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インテル($INTC)のCEO退任で株価が下落

12月3日以降、インテルの株価が下落している背景には、パット・ゲルシンガーの突然の退任が大きく関係している。これが、経営再建の行方に対する投資家の不安感を増幅させ、市場でネガティブな反応を引き起こした。ただ、ゲルシンガーのこれまでの実績を振り返ると、退任が必ずしも悪いニュースとは言えず、今回の株価下落には複雑な要因が絡んでいる。

ゲルシンガーの評価と退任の背景

パット・ゲルシンガーは2021年にCEOに就任。彼には半導体業界での経験が期待され、競争力を失いつつあったインテルの再建を託された。ただ、4年間で直面した課題は厳しいものだった。

  • AI市場での遅れ
    NVIDIAやAMDがAI関連チップ市場をリードする一方、インテルは技術的に後れを取っていた。特に、AI分野での製品力の弱さが売上や市場評価に影響を与えていた。

  • 主要顧客の離脱
    Appleが自社製プロセッサ「Mシリーズ」を採用し始めたことで、インテルのシェアが減少。さらにクラウド事業者なども競合製品を選び始めた。

  • 競争と業績低迷
    半導体業界全体が供給不足や激しい価格競争にさらされる中で、インテルは収益性の改善に苦しんでいた。結果的に取締役会の信頼を失い、今回の退任に至った。

このように、ゲルシンガーの退任は事実上の解任と見られている。

市場の期待と不安

CEO交代は通常、新しいリーダーによる経営改善への期待感を生むことが多い。ただ、インテルの場合、後任CEOや新体制の戦略がまだ明確になっていないことが問題。これが再建計画への不透明感を増幅させている。

退任直後に株価が一時的に上昇したものの、それが長続きしなかった理由として次の点が挙げられる。

  • 戦略の欠如
    ゲルシンガーの退任が改善の兆しと捉えられた一方で、具体的な後任の戦略が見えてこない状況では、投資家も安心できない。

  • 厳しい競争環境
    AI市場ではNVIDIAが圧倒的なシェアを握り、AMDも積極的に技術革新を進めている。この中でインテルが再びリードを取るには相当な努力と投資が必要。

投資家の心理

ゲルシンガーは再建の象徴的な存在ではあったが、その退任によりリーダーシップの継続性への懸念が高まった。特に以下の点が投資家心理に影響している。

  • リーダーシップへの不信感
    短期間でのCEO交代は、経営の一貫性やプロジェクト進行に悪影響を与える可能性がある。

  • 収益圧迫のリスク
    再建には大規模な投資が必要で、その間の収益性が悪化する懸念がある。

  • AI分野での立ち遅れ
    AI関連市場の成長が期待される中で、インテルの技術的な遅れは市場評価を引き下げている。

ゲルシンガーの退任はインテルにとって大きな転換点ではあるものの、後任体制や具体的な戦略がまだ明確でないため、市場の不安感を払拭するには至っていない。競争力を取り戻すためには、AIや半導体市場での遅れを取り戻すための具体的な行動が求められる。

ここ1年のチャート。上昇傾向になってきたかと思ったら12月に入ってガツンと下がる
5年で見ても右肩下がりのトレンド

ただ、もともとインテルの株価は厳しかった。2024年4月1日と7月29日に下記の理由から大きく下落している。

2024年4月1日:インテルが発表した2024年第1四半期(1~3月期)の決算で、最終損益が4億3700万ドルの赤字になった。4四半期ぶりの赤字だったこともあって、投資家の不安を引き起こした。さらに、ファウンドリー部門(他社向け半導体製造)の営業損失が拡大し、黒字化まで数年かかるという見通しが示されたのも大きな要因。

2024年7月29日:第2四半期(4~6月期)の決算では、純利益が16億1000万ドルの赤字を記録。この発表と同時に、全従業員の15%以上にあたる約1万5000人の人員削減計画を公表した。これが投資家の懸念をさらに高め、株価は一時29%も急落する事態に。


さて、インテルの反転は訪れるのだろうか…?

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マツダ
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