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友の想い、私の想い

ウォーキングポール

 薬局勤務する私のクライアントはその大多数が高齢者である。その中には足が悪く、歩くのが大変そうな方も珍しくない。そんな方たちに、私がお勧めしているものがある。「ウォーキングポール」という2本で一組の杖。私は「杖の試乗会」と銘打って、足の悪そうな高齢者を対象に、この杖を使って歩くことを試してもらっている。

 2本の杖を両手にもって突くと、身体が左右対称に保たれる。そして杖を使うことで姿勢が良くなり、歩く際に膝や腰にかかる負担を和らげることができる。

 薬局を訪れる高齢者を対象とした、この「試乗会」。企画者である自分言うのもなんだが、杖を体験する高齢者からの評判は上々だ。歩く負担が減ると楽しく感じるのか、明るい表情で杖を離そうとしない認知症の方。その方の表情はとても印象的で、私の脳裏に焼き付いている。また付き添いの人の表情も明るく感じれたことも印象深い。別の方からはこんな感想もいただいた。「これ、使って、今度少し遠くまで出かけてみようかな」勧める側の立場からすると、とても嬉しい反応だ。


「歩くことが楽しく感じてもらえたらいいな」、いつも私はニコニコしながらそんな高齢者たちの姿を見守っている。ある友人のことを思い浮かべながら…

KAIGO  MY PROJECT


 私はその友人を通じて、この杖の存在を知った。以前の記事でも少し触れた、KAIGO MY PROJECTというプログラムの参加者同士。それが私と彼女の関係である。MY PROJECTとして彼女はこんな素敵な夢を私たちに語ってくれていた。

「自分の地元に、困ったことをなんでも安心して話せる居場所をつくりたい。介護が必要な高齢者。その家族のかた。健康な方でもよい。だれでも気軽に立ち寄れる場所を。」。そして、こんなことも。「その場所を作るとっかかりとして、この2本の杖を使って高齢者といっしょに歩く時間をつくりたい。そこから高齢者との安心して話ができるきっかけを作りたい」彼女は生き生きと、そんな想いを語ってくれた。

 彼女のつくりたい場所と、高齢者との関係性。それは私が、薬局に来る高齢者と築きたい関係性と重なるように思えた。そんな居場所、私の地元でも作りたい。そう考えた私は彼女の夢を、ドロボーし始める。彼女が語ってくれた2本の杖を、彼女に無断で地域の高齢者に勧め始めたのだ。彼女の想いを私の地元でも実現させたい。それを言い訳にしながら。

友の想いと私の想い

彼女の夢をドロボーしていくうちに、私にもひとつの夢が生まれた。彼女の想いを私の暮らす街でも体現させたい。そしてお互いの地域でやっていること、つくっている居場所と利用している人の姿、今後つくりたい形…それを共有し合って、お互いの地域での「居場所づくり」を一緒に考えたい。

彼女は鹿児島在住。私は群馬。お互いに暮らす場所はおよそ1500㎞くらい離れている。彼女の夢見る居場所が、そんな遠方でも形にできたら面白い。
…なんていうふうに、心の広い彼女は私の犯罪行為(?)を許してくれるだろうか。

夢の実現のため、まずは1回、彼女にちゃんと(⁈)怒られておいた方が良いかもしれない。
「Tさん、勝手に夢を拝借してごめんなさい。深く反省は…あまりしてません(笑)」

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