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TPOに応じて印象を変えたいのなら、まずはタイプが違う眼鏡を揃えること
サンプラチナなのに黄金色
最初は、そこまでほしくもなかったのです。
セルフレームを持っているので、次に買うならメタルフレームと思っただけです。
メタルということでチタン製を探していたら、“井戸多美男作”サンプラチナ製のデッドストックがヤフオクで見つかりました。
サンプラチナといえば、井戸 多美男氏。
井戸 多美男氏といえば、サンプラチナ。
サンプラチナとは戦前からメガネフレームに使われてきた合金で、'80年代にチタンが使われるようになってから、徐々に使われなくなったレトロ素材です。
プラチナ(Pt)という名称がついていますが、磨けば色が白金色になるだけで貴金属ではありません。
昭和天皇がそのラウンド型を愛用したように、サンプラチナといえば市販品の多くが丸っこい眼鏡ですが、見つけた“井戸多美男作”はめずらしく天地幅の細いスクエア型でした。
しかも材料をプレス加工しただけの2次元的なデザインではなく、分割されている各パーツを立体的にロー付けしてあり、細部の作り込みがとても凝っています。
同じ“井戸多美男作”でも、現行で売られているT-416やT-461はここまで手数をかけていません。
シルバーのメタルフレームに黒笹セル弦と、ゴールドのメタルフレームに茶笹セル弦が各1本づつ。
クールな印象のシルバーの方がよかっのですが、未使用品とはいえもう廃盤で経年劣化しているであろう、T-435の純正ケースなしが2万7千円弱(両方とも同価格)は高いと思い、しばらく放置していました。
そのままでは買い手がつかず、3千円値下げされたら本命だったシルバーはあっさり売れてしまいました。
「しまった!」
女性にフラれるのと同じで、男なんて手がとどかなくなるのが確定すると、とたんに恋しくなるものです。
でも、
好きだったあの娘は嫁にいったけど、彼女は一卵性双生児だった。
肌の色がちがうだけの、容姿が瓜二つな彼女の姉妹に告るか?否か?
悩ましい問題です。
縁がなかったと割りきり、他ブランドのチタン製メガネを買うことも考えましたが、現行品でもなく他ではまず見ないフレームの意匠は、この機会を逃すと再会の可能性はほとんどありません。
そういうわけで、本意ではないアンティークゴールドのT-435を落札することになるのですが、これを落としてしまったばっかりにあとあと尾を引いてしまうのでありました。
ビー・バップ・オッサン
1回値下げしていることから、もう少し待てばまだ値下がりするとは思いますが、ラス1なので「ロン!」と言われたら終わりです。
ヤフオクがくれたクーポンを使って、総額2万2千円ほどでとっとと手に入れました。
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“井戸多美男作”サンプラチナの金メッキはよく剥げるので、よほどのこだわりがないとオススメしない…とYouTubeで釘をさされましたが、デッドストックのわりにはその兆候はありません。
チタンと比べて重いサンプラチナではありますが、太めのセルロイドに慣れていると軽く感じます。
メガネをたくさん所有している人が、最終的に選ぶのはブランドでもデザインでも価格でもなく、結局は「軽くてよく見える」メガネということなので、希望的観測も込めてドーパミン放出は79%(銀黒コンビだったなら89%)。
画像や文字情報だけで試着ができないネットでの買い物は、これまでの経験則を元に着用の感覚やイメージを膨らませています。
だいたいは、想定の範囲内なんですけど…
ところが、メガネは“泰八郎謹製”プレミア Ⅰをかけるまでは使用したことがない、ほぼ童貞状態。
「どれどれ」
郵送されてきたT-435のメガネをかけてみると、姿見の向こう側には懐かしき立花商業高校の『菊リン』がいました。
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「マズい、このままじゃ非常にマズい」
鏡の中のオッサンの姿に、がく然と立ちすくんでしまうのでありました。
メガネ単体のディテールばかりが気になって、自身の着用イメージが掴みきれていませんでした。
あぁ、奥深し『眼鏡道』。
基本、短髪ですっきりさせて無精ヒゲでも生やしとけば、くたびれたオッサンと差別化できて後はなんとかなるという…安易な考えが完全に裏目にでました。
ヘアスタイルさえ直せば、問題はないのですが…
メガネとヘアスタイルは、印象操作をするのに破壊力抜群の最重要項目になります。
メガネをかけるときには、髪型や服装とのコーディネートに細心の注意をはらいましょう。
定番のツートンカラー
T-435のアンティークゴールドにブラウンササの同系色2色を合わせる配色パターンは、『トーン・オン・トーン』という手法です。
メンズファッションで主に使われる色系統は数種類にかぎられており、その中でもブラウン系はよく使われます。
ファッションではなくても、個人的に思い入れの深いブラウン系のトーン オン トーンといえば…
高3の授業中、なにげに3階の窓から顔を出して教職員用駐車場を見下ろすと、そこには“ソアラ”2.8GT エクストラが停まっていました。
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当時のトヨタ自動車の最先端技術と贅のかぎりを尽くした初代ソアラです。
あまりのカッコよさに衝撃を受けて、この2年後に3.0GT リミテッドを買ってしまうのですが…
持ち主は、美術の先生でした。
私立高校の非常勤講師はそんな高給取りのはずはないので、きっとお金持ちのボンボンだったのでしょう。
ハイソカーという言葉が生まれ、『3ナンバー』というだけで取られる自動車税が倍額だったので、それに比例して高い位置からのマウントが取れました。
この類いの車はランニングコストの悪さから、新車登録後3年の車検が切れる辺りで下位互換『5ナンバー』車と、中古市場価格が逆転してしまいます。
そんな当時の最上位MZ10エクストラ専用カラーが、自動車では珍しい金ベースに茶のツートンカラーで、内装まで茶系統で統一する徹底ぶり。
それから5年後に、ドラマ『あぶない刑事』で使われた日産F31 “レパード”が人気を博します。
先代F30と比べればずいぶんアカ抜けたものの、ゴールドツートンのボディカラーも含めてどこをどう見てもZ10系“ソアラ”を意識しているのは明白で、ライバルメーカーにも多大な影響を与えたトヨタの最高傑作でした。
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話が逸れましたが…
茶色は革製品でメインとなる色なので、このようなコンビネーションは革小物でよく見受けられます。
よく革靴と革ベルトの色と素材は合わせろとファッション指南書でも見ますが、その2つだけを合わせてもおもしろくありません。
茶色の皮革に金色の金属を使ったブラウン✕ゴールドコンビ縛りで、自分の世界観に合ったアイテムをどれくらい集められるか?試してみようと思うのです。
それでは、まずT-435を収納するメガネケースから。
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