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アプリコット

押上で用事を済ませたあと、錦糸町の映画館で「君の名前で僕を呼んで」を観た。
80年代の北イタリア・リビエラを舞台に、17歳と24歳の青年が互いに惹かれあっていくラブストーリーなのだが、その劇中で目にするものがアプリコットである。

リビエラがアプリコットの産地で有名だからという理由もあり、主人公エリオの母親がお手製のアプリコットジュースを食卓に並べるワンシーンが出てくると、自然と口内がじわりじわりとだ液が...。
時折訪れるだ液の進撃に抵抗しながらも、無事映画もエンドロールになり、ほっと一安心。

あのほろ苦い余韻にまだ浸りたい。
前から気になっていた近くのカフェで一休みすることにした。
押上での用事のあと錦糸町へ直行したため、お昼をスキップしていた。空腹を満たすためにブレンドコーヒーとチーズケーキをオーダーした。カラカラに乾いたスポンジが水分を吸収するように、みるみるうちに口の中へ吸い込まれていく。

たまたま目星を付けていた化粧品メーカーのボディーローションがアプリコットの香りだった。何かの縁かと思い、ひとつ購入。
お出かけ前にこのボディーローションをつける度、爽やかで甘酸っぱい香りに包まれ、ついに夏が来た実感がわく。
エリオが体験したロマンスみたいなことはないだろうけれど、何か新しい発見、出会いがあるかもしれない。
胸を踊らせながら、今日も出かけよう。