【独身男性が東京の銭湯を勝手に評価する(その4)】
東京の銭湯を個人的観点で評価していきます。
(もはや訪問エリアが下町を逸脱しているので、「下町」の表記は外しました)
天然温泉からデザイナーズ銭湯まで。
■ 評価ポイント・方法
評価のポイントは以下の10項目。
(各項目1~10で、10が最高)
・アクセス・・・最寄り駅とその距離、道中の施設など
・外装・・・外見の年季入ってる感だったり、ユニークさ
・内装・・・内装の綺麗さやユニークさ
・入浴設備・・・風呂の広さ、レパートリー、快適さ、サウナの有無など
・備品・・・シャンプー、石鹸、ドライヤーなどの有り無し、有料無料など
・接客・・・スタッフの接客態度、気配り
・入浴以外の設備・・・飲食、休憩所などお風呂以外の設備の充実度合い
・混雑度・・・人の多さ
・客層・・・民度、どんな人が多いか
■ 武蔵小山温泉 清水湯(品川区)・・・2種類の天然温泉が売り。住宅地の最強銭湯
・アクセス・・・・・・7。目黒線武蔵小山駅から徒歩5分
・外装・・・・・・・・9。木造の和モダンな建物
・内装・・・・・・・・9。1階にテレビ付きのロビーあり。2階にも休憩所
・入浴設備・・・・・・10。黒湯と黄金湯の2種類の露天風呂+サウナ+水風呂という最強布陣
・備品・・・・・・・・8。無料シャンプー、ボディソープがない。ドライヤーは無料
・接客・・・・・・・・8。キビキビと来客を捌いている
・入浴以外の設備・・・7。下駄箱、脱衣所のロッカーそれぞれ硬貨が必要で少し煩雑
・混雑度・・・・・・・6。土日は多くの人でにぎわう。露天はスペースをとるのが大変
・客層・・・・・・・・8。さまざまな年齢層の人に親しまれる
・営業時間・・・・・・9。正午から深夜まで。日曜は朝8時から
・総合評価・・・・・・81/100
【総評】
商店街が賑わいを見せる住宅街、武蔵小山の駅から徒歩5分。表玄関は旅館風で、日暮里の斉藤湯に似ているかも。
清水湯の最大の特徴は、2種類の天然温泉が楽しめるところ。東京に多い、独特の匂いがする黒湯と、黄土色の黄金湯の2種類に浸かることができる。しかもその2種類を露天風呂で楽しむことができる。
黒湯の内湯と、黒湯・黄金湯の露天風呂。露天の椅子で外気浴を楽しめば
正直これだけでお腹いっぱいというところだが、さらに恐ろしいことに、清水湯はサウナと水風呂も併設しているのだ。
サウナは別料金とはいえ1000円しないで天然温泉とサウナを堪能し、風呂上がりには広々した休憩所でビールも飲めるし、黒湯で作った温泉卵なんてものもある。なんなら武蔵小山商店街まで歩いて一杯やってもいい。
とても23区内に無造作に存在していいレベルの水準ではないお湯と設備。武蔵小山の住民がうらやましくてしかたなくなる、住宅地に君臨する最強銭湯だ。
武蔵小山温泉 清水湯
住所:〒142-0062 東京都品川区小山3-9-1
営業時間:12:00〜24:00(日は8:00〜24:00)
定休日:月曜日
■ 改良湯(渋谷区)・・・扉を開ければ異空間。唯一無二のデザイナーズ銭湯
・アクセス・・・・・・6。恵比寿駅から徒歩10分。些か距離がある
・外装・・・・・・・・9。クジラの壁画がひときわ目を惹く
・内装・・・・・・・・10。暗めの空間に浴槽を間接照明で照らし出す異空間
・入浴設備・・・・・・9。白湯、バブルバス、サウナ、水風呂あり
・備品・・・・・・・・8。シャンプーの備え付けがある
・接客・・・・・・・・9。若いスタッフ多めで元気
・入浴以外の設備・・・8。休憩所が清潔で使いやすい
・混雑度・・・・・・・5。土日は混雑度が高くて水風呂などは順番待ち
・客層・・・・・・・・5。ちょっとヤカラっぽい人多め
・営業時間・・・・・・7。夕方~深夜
・総合評価・・・・・・76/100
【総評】
恵比寿駅から渋谷方面に徒歩10分、店も少ないエリアの細道に突如現れる巨大なクジラが目印。
クジラに圧倒されてしまうが、入口はもう少し坂を上がったところにある。
銭湯というより料亭のような暖簾のかかった入口も印象的だ。
更衣室や休憩所も非常に綺麗で、清潔に管理されている。
そしてこの銭湯の一番のウリ(だと勝手に思っている)のが、浴室の雰囲気だ。天井の照明は暗めに設定され、湯舟にも間接照明が設置されているため、白を基調とした浴室に湯舟が浮かび上がるような仕立てになっている。
これがとても非日常的で、わざわざ訪れてまで入る価値がある。この空間を例える言葉が見つからないため、実際に写真で見ていただいた方が早いだろう。
浴室には白湯、ジェットバス、水風呂、サウナなどを備えている。お湯の温度はどれもぬるめで、40度程度だったと思う。サウナには入らなかったがレパートリーが豊富で飽きずに楽しめる。
1点残念だったのは、客層があまり良くないように見えてしまったこと(ちょっとヤカラっぽい人が多かったように思う)。浴室の照明が薄暗いので余計に警戒してしまうのかもしれないし、タイミングの問題かもしれない。不快な思いをしたわけではないので、単なる印象の問題として話半分に聞いてもらえれば幸いだ。
なお、この銭湯は入浴客のタトゥーを禁止していない。現状都内の銭湯でタトゥーを明示的にOKとしているところが少ない中で、非常に珍しい例だ。
銭湯とタトゥーというトピックについてイベントも開催したほどだ。
(いずれこのトピックについても取り上げたい)
風呂上りも綺麗な休憩所で普段読まない旅行雑誌をめくり、のんびり過ごせる。人ごみに疲れやすい渋谷・恵比寿エリアにあって随一にリラックスできる、優れたパワースポットだ。
改良湯
住所:〒150-0011 東京都渋谷区東2-19-9
営業時間:15:00〜24:30(日祝は13:00〜23:00)
定休日:土曜日
■ 稲荷湯(千代田区)・・・オフィス街至近のエアポケット銭湯
・アクセス・・・・・・7。大手町から徒歩5分
・外装・・・・・・・・6。いわゆる「昭和の銭湯」
・内装・・・・・・・・7。汚れてはいないが年季が入ってる
・入浴設備・・・・・・7。白湯、ジャグジー、薬湯。水風呂はない
・備品・・・・・・・・6。シャンプー・ボディソープはないので、持参しよう
・接客・・・・・・・・9。番台さんは親切にも終電を気にしてくれていた
・入浴以外の設備・・・6。ロビーに休憩所あり
・混雑度・・・・・・・9。平日深夜は人が少なく快適
・客層・・・・・・・・8。地元の方の利用が多そう
・営業時間・・・・・・7。夕方~深夜
・総合評価・・・・・・72/100
【総評】
大手町と神田小川町(淡路町)の中間に位置する銭湯。
大通りから一本内に入ったところにある上、ビルの1階に溶け込むため非常に目立たない。
いや、ほんとに目立たないから
金曜日の深夜に訪れたため、番台さんが「時間大丈夫?」とわざわざ終電を心配してくれたのが、小さなことだがありがたかった。
場所柄飲み帰りのサラリーマンでもいるかと思ったが、他にはほとんどおらず、広い湯船をたっぷり堪能できた。後で調べたところ皇居ランナーの利用も多いらしい。
浴室には富士山を描いたペンキ絵があり、ストロングスタイルな銭湯という感じだ。浴槽はL字型でつながっており、薬湯、白湯、ジェットバスがある。サウナや水風呂はない。
漫画「孤独のグルメ」では井之頭五郎がデパートの屋上を「都会のエアポケット」になぞらえるシーンがあるが、稲荷湯も時々訪れたくなるオフィス街のエアポケットだ。
稲荷湯
住所:〒101-0047 東京都千代田区内神田1丁目7−3 長谷川ビル 1F
定休日:日曜
営業時間:14:50−24:00
(祝日は~22:30)
■ 白水湯(台東区)・・・破格のサウナ価格、一本筋の通った下町銭湯
・アクセス・・・・・・8。日比谷線入谷駅から徒歩8分
・外装・・・・・・・・6。マンションの1階をぶち抜いて作ってある
・内装・・・・・・・・8。しっかり掃除されていて清潔感ある
・入浴設備・・・・・・9。サウナが安くて浴室も広い
・備品・・・・・・・・6。シャンプー・ボディソープは備え付けなし
・接客・・・・・・・・7。可もなく不可もなく
・入浴以外の設備・・・7。ランドリー併設
・混雑度・・・・・・・8。遅い時間に行ったからか、ゆったり浸かれる
・客層・・・・・・・・8。地元のお年寄り多し
・営業時間・・・・・・7。午後から深夜まで
・総合評価・・・・・・75/100
【総評】
地下鉄入谷駅から徒歩3分、銭湯のひしめくエリアにある一軒。(失礼ながら)見た目はあまり綺麗ではないものの、中は手入れが行き届いている。
番頭さんが不愛想という噂を聞いていたが、特にそんな印象も受けなかった。(ただし外見は強烈だった。悪意はないが、入谷というよりゴールデン街にいそう)
お風呂も比較的広めで、合計4つの浴槽がある。40度程度の座湯とジャグジー、薬湯(ぬる湯)と水風呂だ。
下町銭湯にしては珍しくあつ湯がなく、長時間ゆったり入っていられる。1人入ればもう一杯の薬湯がおそらく30度台のぬる湯だったのもユニークだ。
また、ジャグジーは浴槽の中からライトアップしていた。なぜ?
ここの最大の売りと思われるのが、サウナ料金の安さだ。普通の銭湯が入浴料(460円)+200~300円するのに対して、白水湯の場合は入浴+サウナ料金が合計500円(増税前)という破格さ。
残念ながら見たい番組があったのでサウナの時間はなかったが、増税後でもいいからぜひ訪れてみたい、圧倒的な強みを持つ銭湯だ。
白水湯
住所:〒110-0013 東京都台東区入谷1丁目21−12
定休日:月曜日
営業時間:15:00~25:00
■ 月島温泉(中央区)・・・もんじゃストリートに溶け込む地元銭湯
・アクセス・・・・・・4。地下鉄月島駅から徒歩4分だが、看板がないのでわかりにくい
・外装・・・・・・・・6。マンション銭湯っぽい感じ
・内装・・・・・・・・5。注意書きばかりで雑然としている
・入浴設備・・・・・・8。薬湯、ジャグジー、サウナあり。水風呂もあるのが嬉しい
・備品・・・・・・・・8。シャンプー、ボディソープ備え付け
・接客・・・・・・・・3。番台さんが不愛想で、サービス精神に乏しい
・入浴以外の設備・・・5。ロビーが休憩所になっている。ランドリー併設
・混雑度・・・・・・・7。連休の中日だけどそこまで混まない
・客層・・・・・・・・7。地元の方多め
・営業時間・・・・・・7。夕方から深夜まで
・総合評価・・・・・・59/100
【総評】
月島駅の10番出口から徒歩5分、月島名物のもんじゃ焼き屋をはじめ飲食店が並ぶ「もんじゃストリート」に面した建物の2階にひっそり営業する銭湯。温泉を謳っているが温泉ではなく、軟水を沸かしている。
通り沿いに看板などは出ておらず、かつちょうどスマホの電池が切れていたので、何回か建物の前を素通りしていた。アクセスはよいのに場所がわかりにくいのが玉に瑕。
第一印象、「雑然としてるなー」だった。やたら手書きの注意書きが多く、整っていない感じがした。誤解ないように追記しておくと、汚いわけではない。
番台のおじさんは率直に言えば不愛想で、最低限の事しか話さないような寡黙な方だった。
いっぽう浴室は比較的広めで、浴槽が2つ並ぶ。1つは白湯で42~43℃程度、ジャグジーやジェットバス、電気風呂もあって広い。
もう一つは2人ぐらい入ればいっぱいの小さめの薬湯。こちらは40度くらいでゆったり入れる。
サウナと水風呂も備えており、サウナに入らなくてもあつ湯と水風呂で交互浴ができるのは嬉しい。
軟水銭湯・月島銭湯
住所:〒104-0052 中央区月島3−4−5−2F
営業時間:14:30~23:40
定休日:無休
ここまでお読みくださりありがとうございました!
■ (※蛇足です)追記:月島温泉から考えた、これからの銭湯
↓以下、レビューではなく批判めいた内容なので、人によっては気分を害される恐れがあります。どうしてもという方だけお読みください↓
今回取り上げた月島温泉については、今まで訪れた他の銭湯と比べあまりに残念度が高かった。基本このシリーズのレビューでは70点を下回ることはほとんどないのだが、群を抜いて低い点数を付けた(59点)ことからもお分かりいただけると思う。
その理由は接客態度の微妙さ、看板の不在、注意書きばかりの空間など
いくつか考えられるのだが、結局のところ内輪向けの雰囲気が強く匂ってしまって、新参の居心地が悪いことに起因するのだと思う。
ちなみに口コミサイトをいくつか見てみたが、私の感じた印象と同様に
接客や注意書きの多さ、内向きの雰囲気に言及したレビューがかなりあった。
検証していないので真偽はわからないが、外国人の利用をそもそも断っている、という旨のレビューもあった。
たしかに店内の注意書きは基本全て日本語で、東京都の浴場組合が出している英語版の銭湯案内のポスターもなかった。外国人お断りも、強ち間違いではないのかなと感じる。少なくとも、訪れる外国人が便利に使える施設ではないことは確かだ。
今はウェブサイトすら持っていない銭湯でも、ネットの口コミで評価されてしまう時代だ。高齢の経営者が多いと思われる銭湯業界も、それを受けてか各店いろいろと対応している。
例えば朝湯で有名な上野の「燕湯」も、かつて口コミサイトで接客態度やローカルルールが批判されていた。しかし近年は改善を図ったのだろう、自分が訪れた時にはむしろ接客に気遣いを感じたほどだった。場所がら訪日外国人の利用も多いと思われるが、それに対応して多言語での案内も充実している。
また、個別の銭湯だけでなく、都や区の浴場組合も銭湯を盛り上げるための取り組みを進めている。
都の銭湯組合が行っている「東京銭湯お遍路マップ」(スタンプを集めると景品がもらえる:写真)はその代表的なものだ。伝統的に地元の人を顧客として獲得してきた銭湯の前提を覆して、銭湯巡りを通じた新規顧客の獲得を促す取り組みだ。
下は文京区浴場組合の取り組み、というか決意表明。敷居を下げて誰でも親しめる空間にしようという意気込みが伝わる。
※余談だが、お遍路マップには組合に加盟する全銭湯の一言コメントが載っている。多くの銭湯は自店のアピールポイントを書いているのに対して、月島銭湯のコメントは
「入浴マナーを守りましょう(…)マナーを守れない場合、入浴をお断りする場合があります」だ。
正直、やれやれという感想しか出てこない。そこに書く意味ある?
上述したような現在の銭湯業界のスタンスに対して、月島温泉はあまりに内向きな雰囲気を感じた。加盟する組合が音頭を取っているのに、そっぽを向くのはどうなのだろう。
もちろん、銭湯の経営方針は店それぞれだ。勝手知ったる地元客だけを相手にしてオーナーが引退するまで続けられればいいというスタンスも決して間違いではない。
しかし2008年の調査で、日本の浴室保有率は95.5%(日本国統計局ウェブサイト)。
風呂やシャワーが自宅にない世帯は20に1つもない時代に、残念ながら銭湯は必須のインフラではない。さらに人口減も手伝って、銭湯業界の先細りは見えている。
これまで訪れた下町銭湯の番台さんにも、後継ぎがいない、次の設備更新はできないからマンションになってしまうだろうと悲観される方は一人や二人ではない。
なんとかしようと思うなら、単なる衛生施設以外の価値を提供することで、地元民以外の新規顧客を獲得していくしか道はない。
そんな中で観光客の多いもんじゃストリートという、極めて新規顧客獲得に有利な立地を持ちながら、碌に看板も出さない、外国語向けの注意書きもない、ないない尽くしの内向きな雰囲気を作ってしまうのは極めてもったいないことだなと、コンサルの職業病的に思ってしまうのであった。