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【統計でみる銭湯】東京23区の銭湯(2020年10月版)

■ はじめに

昨年の同時期に、こんな記事を書いた。

筆者が住む文京区の銭湯が少ないんじゃないかという直観的な疑問をもとに、人口1万人あたりの銭湯数を算出し、23区平均を上回る区を「銭湯オアシス」、逆に下回る区を「銭湯砂漠」と名付けて銭湯に恵まれた区、そうでない区を特定しようとしたものだ。

結果としては、台東区・荒川区が圧倒的に豊かな銭湯環境を持つ銭湯オアシスで、逆に港区・文京区は銭湯砂漠ということがわかった。

本稿では昨年から約1年を経て、どのように状況が変化したか簡単にまとめておきたい。

■ 算出方法

前回の記事にも書いたことだが、算出ロジックは以下の通り。

①東京都浴場組合の配布する銭湯マップ(2017年10月10日発行)に記載されている各区の銭湯数を整理する
※発行当時休業中のものは含む。スーパー銭湯、サウナ、岩盤浴など公衆浴場でないもの、組合に所属しない銭湯は対象外)

②①の銭湯数から、同組合がウェブで公開している銭湯廃業リスト(下記)を照合して各区で現在営業中の銭湯数を特定する

※組合に廃業届を出すタイミングによっては、組合サイトに公開されていない銭湯が含まれるので、該当する銭湯については判明した限りにおいて追加している。今回は富士見湯(文京区・10/31閉店)、玉の湯(豊島区・9/30閉店)を対象とした。

③23区の人口を東京都総務局統計部から取得し、②の浴場数とあわせて単位人口当たり銭湯数を算出する

※そのまま割ってしまうと桁数が非常に小さくなってわかりにくいので、ここでは人口1万人あたりの施設数を算出する

■ 銭湯オアシス決定戦

まずは人口1万人あたり銭湯数のランキングをご覧いただきたい。

人口1万人当たり銭湯数_202010

銭湯オアシストップ5は台東区、荒川区、北区、墨田区、千代田区。トップ5のうち上位4区の顔ぶれ・順位は前回と変動はなく、23区の四天王と呼ぶべき貫禄を見せつけた。特にトップ2の台東、荒川は1万人当たり銭湯数が引き続き1を超え、他と一線を画している。

一方前回5位の豊島区は、大塚の玉の湯、南長崎の広の湯など7軒が3年間で廃業し、トップ5から陥落。ちなみに廃業数7軒は足立区と並んでワーストタイであった。

代わりに千代田区がトップ5入り。銭湯数では港区、文京区と並び23区ワーストタイ(4軒)ながら、人口の少なさと廃業の少なさの両翼で順位を稼いだ結果だ。

また、6位の中野区は前回9位から3位アップ。これは順位の上昇幅では最大となった。こちらも廃業数0軒という経営の堅さが光った。

中位グループでは板橋区が13位から11位へ2つ上げた以外は、大きな変動はなかった(個人的な意見で恐縮だが、板橋区への引っ越しを検討しているのでこれは非常に有り難かった)。

下位の銭湯砂漠グループは、高級住宅街・オフィス街の港区、筆者の肌感で砂漠認定していた文京区が引き続きワースト2となった。

ブービーの文京区は元々銭湯の閉業が相次いでいたところ、直近の富士見湯の閉店でさらに数値を下げ、最下位の港区との差が前年の0.07から0.02と僅差となり、他の条件が変わらないままあと1軒でも廃業すれば、最下位に陥落する崖っぷち。最下位争いにも引き続き注目だ。

■ 人口増以上のペースで銭湯は減少

次に示すのは、人口当たり銭湯の算出素となった数字を一通り含んだ表だ(クリックで拡大)。

銭湯数‗202010

右から2番目の列は人口1万人当たり銭湯数で降順に並べたもの。23区平均より高い区は「銭湯オアシス」として青でハイライトしている。1位の台東区から13位の中央区までが銭湯オアシスなので、銭湯環境を求めて引っ越しを検討する方は参考にされてはいかがだろうか。
※14位の渋谷区は四捨五入の関係で23区平均より下回った

右端の列は、人口1万人当たり銭湯数の今年から昨年にかけての変動である。マイナスの値を取るものを赤でハイライトした。ほとんどの区で銭湯数が減少しており、わずかに江戸川区のみが増減なしという結果となった。

23区の総人口は19年1月の950万人から、今年10月までに約2%増加し970万人となった。他方で銭湯数はこの1年で約4%減少しており、人口が増えているのに銭湯が増えていないことは、すでに公衆衛生上の施設としての銭湯需要は底を打っていると考えてよいのではないか。

基本的なニーズを満たす機能に価値を認識されないとなると、あとはより高次の価値(食なども含めた総合的なリフレッシュ、健康増進、コミュニティとの交流など)にシフトしていくことになろうが、その場合スーパー銭湯や温泉・サウナ施設などと直接競合することになる。資本・従業員規模とも大きく施設・サービスが充実したこれら競合とどう戦うか、どこも頭を悩ませているに違いない。

他方で、この1年での閉業数は19軒と、1区1軒ペース未満の数字となった。コロナによる外出自粛・ソーシャルディスタンスの影響も決して軽微でなかったはずだが、そのような中でも銭湯の廃業は個人的な予想よりも少ない結果となったことは、銭湯の根強い人気や堅固な経営基盤を示唆するものかもしれない。

競争環境が激化する中、銭湯がどのような形で生き残りを図るのか、引き続き注目したい。

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