第3回:市場ニーズや成長性を正確に捉えられるか?
みなさま、こんにちは。
食の6次産業化プロデューサーの松田高政です。
特別講座「新たな時代に新商品・サービスを生み出す能力とは(全11回)」の第3回目のテーマは、「市場ニーズや成長性を正確に捉えられるか?」です。
現在、企画中または開発中の商品が、果たして消費者のニーズに沿ったもので、なおかつ競合に打ち勝ち、売上等が右肩上がりで成長していくものなのかどうか(売れるかどうか)、まだ、発売していない段階で正確に予測することは非常に難しいことですが、ある程度、事前リサーチによって、売れる根拠情報を把握することは可能です。
逆に言えば、事前リサーチ(根拠情報)なしで、売れるかどうかを身内だけで楽観的に判断し、商品開発または事業を進めていくことは、きわめて危険でリスクが高いことだと言えます。
では、どうやって事前リサーチをするのか、具体的な手法と事例を見てみましょう。
問題:市場ニーズや成長性を正確に捉えられるか?
【問いかけ】
商品やサービス等の想定される市場の規模・ニーズ、事業の成長性はどのような方法・手法で想定・検討するか。
理論と手法を学ぶ
【理論・手法】
開発する商品・サービスが売れなければ、撤退・負債などの深刻な経営的問題を発生させることになります。そうならないためにも、ターゲットとなる市場ニーズや規模・成長性などの市場動向を事前に把握し、具体的な数値目標や販路設定を行う必要があります。
市場規模や成長性を把握する方法としては、まずは図書館やインターネットなどで業界情報紙の情報や各種統計データ等を入手することができます。具体的には、飲食店・小売店であれば想定商圏内の人口(年代別・世帯構成別)や、消費実態調査(何にお金を使っているか)と競合店の存在などをリンクさせることで、ある程度の市場規模・売上予測を立てることができます。
また、既存のデータまたは情報がない場合や、より具体的にターゲットである販売者・消費者の情報が必要な場合は、業界や販路(バイヤー等)、一般消費者に対するヒアリング調査などで数字に表れない市場ニーズや顧客課題(ビジネスの必要性・成長性)等の情報を得ることができます。
図:市場ニーズと顧客課題の俯瞰的把握
そして、最終的には特定の顧客を絞り込み、顧客が買いたい気持ちになるよう、寄り添う形で商品・サービスの内容を決め、市場での成長戦略・生き残り戦略を立てることが重要です。
今の世の中は、「BUCAの時代」と言われており、市場動向・消費者ニーズの将来変化を予測することは極めて難しい時代です。
そんな中で、新商品・サービスを生み出すにあたって、市場ニーズや成長性をある程度、正確に捉えられるかどうかは、情報収集能力にかかっています。もっと言うと、まだ他社が気づいていない情報(顧客課題・ビジネスチャンス)を探り当てるリサーチ能力が求められる時代です。
図:現代はBUCAの時代
このように、新商品・サービスを企画するためには、日ごろから業界及び消費者ニーズの最新情報を入手して、市場動向を常に把握することが必要です。
実際の事例・経験談から学ぶ
写真:のむジュレ
【実際の事例】
「のむジュレ」の市場ニーズと成長性を事前に把握するために、モデル店舗のスタッフとお店のお得意様に集まってもらって、試作品の評価とこの商品が果たして売れるかどうかを直接ヒアリングすることにしました。
私たちの仮説は、類似商品の飲むゼリーは、美容成分や添加物が多い傾向があるため、あえて農家らしく安全安心おいしいものを作れば、現状に満足しないお客様が支持していただけるのではと考えました。ヒアリングでは、自分たちの仮説をストレートに伝えたところ、お店側もお客様も「今売られている商品はゲル化剤が入っている商品ばかりで、こんな無添加の商品を探していた」と高評価で、「これは売れると」確信した瞬間でした。
写真:商品モニタリング調査
また、大阪・名古屋・東京の高質スーパーに商品を卸している商社に、事前に試作品を評価してもらったところ、「商品ができ次第、取扱いたい」との嬉しい返事を聞くことができました。
この時、新しい問題が浮かび上がったのは、「のむジュレ」の製造能力で、農家自身の工場では年間10万本程度の製造が限界のため、逆に販売先をこちら側が選ぶ・または制限する必要性が出てきました。
このため、発売開始からの販売戦略では、年間10万本を1店舗当たりの年間推定販売数で割ることで、必要な店舗数(取引数)を逆算し、国内で理想の販売先から優先的に営業・商談を行うことで、ほぼ優位な販売先と取引することができました。
◇試作品の評価:商品モニタリング調査(インタビュー調査)
首都圏の駅中で2店舗、こだわりの地域産品を販売している会社の仕入れ担当者と、店舗リピーター客(消費者モニター)に対して、試作品(文旦、生姜の2種類、パッケージ未完成)を評価してもらい、味・コンセプトなど高評価を得た。
また、価値と価格のバランス評価では、意外と評価が高かったため、上代を上げることができた。
◇事例:店舗・消費者参加型商品モニタリング調査
首都圏の店舗にて実際に買いたい商品かを基準に、商品のネーミングやパッケージ等をお客様に一緒に考えて頂く、店舗・消費者・生産者参加型の商品評価モニタリングを実施。
(参加者)
店舗関係:3人
消費者モニター(首都圏在住・女性):4人
商品説明・生産者:3人
オブザーバー/高知県地産外商公社:2人
対象商品:飲むゼリー(生姜・文旦)2種類
(実施方法)
趣旨説明:こうち暮らしの楽校・松田
参加者自己紹介・商品説明
商品サンプルの試食評価・意見交換
評価ポイント:容器・内容量・ネーミング・ラベルデザイン・購入価格・利用シーン等
◇価値と価格のバランスの評価(消費者モニタリング調査の意見より)
質問:試作品がいくらであれば買いますか。
250円以下だと、即買う
250円以上だと、迷うけど買う。 ・・・・販売価格は250円+税での販売を目指す。
280円以上だと、たまにしか買わない
まとめ
以上、第3回目の「市場ニーズや成長性を正確に捉えられるか?」はいかがだったでしょうか。
事例にもあったように、最終的にはターゲットとなるお客様の判断「買うか」「買わないか」。買うとするなら「いくらで」「どこで」買いたいかなど、消費者心理に大きく影響されます。
このため、商品・サービスの企画立案者は、日ごろの社会状況だけでなく、消費者の声、もっと言えば悩みや課題の声を拾うコミュニケーション能力が必要です。
まずは、自分の知り合い(業界関係者・知人・友人)に聞く、小さく始めて仮説検証(売れるかどうか)を行うなど、簡単にできることから始めてみてください。
図:BUCAの時代を生き抜く方法
次回、第4回は、「最終消費者と利用シーンを想定できるか?」です。お楽しみに!
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