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“中絶を減らす”という同じニュースなのに中国とアメリカでまったく違う背景

胎児が女の子であることが分かったら産まないなどの選択をする親が多すぎて、男女比が歪みまくって男が大量に余っている国があります。特に顕著な中国やインドの人口ピラミッドを見てそのことを知った娘は、大変ショックを受けていました。「世界中に男は35億!」のギャグが流行った時に、娘は夏休みの自由研究で世界の人口についていろいろと調べたのです。

一組の夫婦につき子どもは一人までという一人っ子政策を、中国は長らく続けてきました。一人しか産めないなら何が何でも男の子だと、多くの女の子が生まれてくることができませんでした。しかし、一人っ子政策も2015年には廃止。それどころか、ここにきて子どもを増やす施策に転じています。えげつない少子高齢化の未来が見え始め、これはヤバいとなったわけです。

そして、9月27日、中国国務院は、医療目的でなく行われる人工妊娠中絶の件数を減らす新たな方針を発表しました。女性のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の向上が目的だということです。正直、ちょっとよく分からない部分もありますが、女児だから産まない、子どもの数が制限されているから産まないといった悲劇が減るニュースだと、私は補助線を引きました。ここに来て一転、産めよ増やせよ圧力な側面も無くはない気もしますが。

一方で、9月1日にアメリカのテキサス州では、妊娠6週以降の中絶を禁止する州法が施行されました。妊娠6週目は、多くの女性が妊娠をまだ自覚できないタイミングです。

アメリカでは人工妊娠中絶の是非をめぐって、保守派とリベラル派の論争が昔から続いてきました。そんな中で、保守派のトランプ前大統領の指名によって最高裁で保守派判事が多数派となっていることもあって、テキサス州が定めた中絶禁止法を連邦最高裁は差し止めなかったのです。強姦や近親相姦による妊娠すら、妊娠6週以降は中絶を認めないという法律です。こちらは、女性が自分の人生を選ぶ権利を奪われる悲劇が増えるニュースだと、私は補助線を引きます。

“人工妊娠中絶を減らす”という同じ事象なのに、背景が違うと、そこに引くべき補助線がまったく変わってくることに、猛烈に考えさせられる二つのニュースでした。