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エンプティネスト
3泊4日の旅行に家族で出かけました。思えば3泊以上の旅は本当に久しぶりで、文鳥のモンちゃんが我が家に来てからははじめてのことでした。
1、2泊なら、水とご飯を多めに置いて、空調をつけっぱなしにしていけば問題ないのですが、さすがに3泊となると心配です。いろいろ考えた末、近所の動物病院のペットホテルに預けることにしました。
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旅行当日の朝、開院と同時にモンちゃんをペットホテルに連れて行き、一旦家に帰ってきました。さあ、戸締りをして、荷物を積んで。あれこれ準備をしながらも、いつもは鳥かごのある場所に何度も目が行きました。そしてその度に、モンちゃんの不在に驚き、ギョッとしていることに気がつきました。
つい先ほど預けてきたのだからいないのは当たり前なのに、私はひどく動揺していました。日々の生活の中で、ふと鳥かごを見たり、ちょっと話しかけたり、そんなことが如何に自然に行われていたのか思い知りました。そしていつかやってくるその日のことも。
「モンちゃんがいなくなるって、こんな感じなんだな。」
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時間を遡って、モンちゃんが我が家にやってきた頃のことです。私と娘は文鳥の飼い方の本を熟読していました。本によると、文鳥は健康なら大体8年、長生きして10年くらい生きるそうです。当時長女は9歳、次女は7歳。8年〜10年後というと、大学に進学したり就職したりする頃かもしれません。
「10年後、モンちゃんが死んじゃって、もし子どもも家を出てしまったら、耐えられるかわからないよ。」
私は冗談めかして夫に言いました。
奇しくも、子どもが家を出たむなしさで親が心を病んでしまうことを、エンプティネスト・シンドローム(空の巣症候群)というそうです。空っぽになった鳥の巣と、空っぽになった家族の巣。想像する空の巣は、おそろしく静かでした。「でも、そう簡単に子どもは大人にならないし、時は過ぎていかないものよ」と、自分に言い聞かせました。
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さて、あれからもうすぐ4年が経ちます。旅行の前の、ほんのひとときのモンちゃんの不在は、思いがけない打撃を私に与えました。
いとも簡単に時は経ち、モンちゃんは平均寿命の折り返し地点に差し掛かり、娘の身長は私を超えました。空の巣の幻がチラつく朝。
「忘れ物ない?靴下履いた?」
言われなくても全部わかっている娘たちに、いつまでも母鳥でいたい私が声をかけました。
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