"生活の花"を暮らしに飾ろう
いつも通る道に生えている季節の野花や、子どもと散歩している時に見つけた名前のわからない草。そういう花を摘んで帰って、例えば家族を出迎える玄関に、普段使うキッチンに、飾ることが出来たら素敵だなあと思いませんか。
GOSHOENで新しく始まったお花の教室『暮らしと季節に花を飾る』は、まさにそんな身近な草花を楽しむための教室です。
教室の会場は護松園の書院の間。江戸時代に小浜を拠点に活躍した北前船の商人が、賓客をもてなすために建てた建物。数寄屋風に作られた書院の間は格式高い雰囲気で、お花を習うのにぴったりの会場です。
講師をしてくださるのは田中みさをさん。20歳の時に生花の根源である池坊に入門され、現在は池坊若狭支部長を務めていらっしゃいます。
そんな風格のある場所で権威ある方にお花を習うなんて…と緊張しちゃうという方もいるかもしれません。受講した方々もはじめは少し緊張した面持ちでした。
でも先生の自己紹介をきっかけに、少しずつ場の空気が和らいでいきます。
「私、高校しか出てなくて、なんの取り柄もないし、なんか専門的に学びたいなと思って池坊の学校に行ったの。…それから結婚して子ども産んで…子どもが成人したときに『お母さん、これからは自分のために生きなよ』って言ってくれて、私やっぱりお花をやりたい!と思って。それでもう一回、先生のところに習いに行くことにしたの。」
先生が普段されているのは華道の教室。今回のような教室は先生にも初めてのこととあって「今日は私も緊張しています。私に務まるんかなあって。でも挑戦してみようと思って、お引き受けしました!」とのこと。親しみやすい雰囲気に一気に魅了されました。
「お花って言ってもいわゆる華道みたいな、盛り盛りのものじゃなくても良いのよ。家にお花飾るのに、毎回お金かけられへんでしょ。道端に咲いている花がちょっと生けてあるだけでも、『わあ、ええなあ。素敵やなあ。』って思うでしょ。小浜にやったら、いっぱい(野の花が)生えてるじゃない。あんなん摘んで、ちょっと生けたら素敵でしょ。今日は、そういう”生活の花”をやりたいと思います」
庭の見事な松を愛でて、画家兼書家の貫名海屋が「護松園」と名付けた。長年管理者がいなかったため、植えられたものとと自生したものがある。お庭も来年から造園工事に入る。今は多様な植物が見られる期間限定のチャンス!
今回の講義で使用するお花は護松園のお庭を散策し、見つけたもの。
雑草がすぐ生えてきて管理が大変と思っていたお庭も、歩いてみるとたくさんの発見があることに驚きました。南天、紅葉、萩などの季節の草花が生えていることに気付きます。季節を終えた紫陽花の葉、アセビの葉などを見繕っている受講生の方々もいらっしゃいました。
「正解はないし、自分のセンスで楽しんで」という先生の言葉に背中を押され、皆さん庭のあちこちを探検してみます。私も、ツツジの枝に巻きつくアオツヅラフジという植物を見つけました。「あ、それ草刈りの時に絡みついて厄介なやつだ!」と男性スタッフたち。
普段煩わしい雑草だと思っていたものや目もくれなかった草花も、見方一つ変えるだけでお宝に見えてくるから不思議です。少し白っぽくなった紫陽花の葉を持っていた受講生の方に「良い色やなあ。枯れている葉も虫食いの葉もええんよ」と先生。正解はなく、自分のいいなという感覚を信じれば良いのだと思うと挑戦のハードルが下がりますね。
書院の間に戻っていよいよ生ける時間。お花を生けるのは初めてという方も大丈夫。手取り足取り先生がコツを伝授してくださいます!
少し迷ったら先生にどんどん質問を。「こっちを長くしたらこっちを短くね」「ここにちょっと野菊入れたらええんちゃう?」などちょっとしたコツを教えてくださいます。先生がちょっと一手間加えただけですごく素敵になり、喜ぶ受講生の方
「いいねいいね!」と和気藹々とした雰囲気でした!
私も初めての挑戦。先生は「正解はない」と仰るけれど、どこか正解を探している自分がいることに気がついて、お花を活ける時間は自分の内面を垣間見る時間だなあと感じました。そして終わってみると不思議と脳がスッキリ!!!
短い時間でもいいから、お花に向き合う習慣を暮らしに取り入れる。それはいつもの暮らしに一呼吸を置くとてもいい時間になると思います。
スタッフが仕入れてきた越前海岸の水仙を先生に生けてもらいました。花器は若狭塗。護松園に冬の彩を添えます。
お花を飾ろうと決めるといつもの道も、毎日の散歩も、前よりももっと発見が増え楽しいものになります。ちょっとした一工夫でも、家の中に張りが生まれたような感じがします。”生活の花”を楽しむことは、普段の生活を楽しむことにも繋がっているのですね。
次回の教室は1月12日(水)を予定しています。皆さんも暮らしと季節に花を飾る習慣を取り入れてみませんか。
(予約はこちら▶︎https://coubic.com/goshoen1815/648769)
先生、お越しいただいた皆さん、ありがとうございましたー!
photo by 堀越一孝
text by 嶋田愛梨