[2023/05/22] 【資料】日誌から25年前を振り返る ~1998年5月のスハルト退陣前後で何が起こっていたか~(松井和久)
今から25年前の1998年5月21日、36年続いたスハルト大統領の時代が終わりました。権威主義体制、開発独裁などと称された「新秩序」(オルデ・バル)体制は、中央集権による国家開発が最優先され、政治や言論の自由が封じられてきました。ポスト・スハルトの時代は民主化の時代と見なされ、「改革」(リフォルマシ)が合言葉となりました。
25年前となれば、現代のインドネシアの若者の多くはまだ生まれていないか、幼児だった頃で、今や、伝聞でしか知らないはずです。25年の間に、事実は風化し、歴史は知らないうちに改変されていく可能性が高まります。当時、スハルト退陣で動いた学生運動のリーダーたちのなかには、現在、政党政治家となった者も少なからずいます。
2024年大統領選挙での大統領候補として、現時点でプラボウォ国防大臣(グリンドラ党党首)がトップになっています。しかし、彼が25年前のジャカルタ暴動の黒幕と見なされ、一時はクーデターのような動きを見せ、軍籍を剥奪された人物であることは、若者たちにほとんど知られていないのではないでしょうか。そのプラボウォを裁く側にはウィラントやユドヨノがいました。また、退陣後のスハルトは、子飼いだったはずの後継のハビビとずっと口をきかない状態でした。なぜ、プラボウォは復活し、スハルトはハビビと没交渉になったのか。
過去の歴史は消えていってしまうのです。プラボウォが復活できた理由です。
今回は、当時の私が残していたメモや以前勤めていたアジア経済研究所の資料などをもとに、日誌として、何が起こったかをざっと書き並べてみました。もちろん、ここでのメモ以外に、膨大なメディア情報もあり、本当はじっくり読み解く必要があります。25年前のスハルト退陣前後の出来事をどのように分析するかは、かなり腰を入れる作業になります。今後の課題としたいと思います。
まずは、読者の皆さんで25年前、スハルト政権が倒れる前後で何が起こっていたのか、下記の日誌資料をじっくり読んでいただければと思います。
ここから先は
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?