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新宿まで歩く、新宿から歩く。#3
#3角度
東京にありそうな角度からTOKYOにありそうな角度まで色々と集めてみました。
同じものを共有したいけど出来なかったり、向かい合っていても全く分かり合えないことがこの東京では起こっているなと思っています。
第3回「角度」よろしくお願いします。
角度
好きな人との角度のないキス。
不意にされたあのキスは事故だったのかな。
感情が顔を傾かせるのだとしたら。
あのキスに感情はなかったのだと思う。
お互いに。お互いに?
あなたはせめてあってよ。
角度
都心の駅の改札はICカードをタッチしやすいようにタッチ面がナナメになっている。
改札を通るときの些細なストレスをも軽減してくれる。
ありがとう、鉄道会社さん。
でも、改札の前でICカードをもたもたと探してしまうの。
焦って改札を通る時にはICカードを上手くタッチ出来ず、
二度タッチするまでがいつもの朝。
ちゃんとタッチ出来るまで改札を通してくれないというより、
焦る私の手を握って落ち着いてと言ってくれる感じ。
鉄道会社さん、ありがとう。
行ってきます。
角度
手のひらで水面を叩くように背中から水に落ちる。
いかに水しぶきが上がらないように入水するかが高飛び込みの醍醐味なのに。
真っ赤な背中を見せて、
「日の丸は俺が背負う。」
の一言。
確かに背中は赤いけど、日の丸ではない。
と思いつつも、
「かっこいいね。」
と返す。
角度
首の角度がおかしいね、寝違えたの?
そう、寝違えたみたい。
いつもあなたがいる方に顔が向くようになってるんだけど、
昨日あなたいつもと違うとこで寝てたでしょ?
気づいてたけど知らないふりして寝てみたの。
イタタたた。
角度
「ここからならちょうど東京タワーが見えるんだよ。」
坂の途中でだけ見えるのが好きだった。
よなよな彼と坂の下にある青いコンビニに行く、
なんでもない時間を一瞬だけTOKYOにしてくれる赤いタワー。
著者紹介
松本人玄(まつもとにんげん)
1998年、愛知県生まれ。大学で建築。卒業後
吉本で芸人を3年。今は詩を書いています。
詩集「おばあちゃんとギャル」を今年の10月
出版予定。
Instagram @matsumotoningen
イラストレーション
立川恭太郎(たちかわ きょうたろう)
詩のお題を提供と表紙イラストを担当。
Instagram @kyotaro071