高級腕時計ブランドから訴えられる模倣品とお咎めなしで済む境界線はどこか?
“オメコ”シオフキマスターの基本性能
まず初めに、“オメコ”潮フキマスターは『パロディ時計』で、本物と見分けがつかないクオリティを最初から追及していないということです。
とどいた箱は予想に反してズシリと重く、期待に胸踊らせながら赤い箱を開けてみると…
その前に本家『スピマス』の仕様について、1度おさらいしておきましょう。
3ヶ所のインダイヤルは、3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドが配置されています。
そして、中央に時針と分針にクロノグラフ秒針。
片や『シオマス』はロゴやアイコンを除いて、インダイヤルのプリント自体は『スピマス』とほぼ同じものなのですが…
3時位置の30分積算計の針の正体は24時間針で、30分の目盛り表示になっているのにもかかわらず、24時間かけて針が1周する意味不明なダイヤルです。
次に、本来なら12時間積算計になっている6時位置のインダイヤルの針はスモールセコンドになっていて、これもインデックスカウンターを一切無視してクォーツ特有のステップ運針が現在の時を刻んでいます。
最後に9時位置のスモールセコンド表示部分の針はなぜか?ストップウォッチと連動しており、1分で1周するのではなく1時間で1周する60分積算計に変身していました。
『スピマス』の文字盤に“セイコー”製クォーツ式ムーブメントを無理やりねじ込んだ結果だとは思いますが…
こうして謎のインダイヤルに仕上がった『シオマス』は、クロノグラフ秒針だけは通常のクロノグラフ時計と同じ機能になっていて、ストップウォッチを起動させなければ12時を指したまま微動だにしません。
世のチープなフェイククロノグラフは、センターセコンドになっている3針のクォーツ式ムーブメントをベースにつかっていることが多く、その目立つ秒針が「カチ カチ」と動いては偽物だと見破られます。
名前がふざけた腕時計にしては中身はちゃんとつくっており、ガン見されてスモセコの位置と秒針の動きでバレるという…この手の腕時計を着けたがる人間にとって、1番オイシイ展開が待っています。
バックルのロック解除は、プッシュボタン式になってはいてもロックピンの入りがスムーズではなく、一連の“フランク三浦”ネタで多用した“バンビ”製品ZS0007のクオリティの高さを再認識させられました。
感触のちがいを説明すると、自動車のドアを閉めたときに手に伝わる振動と音が、日本車とドイツ車の大衆車クラスでちがうのに似ています(国産車は、安いとすぐに手を抜くから)。
メタルブレスの腕時計は、ネットで購入するとベルト調整は自分でやらなくてはいけませんが、オマケで調整器具が付いてきます。
コマ間の遊びがあるので、ベルトがヨレて若干のグラツキはあるものの、1.1万円でこのクオリティならドーパミン放出は90%。
二番煎じメーカーの運命
以前に、某芸能人が紹介して一時期流行った“リラックス”という、“ロレックス”の『パロディ時計』がありました。
ケースやベルトが金属ではなく透明のプラスチックなので、一見して“ロレックス”とちがうのは明らか。
本物のデイトナは12時位置のインデックスが王冠マークなのに対して、デイトナ似のそのモデルはバーインデックスだったりインダイヤルの表示が別物になるものがあったりして、コピー精度はきわめて低い製品です。
でも…
“ロレックス”とモメたのか?その後はオリジナルデザインに路線変更をしています。
今からの“フランク三浦”がたどっていく道です。
一方でデイトナやサブマリーナを始め、スイス製高級腕時計と酷似している腕時計はゴロゴロ転がっています。
ブランド名やロゴはオリジナルを使用しているものの、二流だか三流だか知らない聞いたこともない時計メーカーが…
両者の運命を分けたものは、いったいなんだったのでしょう?
それは類似製品としての完成度ではなく、その腕時計がブレイクして有名になったか?どうか。
知名度が上がった時点で、本家本元からにらまれて潰されます。
ですので、一般人への認知度が低いために雲上ブランドの“パテック フィリップ”風や“オーデマ ピゲ”風の腕時計はブレイクしにくく、次あたりはマーケティングが上手い“リシャール ミル”風がくるのではないかと。
オマージュウォッチなどと聞こえがいい言葉をつかっていますが、直訳すると『コピー時計』です。
鳴いて撃ち落とされるか?鳴かず飛ばずで低空飛行を続けるか?しかありません。
スーパーコピーは、コスパの良い消耗品
1m離れて見たら似ているだけの時計とはくらべものにならない、商標法や不正競争防止法に抵触するレベルの『N級品』と呼ばれているスーパーコピーが、ネット上の中華系HPで堂々と売られています。
LINEに電話番号で勝手に友だち追加してきては、スパムを送りつけていたコピーブランド業者の一派です。
ブランド名やロゴまで完全コピーしているので、当然ムーブメントも本物同様に機械式を使ってきます。
機械式は定期的なメンテナンスが必要になってくるのですが、純正メーカーはもちろんのこと腕時計を生業にしている人の多くは、そういった裏ブタを開けたらアジア製(日本含む)キャリパーが顔を出す腕時計のオーバーホールや修理を一切受け付けてくれません。
蓋を静かに閉めて…そっと突き返されます。
必然的に、『使い捨て』にならざるをえないのです。
やってくれたところで、オーバーホールの基本料金とスーパーコピーの平均相場はそう大差ないので、壊れたらちがうものに買い替えるだけの話ですが…
鑑定士が、本物とスーパーコピーの差をブログやユーチューブで解説していますが、うがった見方をすれば知識のあるプロがルーペを使って判別できるレベルの差異です。
自分からカミングアウトでもしないかぎり、腕時計好きレベルの一般人相手に偽物を着けていることがバレることは、まずありません。
模倣レベルが上がり続けているスーパーコピーの中でよほどの粗悪品でも掴まなければ、表面上だけは見栄を張れるスーパーコピーのイニシャルコストはかなり低く、これが高級腕時計のシェアリングエコノミー市場が伸びない元凶です。
偽物が存在しない、高級外車のレンタル事業とはわけがちがうのです。
腕時計のスーパーコピーに一定の需要は見込まれるので、これからも暗躍し続けていくことでしょう。