
祇園一力亭に登楼。襟替えの舞「黒髪」を観てまいりました。
先月11月になりますが、祇園の一力亭に登楼してまいりました。

そして西村の舞妓さんの槇沙子さんの舞「黒髪」を鑑賞してまいりました。「黒髪」は舞妓から芸妓へ襟替えする時に舞われる舞です。
非常に象徴的で格式の高い舞で、芸妓として新たな門出を表現する重要な舞です。
黒髪の 結ぼれたる 想いをば
解けて寝た世の 枕こそ
独り寝る夜の 徒枕(あだまくら)
袖は片敷く 夫(つま)じゃと言ふて
愚痴な女子(おなご)の 心と知らで
しんと更けゆく 鐘の声
昨夜(ゆうべ)の夢の 今朝覚めて
ゆかし なつかし やるせなや
積もると知らで 積もる白雪

背景も一力亭の中とは分からないようにしております。
実に残念。
襟替えは、舞妓が芸妓になる際の重要な儀式で、単に職業上のステップアップに留まらず、「黒髪」を舞うことで、精神的な成熟と芸妓としての新たな責任と覚悟を表明します。
謡には、恋の切なさや情念を表しつつも、内面の成長を遂げ、その過去の恋と決別する様も象徴しています。
舞を通じて未練や情念を昇華させるのです。
髪をかき上げ、黒髪の乱れを象徴するしぐさ、緩やかな動きの中にあるしなやかな品格、とても素敵でした。
また地方(ぢがた)を務められたまほ璃さんの謡い、三味線、これもまた素晴らしかったです。心の内に浸み入り、響いてまいりました。
日本の伝統芸能の尊厳というものに触れることが出来た一瞬でした。
舞を鑑賞するだけでなく宴席もあります。
メンバーは祇園の重鎮の武田さん、武田さんの古くからの大切なお客様、そして僕の3名です。
一力亭では2番目に広い20畳のお座敷に通されました。
出された料理の一部を写真に挙げますね。



芸妓さんが盃にお酒を注ぐ所作が素敵でした。
こんなに優雅で美しいお酒の注ぎ方があるのかと感動しました。

右から地方のまほ璃さん、芸妓のまめ樹さん、本日の主役舞妓の槇沙子さん、舞妓のまめ彩さん

そして芸妓のまめ樹さんが、「わしが在所」を舞って下さいました。
わしが在所(ざいしょ)はどこじゃいな
山の奥かいな 里も中かいな
松の緑の 影涼し
梅の匂いも ほのかにて
住み慣れし宿を立ち出でて
ついに帰らぬ旅人の
浪(なみ)にゆられて夢ばかり
これは故郷を遠く離れて生活する芸妓さんの心情に寄り添った謡なのですが、ただ故郷を懐かしむだけでなく、芸の道を選んだ覚悟の気持ちも内包した謡でもあります。
また鑑賞する側も、過去や故郷を振り返り、しばし現在の自分を見つめ直す暇を与える舞でもあるのです。
最後に記念撮影をしていただきました。(^^)v


今回は舞の鑑賞が目的でしたので、いわゆる「トラトラ」「金毘羅船々」などの遊び事はなかったのですが、これにつきましては武田さんが、次回はまた一力でこれらお茶屋遊びを交えた宴席にしましょうと誘って下さいました。
僕の希望としては、大石内蔵助ごっご~目隠しして鬼ごっこをやってみたいなあ(笑)
さて後口(あとくち)~2次会は武田さんがオーナーをされているバー・ルプーで行いました。

後口には槇沙子さんと同じ西村の芸妓、美羽子さんが参加してくれました。
槇沙子さんはまだ他のお茶屋でも「黒髪」を披露しなくてはならないため、後から参ります。
下の看板は京都駅の新幹線ホームから見える創味食品の広告です。
こちらは公開されている公告なので、美羽子さんは顔出しをしております。
可愛らしい美人ですよね。

さて、槇沙子さんがやってまいりました。この槇沙子さんの髪形を見てみて下さい。

これは先笄(さっこ)といいまして、この襟替えの期間、2週間だけ結うことの出来る髪形です。これは昔、結婚したばかりの女性が結う髪形でした。
これの意味するところは、舞妓さんから芸妓さんになるということは、芸に生きる道を選ぶために、結婚を許されない立場となることから、せめてこの襟替えの期間だけは、お嫁さんとなる疑似体験をさせてあげたいという意味があるとのことです。
この期間舞妓さんはお歯黒をつけるのですが、これも同じ意味があるわけです。昔女性は結婚するとお歯黒をつけるようになったからです。
さてさて宴もたけなわ~記念写真です。

向かって右が美羽子さん。左の女性はデンマークの方で、コペンハーゲン大学で日本語学を学び、日本に留学経験もある方です。京都の祇園の文化が好きで、自らも日本舞踊を習っていらっしゃって時おり来日されます。
今京都に来て遊んでいることをLINEしましたら、現れたのでびっくりしました。日本にいつの間にか来ていたのですね。
これまたすごい美人なのですが、お見せ出来ないのがとても残念です。

そしてこちらは向かって右が大本命の槇沙子さん。
東西の美人三人に囲まれて、おかげさまで寿命が延びました。
ありがたや。ありがたや。(笑)
ところで、ここであらためて先に掲げた美羽子さんの写真の出ている創味食品の広告の写真を見てみて下さい。
小さい字で読みづらくて申し訳ないのですが、この広告の文章を読んでみていただけますか。
こちらの文章をパクリまして自著「苔の下道」の広告文を考えてみました。

皆さま買って下さい。(笑)
ちょっとだけ聞いておくれやす。
「苔の下道」という御本、知っといやすか?
松井はんという方が著者さんで、あんまり知られてへんのやけど、
実は古文で書かはった小説なんどす。
でも話の中身は現代の恋愛というとこがとても面白うおすね。
古い日本の言葉ってほんま美しうて、そんな言葉がぎょうさん散りばめられとる御本どす。
そのはんなりとした感じが、うちほんに好きやわあ。
皆さまどうか読んでおくれやすね。
おおきによろしうおたの申します。
祇園 舞妓 槇沙子