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2024上田一人旅(どこかにビューーン!)

前々から使ったみたいと思っていたJR東日本の「どこかにビューーン!」。発着時間と駅を決めると、ランダムに行先を決定してくれる(乗車券等が割り振られる)というサービスです。貯まっていたけど使い道のなかった「JREポイント」を利用して申込できたので、新幹線代は実質無料!

妻と息子が不在の週末にぽっかりと予定が空いていたので、当日から1週間を切ってから思い立って申込。翌日に行先決定の通知が届きました。

行先決定!

おお!上田!
上田と聞いて真っ先に思いつくのは「サマーウォーズ」。僕が大学1年生の時に公開された映画で、ドハマりして何度も見、花札もしまくりました。むしろ、この映画で上田という地名を知ったくらいです(映画をみていた当時は、上田が実在する都市なのかどうかも判別できなかった)。15年の時を経て、こんなきっかけで行けるなんて思ってもいませんでした。

…ということで、昔買ったDVDを引っ張り出して前日の夜に鑑賞。

引っ張り出したサマーウォーズDVD

大学生のころは、「OZ」の世界観や、健二・カズマという主人公たちの魅力、家族総力戦でのドタバタバトルなどに引き寄せられていたのですが、15年経ち、一児の父親へと境遇が大きく変化した今見ると、当時気づけなかった点や抱かなかった感情が湧いてきました。
そもそもとして、地理や歴史の知識が大きく向上したので、より奥行きのある実感を持ち、深く入り込むことができました。OZでのバトルに影響するPC等のスペックやAIの開発なども、当時はまったく理解できていなかった部分。それらを理解したことで、今更ながら映画の全景を捉えることができ、面白さも増しました(上田に行った今見ると、より楽しめるのだと思います)。
そして、家族との絆や関係性、”家”の捉え方などが僕のなかで変わったことにも気づきました。父が他界したのが昨年だったので、この1年でより急激に変化したのだとも思います。カズマの兄としての想いや、侘助と栄(陣内家)のくだりは、今見てみると当時ほぼ理解できていなかったと思います。

出発の当日、まずは大宮駅まで在来線で向かいます。今回の旅ではスマホから極力離れることもテーマにしていました。仕事のツールやSNS、あらゆる機能が集約されているため、スマホは気を抜くと触ってしまうものとなっています。便利はいいことですが、それ以上に豊かさを吸い取られているように思います。今回は行きの電車での移動中も、なんとなくスマホをいじってしまうのを抑え、本を読んだりぼーっとしたりしていました。ちなみに今回もっていった本は、山田ズーニーさんの「おとなの進路教室。」です。

大宮駅で乗り換え、北陸新幹線「あさま」に乗車。この路線に乗るのは、実に10年ぶりです。長野県には仕事で数回行ったことがありましたが、プライベートでは初めてです。そう考えると、仕事で行ったことのある土地は増えましたが、プライベートで行ったことのある土地はあまり増えていません。北海道や東北各地もたくさん行ってますが仕事絡みばかり、西方面はそもそもあまり行けていません。社会人になって10年超、”行った気になってしまっている”ようでその土地の文化に触れることはできていない。社会人になって身についてしまった感覚な気がしていて、もっと意味とか数字を意識しない時間を増やしたいなと、ふと思いました。

E7系の車両は、足元を含めて座席がとても広くて快適。万世のカツサンドを食べながら上田へ。

脚を伸ばせるくらい広いE7系の指定席

トンネルをいくつも通り、1時間10分ほどで上田に到着。早速真田家の「六文銭」がお出迎えです。上田の街中には、これでもか!というくらい至るところにこの六文銭があり、上田の人々がいかに真田家を誇りに思い、受け継いできたかを感じることができました。

新幹線改札を出てすぐ

最初の目的地は、サマーウォーズで陣内家があったとされ、現実には武田信玄軍を少数で撃退したことで有名な「砥石城」。サマーウォーズでは電車とバスを乗り継ぎますが、実際その方面に電車の路線はないので、バスのみで向かいます。しかし、バス停に行ってみると次のバスが45分後でした。いや、むしろ、45分で良かった。土日祝は運行してないとか、もっと間隔が空いてるとかも可能性としてはあり得ます。でも、そういうことも事前に調べないで行き当たりばったりであることは、今回の旅に限れば利点です。ちゃんとした目的を定めたり、誰かと一緒だったら、自分の性格上、すべての工程を完璧にしてしまうと思います。

駅前には真田幸村の像

バスに揺られること16分。最初の直線は坂を登りながら左右に歴史や観光を感じられる建物が並びましたが、それを抜けるとスターバックスをはじめ、全国チェーンのお店が立ち並ぶ”よく見る”光景がしばらく続きました。サマーウォーズ気分でいたのでちょっとだけがっかりしましたが、僕の地元も15年前と今とでは町並みは変わっていますし、上田に暮らしている人にとっては便利に越したことはないですよね。それでも目的地に近づくにつれてお店も少なくなり標高も上がっていき、再びサマーウォーズ感が増していきます。そして「伊勢山」バス停に到着。サマーウォーズでも健二たちが下りたところです。

伊勢山バス停は映画とそっくり

その後、所々にある「砥石・米山城」の看板をたどって歩きます。細い路地、人の気配もなく、曇っていたこともあって心細い。一方で、田舎の冒険感は増してワクワクする気持ちも。

不安になる細い道

結論から言うと、登り口までの道中はおろか、城跡に向かう山中やその場でも2人としかすれ違いませんでした。後から思った(気づいた)ことですが、上田市内にはもっとたくさんの観光地があるし、観光マップでも砥石城は推されている場所ではありません。サマーウォーズが公開されたタイミングや、周年イベントなどがあったときは盛り上がっていたのかもしれませんが、15年も経って7~8月でもない変なタイミングで来る人はいませんね(笑)。

ただ、それが今回の旅の吉となって、ゆっくり歩いたり、休んだり、写真を撮ったりと、大いに自分のペースで楽しむことができました。

ようやく登り口へ
櫓門から本格的な山道へ
とは言え、終始整備された道です
急な坂ですが比較的登りやすく
長い階段を抜けると
砥石城跡です

ここが、武田信玄の多勢をもって2度も敗北を喫した砥石城の跡地です。確かに、今となっては登山道は整備されていますが、されていなければ結構な斜面に囲まれていて、上から何か落とされた際にはたまったもんじゃありません(そんなに詳しくないけど)。そして、背後を振り返ると上田市街地が一望できます。サマーウォーズで、陣内家から見た市街地の景色がおそらくここ。

砥石城跡からの景色

この地で親戚一同が集まり、戦いが繰り広げられたんだなぁと物思いにふけっていたのですが、何せまだ夏が残った山中なので虫が多い。止まっている時間が長いほど虫が寄ってくるので、ウロウロしながら思いをはせるという慌ただしい動きになってしまいました。なんにしても、15年前に大好きだった物語の本拠地に来れたことはうれしかったです。

その後、本城跡や「米山城」をめぐり、山中では結局2時間ほど過ごしました。

砥石本城跡地
米山城跡

今回はそれぞれの城跡を往復しましたが、山の中をぐるっと1周回れるルートもあり、その間にもスポットがいくつかあるようです。今回は軽装で、宿泊用の荷物も多く、曇天も気になっていたので止めておきましたが、いつかちゃんと遊びに来たいなと思いました。

帰りのバスも30分ほど待ちぼうけ。車ならもう少し脚を伸ばして真田家ゆかりの場所にも行けたのですが、それができない不便な旅もまたいいとしましょう。

「最初に砥石城に行く」以外の順序は決めてなかった今回の旅行計画。このまま宿泊先である「別所温泉」方面に行っても中途半端な時間になってしまうと思い、バスを途中下車して上田城跡へ向かいます。

歩いている途中に市役所でイベントが開催されてました。

新しめな市役所庁舎も街に合ってる

街を歩いていると至る所に真田十勇士。また、上田高校も中学校も、歴史がうまく残されていました。

上田高校
高校を取り囲むお掘り
上田二中。先に見えるのは市役所

そして上田城跡公園です。おそらく上田市街地では一番の観光スポットでしょう。砥石城と違い人が多い。笑
上田城は真田軍が徳川軍を2度退けた「上田合戦」で有名です。サマーウォーズで語られているのもこれですね。先の砥石城の「砥石崩れ」といい、上田の地では戦国時代にこういうジャイアントキリング(正確には”キリング”ではないけど)が頻発していました。最後の合戦、大阪の陣でも孤軍奮闘したといわれる真田幸村。こういった、メインストリートではないけど、格上相手に戦略と気合いで立ち回る人やチームが、僕は大好きです。

真田神社
真田幸村が堂々と立っています
綺麗に整備されたお掘り
陣内家のモデルになった門

神社や城趾、貴重な資料が残る博物館など、わかりやすい魅力的なスポットはもちろん多かったのですが、これらが”現代の”上田にMIXされながら息づいていることに感動しました。観光地として切り取ってしまいそうになる公園ですが、誰でも自由に入れて歩道やベンチも整備されており、開放感のある広場もあります。子どもが遊べる遊具も併設されていて、地域の人にとっては日常的な憩いの場になっていそうです。
これらは、前述した学校や市役所にも共通して感じられました。上田に住む人々が、形だけではなく、決して観光目的の消費財としてではなく、先人たちを大切にしながら地域を作りあげてきた結果であり、これからもこの文化は生き続けていくのだろうなと思いました。羨ましいです。

上田駅方面に戻る途中、雨に降られましたが大雨にはならず。この週末は台風や秋雨前線の影響が懸念されていましたが、蓋を開けてみれば大きな影響を受けないで2日間過ごすことができました。

ここで、遅いお昼ご飯兼夕食として、「中村屋」の馬肉うどん+ミニ天丼セットを食べます。上田?長野?も馬肉が有名なようで、ここ以外でもいろいろなところで馬肉料理が掲げられていました。もうひとつ有名なものとして、信州そば。歩いているといたるところに蕎麦屋さんがありましたが、そばアレルギーがあるので入ることができず。子どもの頃からのアレルギーなので”残念感”はないのですが、入れるお店が少ないという”不便さ”が際立ちます。

中村屋さんは、地域の人に根付いているようで、次々と常連さんが入ってきました。この日は2階で宴会もやっているようでした。こういう、機能としてだけではないお店は大好きで、強く憧れます。

馬肉うどんミニ天丼セット

その後、上田電鉄別所線に乗って宿泊地である別所温泉に向かいました。2両編成、ICカードも使えないローカル線です。ちょうど「さなだドリーム号」に乗ることができ、車内も真田だらけでした。

別所線、さなだどりーむ号

乗ったときには明るかった空も、30分乗っているうちにどんどん暗くなり、遠く見える山々の影も暗闇に落ちていきます。2日間滞在していて何度も感じたことは、360度山が近く、常に身近に存在しているということです。関東平野ど真ん中で育った自分からすると、近くにいかんともしがたい自然がそびえたっているのは新鮮で、圧倒される感覚でした。不便さはあるかもしれませんが、それと引き換えに育つ心は、強く、そして謙虚になるような気がします。

別所温泉駅は暗さも相まってレトロでいい雰囲気を醸し出していました。

別所温泉駅のホームはレトロでいい雰囲気
柵一つの駅と一文字ずつの看板

すっかり暗くなり、近くに飲食店がある以外は真っ暗。人もまばらで迷いそうだったので、Googlemapを使って宿泊先に向かいます。ゆるやかな坂を登っていく途中、唐突に仏閣が現れたり、豆腐屋さんがあったりしましたが、人とはほぼすれ違わず。本当に道が合ってるのか不安になるくらいでした。夕食を早めに上田市街地で済ませてきたのもこのためです。事前に旅館から「近くにお店がほとんどないので、夕食や買い物は済ませてきてください」と連絡をいただいたので、軽食も買い込んできました。
遠くに見える旅館っぽい明りを目指してひたすら真っすぐ歩くと、ようやく旅館街っぽい雰囲気に。静かななかに、左側には水の流れている音が聞こえて心が落ち着きます。そしてたどり着いたここが今回の宿泊地。

上松や
玄関

創業150年以上にもなる「上松や」さんです。別所温泉駅のときにも思いましたが、この暖かな光加減ってすごく落ち着きますよね。お部屋の電気もこのタイプで、旅館として落ち着ける雰囲気が統一されていました。

6階「長谷」の部屋に入り、一呼吸。和室に布団、机に座椅子。ザ・旅館です。昔懐かしい?過去この部屋に泊まった人が言葉を記したノートが何冊もありました。ぱらぱらとめくり、それぞれの想いにほっこり。そういえば、大学生の頃に毎年夏合宿に行っていた旅館にこれがあったなぁ。4年間行ったので、毎年どこかの部屋でノートを書いていました。またその旅館にも行ってみたい。

606「長谷」

夕食は済ませているので、温泉へ。別所温泉は日本最古の温泉とも言われているそうです。硫黄の匂いが非常に強く、そして熱い!ちょうど夕食時だったのか誰もおらず、独り占めしてのんびりと浸かることができ、思わず「最高だ」と呟いてしまいました。温泉はもちろん、今回の旅に対してです。

湯上がり後の特製出汁サービスが身体をリラックスさせてくれ、部屋に戻って少し経つと、軽食としておにぎり、漬物、わらび餅のセットが届きました。上田で買ってきたおつまみを食べながらダラダラとテレビを見て(JリーグとENGEIグランドスラム)、23時には就寝。一日歩き回ったこと、別所温泉で落ち着いた時間を過ごせたことなどが影響してか、驚くくらいぐっすりと寝ることができました。

***

2日目。6時台に目を覚まして外を見るとあいにくの雨模様。チェックアウトも11時までなので、二度寝をキメようと思ったのですが、朝食を7時半にしていたので起きました。なんで7時半なんて早い時間にしたんだろう…。7時半になるまでは「所さんの目がテン」を見ていました。小学生の頃、休みの日に早起きをすると父親がすでに起きており、見ていたテレビ番組がこの「所さんの目がテン」でした。四半世紀経っても変わらず続いているのはすごいことで、こういう続くものがあってくれるからこそ、記憶が消費されないで、思い出になるのだと思います。こういう記憶や思い出を、僕は息子に与えてあげられているのだろうか。

朝食は地域で採れた食材を活かした料理です。優しい和食にほっこり。雨模様の外を見ながら、自然と普段よりもゆっくりとした食事となりました。

上松やの朝食

部屋に戻り天気予報をチェックすると、どうやら雨は午前中には止みそうです。上田発の新幹線は18時半のため急ぐこともなく、雨が止む(もしくはチェックアウトの11時になる)までは部屋で「おとなの進路教室。」を読みながらゆっくりと過ごすことにしました。

ただ、10時前くらいにふと外を見ると、あれ?雨が止んでいる。それどころか晴れ間が出てきている!ということで、慌ただしくチェックアウトの準備をします。普段旅行で宿泊するときには、温泉に何度か入ったり、館内を歩き回ったり、「せっかく泊まったのだから」とできる限りそこを味わいつくそうとしてしまいます。しかし、今回は贅沢なことに、いいお宿にも関わらずほぼ部屋で過ごしていました。ただ、そこでだらけるというよりは、本当に「ゆっくりと」という表現がぴったりな過ごし方をすることができました。心身ともに、です。ここまで書いていて、”優しい”とか”ゆっくり”という表現を何度か自然にしていましたが、今思えばすべてがうまく設計されているようでした。宿泊場所をここにして本当に良かった。

チェックアウトし、別所温泉街を散歩。まずは一番近い北向観音へ。昨日到着したときには真っ暗でよく見えませんでしたが、やはり道沿いに水路がありました。

水路

細い路地のようになっている参道には個性的なお店が立ち並びます。カフェなどもあって気になったのですが、時間的に入るタイミングでもなかったので今回はパス。ちなみに「外湯」にも今回は行きませんでした。今度来るときには早めのチェックイン、遅いチェックアウトにして、思う存分別所温泉街を楽しみたいです。

北向観音参道
善光寺と向き合っているという北向観音
北向観音から見た上田市街方面

このあたりから晴れ間が覗くようになり、歩いていると汗ばむような陽気になってきました。ただ、今夏の猛暑に比べたらかわいいもので、むしろ景色が綺麗に写ります。

足湯や「湯かけ地蔵」を巡りつつ、次に向かったのは「常楽寺」。僕の家のお墓があるのも同じ常楽寺という名前で、全国各地に同じ宗派で散らばってるのかと思いきや、宗派は全然違いました。入山料数百円を払って入ると、お墓参りにきている人もちらほら。ちょうど日程的にお彼岸だったんですね。観光として来ている人たちと、この地に根付く人たちが、こういう形で混ざっているのは不思議な感覚です。
このあと行く「安楽寺」でも同じ類いのものがあったのですが、ここ別所温泉には、日本最古や国内に数個しかない部類の建築物などがたくさんありました。そっ地方面の知識はまったくないのですが、それでも1000前後も続いて、残されているものがある事自体が奇跡的なことだと思います。

石造多宝塔
石造六地蔵
御舟の松

次の目的地に向かう途中、こんな景色に出会い、思わず写真を撮ってしまいました。ひとつは何でもない民家が立ち並ぶ小道を、少し高いところから。もうひとつは、上田市街地を遠く背景に凛と咲く花。

住宅地と小道
凛と咲く花

どちらも観光マップにのる景色ではありませんが、優しくもしっかりと立つ姿は、心に残るものでした。

次にたどり着いたのは「別所神社」です。途中、急な坂道と階段を登った高台に位置していたこともあり、これもまた素晴らしい景色でした。

別所神社。左の建物から外を見ると…
別所温泉街を一望できます。

僕が到着した時には1人しか人がおらず、景色を見渡せる場所に椅子があったので、そこでしばらくボーっと過ごしました。この旅路に何度かあったこういう時間が、一番幸せだったかもしれません。ちなみに、この別所神社も観光マップには大きく表示されてなかった気がします。人が少なかったのはそのせい(おかげ)でしょうか?昨日の砥石城しかり、こんなにも素晴らしい場所にも関わらず何かにピックアップされるかどうかで人の流れが変わってしまうのですね。自分の目と脚と感性を大切にしたいと改めて思いました。

別所温泉街は「信州の鎌倉」と言われるだけあって、三方を山に囲まれているためか、散策していると登ったり下りたりを繰り返します。そして最後に訪れたのは「安楽寺」。その一番奥にそびえたつ国宝「八角三重塔」は、素人目にも立派なものでした。八角塔としては日本で唯一残っているものとのことです。これが750年も残っているものだなんてすごい。

八角三重塔

というわけで、別所温泉街とはここでお別れです。今回の1泊2日の旅のなかでも、一番のんびりとできた場所でした。日本最古レベルの歴史的建造物が残っているだけではなく、それが残るこの地に住む人たちの文化や優しさ、外の世界に惑わされない時間感が、心身ともにゆっくりできた理由かもしれません。
足湯、外湯、商店や他のスポットなど、まだまだ回り足りないところが多いし、旅館にももっとゆっくりしていたかったので、また絶対来たいと思いますし、その際は2日間別所温泉街で過ごすくらいの気持ちで来たいです。

別所温泉駅に向かう道
昨日は暗かった別所温泉駅。今日は暗雲。笑
特徴的な色の屋根

別所温泉街で昼食を取りたかったのですが、駅前の洋食屋さんは大人気で入れず、それ以外にお店がなかったので、先に移動することにしました。上田駅までは行かず「下之郷駅」で降ります。

別所温泉駅と打って変わり、赤白が特徴的な下之郷駅

目的地は「生島足島神社」です。

駅から徒歩数分で鳥居が出迎えてくれます

この日は地域のお祭り?が開催されていたようで、吹奏楽なんかも演奏されていて、とても賑やかでした。いたるところで互いに挨拶をする地元の方々。神社がこうやって地域に開かれ、憩いの場になっているのは素晴らしいことだと思います。
先ほどまでいた別所温泉街が、山に囲まれて自然由来のゆっくりと落ち着いた雰囲気を出していたのに対して、ここ生島足島神社は、池に囲まれた神域という特殊な場所に人の賑わいがありました。昨日の上田城跡公園でも書きましたが、今回の旅でつくづく思うのは、長い長い歴史が大事に残されつつも、それが現代の人々に継がれ、そして今の文化とMIXされているということ。だからこそ魅力的な観光地になるのだと思うし、この地に住む人々も豊かになり、またそれが続いていくのではないかと思います。

池にかかるご新橋
裏手側からのご新橋
ご新橋

この辺で昼食を食べたかったのですが、唯一あるご飯屋さんがお蕎麦屋さん!アレルギーで食べることができないですし、混雑もしていたので、あまり長居せずに駅へ戻りました。

別所線に乗るのもこれが最後です。高い建物がなく拓けているなかを走るので、常に窓の外には山が見え、平行して走っていくようで、この景色が非常に印象的でした。

この旅もいよいよ終盤。上田駅に帰ってきたのは14時過ぎ頃で、お昼ご飯を食べていなかったので、駅前の「上田からあげセンター」に入りました。

上田からあげセンター

14時のからあげ屋さんにはさすがにお客さんがおらず、大学生くらいのアルバイトさんが数人楽しそうに仕事をしていました。自分の大学生の頃を思い出してほっこり。そうそう、変に業務ちっくにやるより、わいわいやってた方が楽しいし、結果的に仕事も良くなるんですよね。
名物らしい「美味だれ」のからあげ定食を注文。にんにくがよく効いていたけど甘さもあるおいしいタレでした。一人旅で周囲を気にしなくていいから、ニンニクを躊躇なく頼めてしまうのもいいですよね。

美味だれ唐揚げ定食

昼食を終えたところで15時くらい。新幹線が18時半なので、まだまだ時間はあったのですが、当初目的としていたところはほぼ回れたし、そんなに詰め込んでもな…と思い、近くの「Rin’s coffee」さんに入りました。たくさん豆の種類があるなかで、苦みが強く分類されているインドネシアのシティローストと、チーズケーキを注文。

上田最後の食事

このコーヒーが僕の好みどんぴしゃで、チーズケーキもまたとってもおいしい!本を読みながらゆっくりといただき、1時間半ほど滞在していると、地元の常連さんが何名か来店していました。どの方もお店の人ととても仲良しで、新しいお客さんや注文が入らない間は店員さんと仲良くおしゃべり。比較的広く開放的な店内に、1つ1つの席はゆったりと配置されていて窮屈さは一切なく、安心感のある空気が醸し出されています。こういう雰囲気、大好きです。老後にやりたい(笑)

さすがに1杯で長く居座りすぎるのも…と思い、17時前にはお店を後にし、駅の待合室に移動。旅の最初から読んでいた「おとなの進路教室。」もここで最後まで読み切ってしまいました。旅行先の上田で、最後まで観光地をあくせく回るわけではなく、あえてどこでも読める本を読む。これまでの僕だったらしない選択でしたが、今回の旅がこれを許してくれました。普段の生活で読んでいるのと違い、時間や思考の隙間を埋める何かがないおかげで、本を読む合間合間にぼんやりと思考したり、また入り込んだりでき、すごく心地よい読書体験でした。

新幹線を待っている間に辺りはすっかり暗くなりました。少しだけ夕焼けが見えましたが、駅周辺からキレイに見れる場所がなかったのが残念。初日は曇っていてそもそも夕焼けがなかったので、この点は次回にお預けです。旅の終わりが近づいていて、寂しさが募ります。

改めて、とても充実した旅でした。今回ほど予定を決めないで行く旅はおそらく初めてで、大筋となる行先を自分で決めず「どこかにビューーン!」に決めてもらったことが、この行動(思考?)を生み出したのではないかと思います。今回の成功体験は、大げさではなく自分の今後の人生に大きな影響を与えてくれそうです。無意味(そう)なこと、計画を立てないことが、これだけの充実をもたらすことを知ってしまってからです。
ただ、”無意味”や”無計画”の中身が、だらだらと過ごしてしまう日常の余暇とはまったく異なっていて、人を、自然を、文化を自分の目で、耳で、脚でじっくりと捉えることができました。これは他でもなく、何度も書いている上田の文化がもたらしてくれたことだと思います。
ただ、地元でそれがないと言い切るのは違うと思っていて、この開かれた感覚をいかに維持して(もしくは開いたり閉じたりしながら)、日常生活を送れるかが、充実した生活、人生につながっていくのかもしれません。

だいぶ大きな話と長すぎる記事になってきたので、そろそろ締めたいと思います。まだまだ味わい切れていない上田には、また絶対行くぞ!

p.s.帰りの車内では、ちょうどキックオフとなった、サンフレッチェ広島対横浜・F・マリノス戦を見ていました。超連戦となった9月に調子を落としていた広島ですが、この日は大量5得点!新しく加入したパシエンシアがスタメンを飾り、ケガから復帰したソティリウが途中出場でいきなり点を決めたのもポジティブなことでした。これで首位返り咲き。次節は天王山の町田戦です。

大好きなサンフレッチェ広島の好試合で日常に戻っていけたのもまた幸せな旅でした。

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