハードルではなかった。もっと壮絶なものだと思っていた。
そして、周りにも案外、体外受精経験者はたくさんいた。ちょうど通っていた歯医者の先生から「私もやりましたよー!早めに治療終わらせちゃいましょうね」とスケジュールを調整してもらえたり、友達からは「私も!」「うち3人とも体外やでー!」と。なんとも心強い。
全ては自己判断であり自己責任
凍結済の胚をいつお腹に戻すのかは、自己判断。何度かトライする必要はあるだろうけど、母親になるタイミングまで、ある程度自分で決めれてしまう。
その先1年くらいは、ビールも飲めない、大好きなコーヒーもがぶがぶできない。ピラティスに行き思いっきり運動することもできなくなる。パーソナルで鍛えた筋肉も落ち体型も崩れてゆくだろう。体調もどうなるのか、どれくらい仕事が出来るかもわからない。それをも喜んで受け入れることが出来ない私は母親になる資格はないんじゃないだろうか、こんな気持ちで胚移植に臨んで良いのだろうか。
「そんなに嫌ならやめようよ。決めていいよ。」だなんて優しさのようで全く優しくない夫の一言。嫌だから辞めるとかそういう問題じゃないんだよ。これだけのことをトレードオフでやっていくんだから、理解だけはしてくれよ、寄り添ってくれよ!と不満をぶちまけたところ、翌日美味しいパスタが出てきた。美味しいごはんは世界を救う。
自然妊娠だったらいろいろ考えなくてもよかったのに。という気持ちもありつつ、こればかりは自分でコントロールできる問題でもないので、進めるところまで、進めてみようと思う。これ以上先延ばさないで、後悔のない選択をしようと決めたから。
クリニック来院平均年齢42歳。不妊治療平均2年。妊娠まで6年。
「まだお若いので」とクリニックの看護師さんから何度か言われて驚いた。というのもクリニックからいただいた資料には女性の平均来院年齢は42歳と書いてあった。もちろん第2子のため、という方もいらっしゃる。私が通うクリニックは、最後の砦みたいな場所のようで、他院と比べると平均年齢は高いかもしれない。
またネットの情報によると、不妊治療は平均2年。保険適応内での治療を考えるとここで辞めるという決断をされる方も出てくる。そして、諦めずに続けて妊娠するまで平均6年というデータもある。
改めて、多くの時間とお金と労力を使い、頑張りが必ず報われるという訳でもなく、終わりが見えない中進んでいく妊活というものは、強い意志と忍耐力がないとできない。長期戦だとメンタルもたない。戦の期間を短縮させる唯一の方法は早めにクリニックに行くことのみ。
32歳までは妊娠率はあまり変わらないので、婚姻関係のあるパートナーがいて子どもを望む可能性があるのであれば、年齢が上がり追い込まれる前に行くのが良いのかもしれない。
また、採卵前だとクリニックからは2日後にまた来てくださいと急に言われたり、待ち時間も長い。採血結果待ちの時間も合わせると滞在時間平均2時間くらい。アポもミーティングも簡単にリスケする訳にはいかないから、会社員として働きながらだと、相当周りの理解がないと難しいのではないかと思った。でも採卵前の2~3週間調整できるのであれば問題はなさそう。
しかしながら、胚凍結が完了した途端、出勤前に本格的に英語学習に取り組み始め、仕事により一層精を出すようになり「パパになるんだ(願望)」と意識だけは高い夫の姿がなんとも微笑ましい。
あと福岡⇄バンガロールを何回往復するだろうか。もちろん毎度JALに乗れる訳もなく、バンコク乗り継ぎのエアアジアをフル活用。
ちょっと高価なネックピローとアイマスクのおかげで移動中の睡眠の質が劇的に上がったので、引き続きフットワーク軽めに動いていきたい。