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JOJOと荒木飛呂彦先生とRoundabout(yes)

ジョジョのアニメ化10thを記念し、オフィシャルサイトに4回シリーズで掲載されている制作秘話(プロダクションノート)が興味深い。

ディレクター&監督はじめ生粋のJOJOマニアのリーダーを結集して作られた1stシリーズ。そこに込められ、そこから始まり現在のシリーズまで受け継がれる、JOJO愛とこだわりの詰まった初期設定の「バイブル」の存在・・など

書き出したら枚挙にいとまがないのだが、こと音楽、テーマ曲関連が書かれたVol.4で言及されている1stシーズン前半の第1部「ファントム・ブラッド」のEDテーマ曲として採用された

yesRoundabout

この曲が選ばれた背景の逸話には心を掴まれた。

荒木先生が大の洋楽ロックの愛好者であり、ジョジョに登場する人物やスタンド名には洋楽ロックのバンド、アーティスト名や楽曲名がネタ元となっていることは今更語るまでもないJOJOトリビアのいろはの""である。

そしてテーマ曲の選曲に荒木先生自身の関与があったことは当時から言われていたことだったが、OPテーマ曲制作の経緯で、制作側から求められたOP曲のイメージとして先生から提示されたのが「Roundabout」で、紆余曲折あってEDテーマ曲として権利関係をクリアし原曲が採用されたこと

その経緯が元となりその後もEDテーマ曲には先生が原作執筆時に聴いていた曲や、各部のテーマに沿った洋楽Rock,Popsが選ばれるようになったことなどが伝聞ではなく当事者の言葉として書かれている。

そこで荒木先生がこの曲を選んだ理由に思いを馳せてみる。

Roundabout」は日本語訳すると
「環状交差点」
日本人的にいうと「ロータリー」だ。

歌詞の和訳を見ると、さすがプログレ四天王の一角yesだけあって和訳であっても容易に解釈できないが
人生には紆余曲折あるものの日々の繰り返しの中で人々(パートナーなど)と一緒に居る。人生とは出入りはあっても同じ場所をグルグル回る環状交差点みたいなものだ。

ということのようだ。

また、曲自体も8分半に及ぶプログレッシブ・ロックで、メランコリックなオープニング、軽快なポップパート、激しいハードロックパートなどプログレらしい起伏に富んだ楽曲だ。

ジョジョの物語はジョジョとディオの血統が、このあと何代にも渡って結局交わって行く壮大な大河ドラマであり、第1部はその始まりの物語である。
輪廻転生や縁(えにし)を「環状交差点」になぞらえ、主人公達のジェットコースターのような人生をプログレな楽曲自体で表現する。

まさにジョジョの物語の最初のテーマ曲にはこれ以上ないチョイスであり、恐らく私の解釈のような説明が先生から制作側にあった上で、ここまでドストライクな楽曲を新しく作り超えてくることは難しいため、原曲を使用しようという結論に至ったのでは、と推測する。

最終的にこの曲は単なるEDテーマだけでなく、劇伴(劇中で使われるBGM)としても使われるに至り、劇伴の担当者もこの曲と物語との親和性に感化されたのか、シリーズの中で8分半の楽曲全てのパートを劇中で使い切るに至ったというエピソードには胸が熱くなった。

子供の頃(大人になってからもだがw)自分が好きな趣味や事柄ができると、何でもそれに結びつけてしまう・・
例えばサッカーが好きだとペットに選手の名前を付けたり、Tシャツやキーホルダーもボールがモチーフのものを選んだり。
日用雑貨ですらチームや選手に関連するものを選んだり、、など
同じような記憶が誰しもあると思う。

ジョジョの世界観にはある意味この中二病的な荒木先生の音楽に対する偏愛が惜しみなく反映されていて、その結果が人物やスタンド名へのバンドや楽曲名の引用であり、アニメ版テーマ曲での洋楽の使用である。

もっと大局的に見ると荒木作品の面白さや中毒性の根元には売れ線メインストリームの邦楽歌謡曲ではなく、ニッチになったとしても自分達のサウンドにこだわり抜く洋楽ロックのイズムがあり
かつ各部ごとに全く異なるテーマを設け、物語の展開や緩急もエピソードごとに変えてくるあたり
荒木飛呂彦というアーティストによる
各部が1枚のアルバム、各話エピソードがアルバム中の曲のようになっている・・
ミュージシャン的制作手法や発想にあると言っても過言ではないのではないだろうか。

今回のプロダクションノートはさながら
「荒木飛呂彦コンプリートBOX」の
"ライナーノーツ"を読んだような気分にさせてもらえた。

JOJO好きはマスト、アニメしか知らないファンでも充分に楽しめる内容なので是非読んでもらいたい。

まぁ、こんな濃い長文の読書感想文を書かされている時点で荒木先生のスタンド能力
「ザ・ワールド」
の術中にハマっているのだろう。

2022727 松村公太郎/BURRN!

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