[2023/02/08] ロンボクだより(85):不安のやり場(岡本みどり)
~『よりどりインドネシア』第135号(2023年2月8日発行)所収~
(編集者注)本稿は、2023年1月8日発行の『よりどりインドネシア』第135号に所収の「ロンボクだより(83)」の続きです。2018年に起きたロンボク地震の記憶をつづります。なお本稿は2023年3月発行の『よりどりインドネシア』第135号に続く予定です。
つい先程トルコで大きな地震がありました。一人でも多くの人々のご無事をお祈りします。今回は、私が地震後の生活で後悔したことを書きます。
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2018年9月3日。本震から30日。私たちの集落に赤十字が巡回医療サービスを届けに来てくれました。高齢者向けのバイタルチェックがメインで、脈拍・呼吸・体温・血圧などを測り、簡単な聞き取りを行っていました。何か気になる症状や違和感のある人は申し出て、必要なら薬をもらう流れです。
ところが、いつまでたってもなかなか医療サービスが終わりません。よくよくみると、おじいさんおばあさんたちが長い間話しこんでいました。ありゃりゃ、いつもの井戸端会議じゃないんだから。
赤十字の人たちもほかに行かねばならぬところがあるだろうと、適当な頃合いで話を切り上げてもらうつもりで、義母をはじめみんなが話している場所へ近づきました。
それにしても一体何の話をしているのやら。みなの声にそっと耳を傾けると、自分たちの心身のことだけでなく、家の、家族の、地域社会のこれからを憂いていました。あれはどうなってしまうんだろう、これはどうなるんだろう・・・。
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