みんなを見守る八朔(はっさく)の木
GOSHOENは、1815年に建てられた護松園をリノベーションして、“みんなの別邸”として新たな歩みをはじめたばかり。
そのGOSHOENには、もうひとつ新たな歩みを踏み出したばかりのものがあります。
「ene COFFEE STAND」の前にある一本の木。もうお越しいただいた方は、なんでこんな所に一本だけ木が立っているんだろう?と、思われたかもしれません。
この木は、八朔(はっさく)の木です。
ene COFFEE STANDの目の前にある写真左の木が八朔の木
元々この木は、箸蔵まつかんでも取り扱いをさせていただいている「マルセイ箸店」の前にありました。
「マルセイ箸店」と言えば、弊社も協力させていただいた佐藤実紀代さんの著書『はしはうたう』の主人公、箸職人 的場政義さんが立ち上げた箸工房。筆で一膳一膳色付けを施した夜空や彩筆などの結晶シリーズは、そのお弟子さんである藤井さんが技を継いで、今も人気商品として輝いています。
「はしはうたう」の撮影時、本当にたくさんの八朔が実っていました
私が的場さんと出会ったのは、2018年に開催した「若狭塗箸の現場」をテーマとしたローカルラーニングツアーという旅の企画。小浜市の魅力である箸文化のひとつとして、的場さんの工房に参加者や講師としてお招きした写真家の浅田政志さんと一緒に伺い、職人の現場を撮影取材するというものでした。
取材中、工房の中で的場さんが楽しそうに絵筆を走らせ、一膳一膳の箸がみるみる美しく変身していく様にみんなで感動し、一気に的場さんの放つ魅力にその場が包み込まれたことを鮮烈覚えています。
ローカルラーニングツアーでみんなが釘付け記者会見状態になった時の様子
「この木はね、箸職人として独立した時、記念に植えたんですよ」
的場さんご夫婦と一緒に集合写真を撮影させていただく際、的場さんは優しく木を眺めながらお話ししてくださいました。
八朔の木の前でみんなで集合写真を撮影させていただきました
的場さんは、大変残念ながら2019年の7月にお亡くなりになり、「マルセイ箸店」も移転されることとなりました。その際、工事の都合上、八朔の木も切り倒されてしまうことに。
『はしはうたう』の取材中も、「今年はなり年。黄色く色づいてきましたねぇ」と的場さんと一緒に眺めていた八朔の木。この木を切り倒してしまうのは大変もったいないですし、とても悲しい。
そこで、GOSHOENプロジェクトのひとつとして、この八朔の木を譲っていただけないか奥様に相談し、ene COFFEE STANDの前に移植させていただけることとなりました。
丁寧に的場さんの工房前からene COFFEE STANDの前に移植していただきました
そして、この八朔の木が再び愛され、集いの木となるよう、この木の周りも生まれ変わります!
周りにデッキを張り、ene COFFEE STANDのコーヒーを野外で楽しんだり、お子さんと一緒にデッキで遊んだり、イベントを開催したり。
この八朔の木のもとにみんなが集まるスペース『GOSHOEN DECK』として改修することにしました。
杉谷建設のみなさんのおかげで日々変わる様子も必見です
GOSHOENと共に新たな歩みを踏み出した八朔の木。
的場さんの工房から移植する際には、すでに20年以上が経過し、もう実をつけないかもしれないと言われていた八朔の木でした。
でも、今八朔の木にはたくさんの小さな実がなっています。この実が黄色く色づき、みなさんと一緒に木のもとに集えることが今から楽しみでなりません。寒くなってくる11月頃でしょうか?
今はまだ小さいこの実が、黄色く大きく、たくさん実ってくれますように
GOSHOENにお越しの際には、ぜひこの八朔の木の成長も楽しみに、何度もお越しくださいね。
text & photo:堀越一孝