量子コンピュータと量子通信 解答例【演習2.1, 演習2.2, 演習2.3, 演習2.4, 演習2.5】
案内人の涼子です🔑
量子コンピュータと量子通信Ⅰ(ニールセン本)の演習問題の解答を作ったので共有します!
演習2.1
$$
1\begin{pmatrix}
1 \\
-1
\end{pmatrix}+
1\begin{pmatrix}
1 \\
2
\end{pmatrix}-1
\begin{pmatrix}
2 \\
1
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
0 \\
0
\end{pmatrix}
$$
となり、少なくとも一つのベクトルの係数が0ではないので、定義よりこれらのベクトルは線形従属である。
演習2.2
$$
A=\begin{pmatrix}
a_{00} & a_{01} \\
a_{10} & a_{11}
\end{pmatrix}
$$
とすると、題意より
$$
\begin{align*}
A\ket{0} &= \ket{1} = 0\ket{0}+1\ket{1} \\
A\ket{1} &= \ket{0} = 1\ket{0}+0\ket{1}
\end{align*}
$$
と書くことができるので、
$$
a_{00} = 0,\ a_{01} = 1,\ a_{10} = 1,\ a_{11} = 0 \Rightarrow A=\begin{pmatrix} 0 & 1 \\
1 & 0
\end{pmatrix}
$$
となる。(これは入力の基底と出力の基底が$${\{\ket0, \ket1\}}$$のとき。)また、
$$
|+\rangle = \frac{|0\rangle+|1\rangle}{2}, |-\rangle=\frac{|0\rangle+|1\rangle}{2}
$$
という基底の要素を準備し、$${A}$$を左から作用させれば。
$$
\begin{align*}
A|+\rangle &= |+\rangle = 1\ket{+} + 0\ket{-} \\
A|-\rangle &= -|-\rangle = 0\ket{+} - 1\ket{-}
\end{align*}
$$
を満たす。教科書の式(2.12)を用いれば、
$$
A=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}
$$
で、これは行列Aの異なる表現を与える。
演習2.3
題意より、
$$
A|v_j\rangle = \sum_iA_{ij}|w_i\rangle,\ B|w_i\rangle = \sum_kB_{ki}|x_k\rangle
$$
である。$${|v_i\rangle}$$に$${BA}$$を左から作用させると、
$$
\begin{align*}
BA|v_j\rangle &= B(A|v_j\rangle) \\
&= \sum_iA_{ij}(B|w_i\rangle \\
&= \sum_i\sum_kA_{ij}B_{ki}|x_k\rangle \\
&= \sum_i\sum_kB_{ki}A_{ij}|x_k\rangle \\
&= \sum_k(BA)_{kj}|x_k\rangle
\end{align*}
$$
のように変形できる。(Bの線形性と行列の掛け算の定義を使用。)複素数$${(BA)_{kj}}$$は演算子$${BA}$$に対応する行列の要素である。
この式変形により、$${BA}$$の行列表現は$${B}$$と$${A}$$の行列積であることが示せた。
演習2.4
$${n}$$次元ベクトル空間$${V}$$の基底を$${|v_i\rangle}$$とする。また、線形オペレータ$${A:V \rightarrow V}$$を定義する。この線形オペレータの行列の形はわからず、$${|v_i\rangle}$$を入力し、$${|v_i\rangle}$$を出力するオペレータであるとする。すると、
$$
{A|v_i\rangle = 1|v_i\rangle + \sum_{j≠i}0|v_j\rangle}
$$
と式変形できる。これはクロネッカーのデルタを用いて、
$$
{A|v_i\rangle = \sum_{j}\delta_{i,j}|v_j\rangle}
$$
と書き換えることができる。これにより$${A_{i,j} = \delta_{i,j}}$$であることがわかるので、この$${A}$$は対角成分がすべて$${1}$$で、ほかの成分がすべて$${0}$$の行列であることがわかる。
演習2.5
$${\textbf{C}^n}$$上で内積$${(・,・)}$$は以下のように定義される。
$$
\begin{align*}
((y_1, ..., y_n), (z_1, ..., z_n)) & ≡ \sum_{i}y_i^*z_i \\
&= [y_1^*,..., y_n^*] \begin{bmatrix} z_1 \\ ⋮ \\ z_n \end{bmatrix}
\end{align*}
$$
これが内積空間かどうかを教科書の$${(1)~(3)}$$に対してチェックする。
(1) 半線形性
$$
\begin{align*} ((y_1,...,y_n),\sum_k\lambda_k(z_{k1},...,z_{kn})) &= \sum_iy_i^*\sum_k\lambda_kz_{ik} \\
&= \sum_k\lambda_k(\sum_iy_i^*z_{ik})\\
&= \sum_k\lambda_k((y_1,...,y_n),(z_1,...,z_n)_k)
\end{align*}
$$
(2) 共役対称性
$$
\begin{align*}
((y_1,...,y_n),(z_1,...,z_n)) &= \sum_iy_i^*z_{i} \\
&= \sum_i(y_iz_i^*)^*\\
&= (\sum_iz_i^*y_i)^* \\
&= (((z_1,...,z_n),(y_1,...,y_n)))^*
\end{align*}
$$
(3) 半正定値性
任意のベクトル$${|y\rangle}$$に関して、
$$
((y_1, …, y_n), (y_1,…, y_n))=\sum_iy_i^*y_i=\sum_i|y_i|^2 (\ge 0)
$$
等号成立は$${|y\rangle}$$がゼロベクトルの時である。
$$
(\textbf{0}, \textbf{0})=0
$$
おわりに
今回は演習2.1, 演習2.2, 演習2.3, 演習2.4, 演習2.5でした!