銭湯お遍路達成記念:88湯を振り返る(#1:変わり続ける昔ながら銭湯)
■ はじめに
昨年のことですが、東京都浴場組合が企画する「銭湯お遍路」で、88箇所を無事に達成し、結願となりました。
銭湯お遍路というのは、都内の銭湯を廻って各湯が備え付けているスタンプを集めるという企画。本家の四国お遍路同様に88箇所のスタンプを集めると「結願」として認定証と記念品がもらえるというもの(※88箇所以外にも、26箇所・176箇所〜(以下、88箇所×2〜)、全銭湯制覇などでも認定がもらえる)。ハンドルネームも東京都浴場組合HPに載せてもらいました。
そんな楽しい企画を昨年ようやく結願を達成したので、その歩みを振り返りつつ今まで行った銭湯の紹介を今回から何回かに分けてします。薄々気づかれていると思いますが、私だけが楽しいやつですが、お付き合いください。
■ 訪問銭湯一覧
スタンプを取得した88箇所の銭湯は表の通り。やはりこれまで都内で住んだ文京区、北区、板橋区、豊島区の銭湯が多め。
■ 昔ながら銭湯の「春木屋理論」
さて、初回で取り上げるのは地元の人たちに愛されながら、かつ遠方からも利用者を呼び集められる、そんな集客力に優れた銭湯たちだ。
こう言われて真っ先に思いつくのは#24殿上湯(北区・閉業 ※各銭湯の#番号は図表「訪問銭湯一覧」の番号に対応)だ。昨年惜しくも閉業されたが、日曜は朝風呂もやっていたので、文京区や北区に住んだ経験のある筆者は何回か足を運んでいた。
地下水を薪で焚いたお湯にペンキ絵の富士山。サウナもないシンプルな"お風呂屋"だが、日曜の午前を掃除の行き届いた清潔な空間ですごす愉しさを認識させてくれる素晴らしい場所だった。
殿上湯の紹介記事はこちら↓
商店街でも目立つ宮造りの建物にミルク風呂というギャップの面白い#37小杉湯(杉並区)も然り。
小杉湯の紹介記事はこちら↓
最近まで筆者の最寄り銭湯で、重要文化財指定の建物で映画「テルマエ・ロマエ」が撮影されたことで有名な#48滝野川稲荷湯(北区)も同様に、誰もがイメージする昔ながらの銭湯そのものだ。
稲荷湯の紹介記事はこちら↓
とはいえこの手の銭湯が「古きよき」と形容されることについては、筆者は些かの疑問を覚える。少なくとも今挙げた3湯にその形容は不適切だ。
「春木屋理論」をご存知だろうか。荻窪に本店のあるラーメン屋「春木屋」の社訓とも呼ぶべき教条で、客から"変わらないね"と言われるためには少しずつ改善していかなければならない、というものだ(大意)。
これらの銭湯も同じく歴史の古さや培った顧客満足に胡坐をかくことなく、価値のある伝統は残しながら積極的に新しい試みを取り入れ続けている。殿上湯は洗練されたデザインのウェブサイトを整え発信を強化していたし、小杉湯・稲荷湯ともコラボイベントを積極的に行っている。
■ 銭湯の存在意義を自ら問い直す
さらに、これらの銭湯は共通して付随施設も活用して銭湯の提供価値を再定義していることを挙げておきたい。
殿上湯は近隣の施設に民泊機能を持たせ、銭湯に入り放題で泊まれるという滞在価値を高めていた。小杉湯では「小杉湯となり」として隣接するコワーキングスペースを整備し、月額会員制でマネタイズしている。
稲荷湯は2022年に隣り合う長屋を整備し、飲食物の提供やイベントを実施できる「湯上がり処」(同施設インスタグラムより)として活用している。
単に「広いお風呂に入れる」というだけでは銭湯の存在意義が薄らぎかねない中、自らの価値を大胆に問い直す姿勢は頼もしいの一言だ。
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ここまでお読みくださりありがとうございました!