ラグビーアイルランド代表はなぜ強いのか?選手育成の観点から紐解く

こんにちは!MATSUの留学日記です。一時帰国生活も3か月目に入り、今月でアイルランドに戻る予定が家庭の事情で9月になりましたが8月に始まる新シーズンに向けて準備していきたいと思います!

先週、アイルランド代表がオールブラックスを倒し初のNZシリーズ制覇・世界ランク1位の座につきました!ではなぜアイルランド代表がこんなにも強いのか?疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。今回は、アイルランドでラグビーをプレーしている僕がその強さを戦術とは違う選手育成の視点から紐解いていきたいと思います!これを見ればなぜ人口500万人・北海道ほどの小さな国がオールブラックスを倒し世界ランク1位になったのか?もしかしたら、その理由がわかるかもしれません。

アイルランドのラグビーシステム

アイルランドのラグビーシステムは日本のものとかなり違います。まずは代表戦を一番上としたレベルに分けて説明していきましょう。

日本の例

図1

アイルランドの例

図2


一般的な日本人トップ選手は高校を出たあと、強豪大学へ進学しそこのラグビー部でプレーし4年を経てリーグワンのチームへ行きそこで活躍して代表入りがテンプレートですがアイルランドは違います。

アイルランドは高校を卒業したあとに日本と同じく大学へ進学しますがラグビーはAll Ireland Leagueと呼ばれるアマチュアクラブ全国リーグに参戦しているクラブ(一部大学のチームもある)へと行きます。そこでU20もしくはシニア(年齢制限無し)のチームでプロの下部組織の活動と並行しながらアイルランドU20へと選抜されていきます。そこで活躍が認められるとプロチームの指定強化選手(アカデミー)となりURCと言われるリーグでプレー後に代表入りします。

昨シーズン僕と共にクラブのU20チームでプレーしたDaniel HawkshawとAitzol KingはAll Ireland LeagueやアイルランドU20で活躍し次シーズンからプロの強化指定選手となります。

アイルランドのプロラグビー

アイルランドのプロチームですがたった4チームしかありません。

レンスター

マンスター

アルスター

コナクト

の4チームです。数が少ないのでスコットランド・ウェールズ・イタリア・南アフリカのチームと競うユナイテッドラグビーチャンピオンシップ(通称URC 旧Pro14)に属しています。

名前の由来はアイルランドの4地方(東側のレンスター、南のマンスター、北のアルスター、西側のコナクト)から来ています。そのため現地ではしばしばProvince(地方)と呼ばれています。

一般的なプロスポーツチームのような独立採算制をとっておらず、アイルランド協会の4つの地方協会が所有しています。日本で言うところの関東協会や九州協会がプロチームを持っているような感じです。

アカデミーシステムとは?

アカデミーシステムとはアイルランドの4チームが独自に採用している若手育成プログラムです。毎年約7人の選手が指定強化枠として入団して3年で契約を結び、プロ選手となります。この期間に目覚ましい活躍をした場合はすぐに契約が結ばれて格上げされます。

このシステムのすごいところはなんとプロ選手と同じスコッドに入って活動していくことです。練習も試合も現役アイルランド代表選手たちと一緒に行います。
唯一の違いは給与の違いのみですがアカデミーに入った時点でセクストンやオマホニーなどとチームメートになり大学生くらいの年齢で彼らの強度を常に体感することになります。これは今後のラグビー人生において日本の同年代の選手よりもかなり成長できること間違いなしです。

現に今シーズンのマンスターはシーズン初頭に欧州チャンピオンズカップの初戦でイングランドのワスプスと対戦予定でしたが直前のURC南ア遠征でまさかのチーム内クラスターが発生し多くの選手がコロナ陽性となりました。その際に数名の出場できる選手とアカデミーの選手を大量起用し見事勝利を収めました。

先発の2・3・4・8・15はアカデミーの選手
彼らは日本の大学生と同い年
この世代から世界レベルの選手とプレーできることはU20の時点で日本の大学生と経験値上差が開くのは明白でしょう。デアレンデやオマーニー、バーンなどと一緒にプレーするのは日本じゃ有り得ない光景です。


レンスターも多くのアカデミーの選手にチャンスを与え結果、21人中15人が試合に出場しました。

そのうちの1人ジョー・マッカーシー(2001年生まれ)は今年レンスターデビューを果たし、頭角を表した結果見事マオリオールブラックス戦で見事アイルランド代表デビューしました。

外国人選手

アカデミーシステムにより強力な人材が多く現れるようになったアイルランド代表ですが外国人選手ももちろんいます。

バンディ・アキ、ジェームズ・ロウなどは居住ルールを満たしてアイルランド代表入りしました。彼らはクラブ強化のためにフルタイム・アカデミー選手では埋められない穴を補強するために加入しました。

しかしマック・ハンセンはアイルランドに来てわずか
半年ほどでデビュー。なぜかと言うと母親がアイルランド出身だから。

実は両親・祖父母がアイルランド出身の人は世界中に多く、オーストラリアでは700万人、アメリカに至っては3000万人もの人がアイルランドの血を引いています。

アイルランド4チームも南半球へ赴きアイルランド代表資格保持者をスカウトしています。

こういったこともあってか協会は資格保持者を見つけ育てるための「IQ(Irish Qualified) Rugby」というプログラムをユース世代から行なっております

考察

アイルランド代表がここ数年でかなり強くなったのはやはりバックドアを使った展開ラグビーを初めたことが大きな要因でしょう。

しかしながらこのシステムをハイテンポでやるには高度な人材が必要です。そこで選手を見つける・育てることが重要になってきます。

これらの成果はアイルランド協会が行なっているアカデミーや国外スカウトなどの強化プログラムがあってこそのボトムアップが成せる技だと僕は思います。その結果、誰かが欠けてもそれを埋められる選手が多いのです。

現にHOのダン・シーハンやヒューゴ・キーナン、マック・ハンセンなどはテストデビューからすぐに頭角を表していき主力となりました。


最後に

いかがだったでしょうか?今回はアイルランドのラグビーについて戦術・注目選手などから違った部分に焦点を当てて見ました。まだまだ紹介していきたいことはやまほどあるのでこれからはさらに細かい部分についても紹介できたらなと思います!ではまた!


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