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マーケティング観察 #007 ビジュアルコラボレーションツール「Cacoo」(後編)
こんにちは。matsumotoo(@matsumotoo988)です。
前回は「Cacooが300万人ものユーザーを獲得し、海外ユーザー率が高い理由を考える」ということをテーマに調べて見ました。後編となる今回は「Cacooの顧客アプローチ戦略はどのようになっているか?」をみて行こうと思います。
前提:アプローチしている人はだれか?
まずは組織的にアプローチに関わっていそうな職種を調べてみました。大きな特徴としては、BtoBの場合にはほぼいるであろう営業/インサイドセールス担当者がいないということです。おそらく今までプッシュ型の営業はせず、Webマーケやコミュニティマーケで顧客獲得してきたと思われます。
・営業:あり(ただし、専任の担当者なし)
・インサイドセールス:なし(現在立ち上げ中・・・採用ページより)
・コミュニティマネージャー/マーケティング担当者:あり
・カスタマーサクセス/テクニカルサポート:あり
※上記はwantedly参考
Cacooはslackと同じマーケ戦略なのではないか?
あまりCacooのデータは公開されていないのですが、調べていく中で可能性として上がった有力な仮説です。では、slackのマーケ戦略を見ていきます。
このあたりを参考に考えると、slackの戦略は以下のようだと思われます。
(1)ベータ版で初期ユーザー獲得&製品ブラッシュアップ
(2)フリーミアムモデル×口コミによる自然成長
(3)ユーザーと対話しながら、サービス改善→コアなファンの獲得
(4)1つの小規模チームから、企業全体へと広がる際に課金ポイントを設定
上記のポイントとしては、slackもtoB/toCどちらの顧客もいるが、基本的には営業/インサイドセールスなどが介在せずにサービスが広がっていく仕組みとなっているところです。
※営業/インサイドセールスなしでもサービス拡大を続けられるところは、サービスの領域にもよりますが、(4)の課金ポイント設定が絶妙と思います(下記参考)
Cacooのマーケティングプロセスを考える
仮説ベースで考えたものになりますが、大きな枠組みとしては以下のような感じだと思います。
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ポイントとしては、以下のように感じました
・コミュニティが存在しているため、他サービスより口コミの効果がかなり高く、契約にも影響を与えている可能性が高い
・エンタープライズ版については、専任の営業が不在かつインサイドセールスもいないため、リードDBがうまく活用できていない可能性が高い
・ホワイトペーパーが見当たらないなどの課題は存在しているが、ヌーラボ製の他プロダクト利用企業からのニーズや問い合わせなどは一定数存在していそう(連携機能があるため)
Cacooのマーケ戦略の道筋立てる
サービスを調べていく中で輪郭が見えてきたものをまとめます(仮説)
(1)ベータ版リリース〜正式版リリース前まで
初期ユーザーの獲得&今後の開発する機能の見立てを行う。また約62,000人のベータ版登録ユーザーのうち、海外ユーザーが6割を占めていたこともあり、この頃から積極的な海外展開も検討していた可能性が高い
(2)正式版リリース〜リリース直後
正式版リリースのタイミングでサービスサイトの多言語化対応、また海外イベントなどで展示会や登壇(ピッチ)を行なったりしていた模様。またGoogle+ Hangouts、Wordpressなど他プラットフォームでも展開(特にHangoutsは海外メディアでも報じられ、反響があったようです)
(3)リリース後2年後〜6年目ぐらい
シンガポール、インドネシアなどアジア圏に進出。その後アムステルダムやニューヨークと欧米にも拠点を配置。以下の記事にあるように、海外進出時にもアジア圏ならシンガポール、欧州ではオランダのようにHUBとなる地域を選定しているようです。
まずは近場のアジアに進出しました。時差もあまりないし、アジア市場のハブということでシンガポールを選びました。その次はニューヨークです。
アジアで事業展開するなら、タイやインドネシアではなくシンガポールが拠点となる。欧州ではオランダがシンガポールのような立ち位置だ
また海外進出時は、コミュニティの活性化(ユーザー会の開催)やサポートの強化(現地スタッフ採用)など目的としており、進出地域のユーザー数なども考慮し拠点を選んでいるそうです。
また同時に製品自体も磨き込みをしており、「Cacoo for エンタープライズ」の提供していく中でDeNAやDMM、Cookpadなどのユーザー企業と協力して新機能開発などもやっていたようです。
( 4)2018年直近
フルリニューアルを実施。それにあたってもオンライン/オフラインでユーザーに丁寧に説明している様子が見られます。
またNuSpaceなどのコミュニティスペースなども用意し、ミートアップスペースやヌーラボ製品のセミナー開催やユーザサポートも実施していくようです(このあたりは日本のスタートアップの中でも先進的な事例みたいです)
まとめ:観察して感じたこと
今回は「Cacooの顧客アプローチ戦略はどのようになっているか?」というテーマで見ていきましたが、slackのマーケティング戦略と多少違うところもありますが、根本的な意図や方向性は大きくは違っていないのでは?と思いました。(Cacooの場合は、フリーミアムの対象ユーザーが個人のみだったりしますが...)
あと調べていて思ったことは、サービス側がユーザーとの接点づくりがうまいと感じました。例えば、ベータ版のサービスを10か月ぐらい公開していたり、ユーザー会のツアーをしていたり。それ以外にもコミュニティの力を生かして、個人ユーザーの増加=チーム/企業での契約率アップにうまく繋がる仕組みができているなど、ユーザーとビジネスの関連性が密なように思えました。
最後に今回はあまり触れてませんでしたが、Cacooはサブスクリプションモデルを採用しており、そのあたりも次回以降のマーケティング観察で見ていきたいと思います。
ちなみに企業の収益モデルと解約率/顧客満足度などのKPIについては、以下にわかりやすい記事があるので、ご覧ください。
自分なりに解説して見ましたが、もし何かの参考になりましたら、幸いです!
お読みいただき、ありがとうございました。
今後もマーケティングなどを観察していきますので、よかったらフォローください!
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