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オフィスのバレンタイン事情
先日、会社の帰りに、百貨店に寄った。目当ては、バレンタインイベントだ。もしかすると、多くの男性にとっては未知の世界かもしれないが、実は、百貨店のバレンタインイベントはめちゃくちゃ楽しい。ショーケースに並んでいるチョコレートは、まるで宝石のように美しい。惑星をイメージしたチョコレートや、精巧につくられたアニマル型のチョコレートなど、ながめているだけで気持ちが高揚する。そして、値段もけっこう高い。「そんなチョコレートがあるのか?」と思ったおじさんは、あれだ、そんなスペシャルティなチョコレートが義理チョコに選ばれるわけがないかと泣きながら理解するしかない。今年は、見た目が美しいチョコレートのほかに、「カカオ◯%」のようなビターなチョコレートのコーナーが充実していたように思う。(前からなのかな)
そもそも「おじさんがバレンタインフェアに行くなよ」と思われるかもしれないが、実際に足を運んでみると、男性がまったくいないわけではない。と言うか、けっこういる。若い男性はもちろん、わたしのような“単独おじさん”もいる。そして、なんと言うか、これはあくまでも自分が感じた雰囲気だけれども、好きな人のためにチョコレートを選んでいる女性はそんなにいないのではないかと思う。「見て見て、これ、めちゃ美味しそー♪」というキャッキャした話し声は、自分が食べるのを楽しみにしているようにしか思えない。ほとんどの女性は自分へのご褒美のためのチョコレートを買いに来ているのであって、きっと、その“ついで”に、だれかにあげるチョコレートを買っているのだ。と思う。会場には、超リッチなチョコレートを使った“アイスクリーム”が売られていたりもするし、やっぱり自分自身へのご褒美が本当の目的なのだろう。
さて、10年ぐらい前に比べて、オフィスのバレンタイン事情もずいぶんと変わった。むかしは、バレンタインデーの当日には、女性社員が大量の義理チョコを抱えてオフィスを歩きまわっている姿があった。その瞬間に席を立つのは、むしろ意識しているように思われる気がして、自分のところに来てくれるまでトイレに行くのを我慢したこともある。偉い人には義理チョコと言っても、ちょっと立派なチョコレートが渡されていた。いつもは怖い顔をした人たちがデレデレとうれしそうにもらっているのを見ると、毎日がバレンタインデーでも良いのになと思ったこともある。だけど、それがあまりにも大袈裟になりすぎたからなのか、社会的に「そういうのはもう辞めようよ」という雰囲気が流れはじめたからなのかはわからないが、次第に義理チョコを配るという文化がなくなっていったように思う。少なくともわたしが働いてる会社では。
リモートワークが浸透したことによって、ますますオフィスのバレンタイン事情は変わってしまった。特に、自分のように、リモートワークの方が多く、あまり会社に行かない人間が2月14 日に限って出社するのは痛い。痛すぎる。なにかを期待して出社したと思われるのはイヤだから、2月14日には、会社には行かない(行けない)。ところが、昨日、ある女性社員から「2月14日出社しますよ」と連絡があった。残念ながら、これは決して「チョコレートあげますよ」という意味ではない。彼女には、ふだんの業務ですごく助けてもらっているのだけれども、彼女は自分よりも会社に来ない。だから日頃から「いつものお礼を直接言いたいから、出社するときは教えてくださいね」と言っていたのだった。困った。彼女にお礼を言いたい気持ちはあるが、「あいつ、いつもは全然出社しないくせに、今日は来てるやん」と、ほかの社員に思われるのは嫌だ。絶対に。2月14日までは、まだ時間がある。どうしようか……
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わたしがコミュニティマネージャーとして参加している、オンラインサロン「京都くらしの編集室」では、「noteチャレンジ」という企画があります。
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バレンタインの思い出
この記事『オフィスのバレンタイン事情』は、「バレンタインの思い出」に合わせて書きました。思い出……ではないですが。
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