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[2024/09/08] ラサ・サヤン(56)~メテオール・隕石~(石川礼子)

~『よりどりインドネシア』第173号(2024年9月8日発行)所収~


ブリトゥン島

先月、ブリトゥン島へ2泊3日で旅行に行ってきました。ジャカルタから飛行機で約1時間、南スマトラ島のバンカ・ブリトゥン州にある島です。

島の広さは4,801 平方キロメートル(日本最大の島、択捉島は3,166.6平方キロメートル)で、人口は31.3万人(2023年末時)です。住民は、マレー系インドネシア人が主流ですが、福建や客家系インドネシア人も少なからずいます(人口のデータ無し)。

手軽に行けるビーチリゾートと言うと、今までバリ島しか頭に無かった私ですが、今回、ブリトゥン島に行ってみて、こんな手頃なところに素晴らしいリゾート地があるのを初めて知りました。

バンカ・ブリトゥン州は、バンカ島とブリトゥン島を含めて470の島が存在します。1850年から錫(スズ)の採掘が始まり、インドネシアは世界最大級の錫の輸出国となっています。その為、小~大規模な採掘現場が多々あり、森林破壊や海洋生態系への悪影響が問題化されています。海洋での採掘が拡大することにより50%以上の珊瑚が損なわれ、海洋生態系が破壊されています。

インドネシアの錫採掘大手で、国営企業であるPT Timah Tbkは、バンカ・ブリトゥン島において、2021年から人工珊瑚礁を海底に設置する社会貢献活動に尽力しています。

私たち家族は、ブリトゥン島に着いた二日目にガイド付きの「アイランド・ホッピング・ツアー」に参加し、木製のモーターボートで5つの島々を巡りました。スポットを変えながらシュノーケリングを楽しみましたが、水の透明度もさながら、色とりどりの珊瑚礁と熱帯魚が見られ、時を忘れるほど魅了されました。ブリトゥン島の珊瑚礁に生息する魚の数は23~66種いるそうです。

「アイランド・ホッピング・ツアー」でガイドさんが撮ってくれた写真

虹の兵士たち

ブリトゥン島を一気に有名にしたのが、2008年に公開された映画 “Laskar Pelangi”(ネトフリでの邦題は「虹の兵士たち」)です。2005年に発刊されたアンドレア・ヒラタ著のベストセラー小説を元に映画化されたものですが、インドネシアの映画史上に残る興行成績を記録した人気作品となっています。オリジナルの小説も500万部が売れ、海外19ヵ国語に翻訳されています。ブリトゥン島生まれの作者、アンドレア・ヒラタ氏の小学校時代の体験を元に書かれた小説で、1970年代の話です。錫鉱山が国有化されたことにより、ブリトゥン島の庶民の間には、大きな貧富の差が生まれていました。ボロボロの廃校寸前のブリトゥン島最古のイスラム教小学校に学ぶ貧困家庭の子どもたち10人が、困難な状況にありながらも自然の中で個性豊かに育っていく姿と、教育熱心な女性教師と子どもたちとの交流を描いた作品です。

巨大岩が立ち並ぶ海岸
(https://blog.tripcetera.com/id/tempat-wisata-di-belitung/)
映画 “Laskar Pelangi”のポスター
(https://www.tribunnewswiki.com/2019/07/20/laskar-pelangi-2008)

映画の中で子どもたちは、海岸の巨大な丸い岩の間を追っかけっこします。岩の上に登ると、きれいな虹が空に橋を架けています。10人の中で一番物知りで賢い男の子が皆に言います、『虹は空の光で作られるんだよ。陽の光が空気中の水の粒に当たることで7色になるんだ。ROYGBIVだよ』。それを聞いて他の子どもたちはきょとんとした顔で『ROYGBIV…』と繰り返します。ROYGBIVとは、7色の名前Red, Orange, Yellow, Green, Blue, Indigo, Violetの頭文字を取った頭字語です。

ほどなく岩の下から先生が皆を呼びます、『虹隊たちー、帰るわよー』。

隕石

“Laskar Pelangi” の撮影現場になった海岸で、虹隊の子どもたちと同じように岩の上に家族で立ち、お決まりの写真を撮りました。暫くゆっくりしていると、海にそり立つ岩の背景に夕日が沈んでいきました。

(写真)インスタ映えする夕刻の景色

「Laskar Pelangiビーチ」と書かれた観光名所のエリアにはお土産店が幾つかありますが、これといって買いたいものはありません。私の目を惹いたのは、路上で小さなガラスケースに入って売られている「メテオールの指輪」でした。

『メテオール』と言うと、フランス語で「流れ星」を意味しますが、インドネシア語では「隕石」を指します。「隕石」について全く知識のない私はネット検索してみました。宇宙空間にある小惑星や、その破片が地上に落ちてきたものを「隕石」といい、海に落ちたり、空中で粉々になったりして見つからないものを含めると、毎日、世界のどこかに落ちているとのこと。2013年にロシアのチャリャビンスク州で隕石が落下し、約1,000人が負傷したという事実も、この時に初めて知りました。日本にも、古代から隕石が落ちてきた記録が残っており、国立科学博物館に依ると、これまでに確認されている隕石は50個あるそうです。

CNNインドネシアのオンラインニュースに依ると、どういう基準かは分かりませんが、最も頻繁に隕石が落下する国として、イギリス、マダガスカル、日本、ニュージーランド、そしてインドネシアの5ヵ国が挙げられています。

インドネシアは環太平洋火山帯を擁する国の一つとして、近年、頻繁に流星群が出現しているそうです。流星群は、地球の軌道と交差する可能性のある軌道で太陽の周りを周回する、あらゆる種類の天然の固体物体です。これらの固体物体が小惑星の破片、彗星の破片、惑星の地殻/天然衛星の破片の形をとって落下することがあるとされます。

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