見出し画像

映画「生きちゃった」を見て。

上田映劇で石井裕也監督の「生きちゃった」鑑賞。

「ぼくたちの家族」を見た時の、これ普通のハートフル家族ものじゃないな、っていう良い違和感が、石井作品を見れば見るほど回収されていく。そして、今作のパンフレットで腑に落ちる。

「夜空はいつでも最高密度の青色だ」のしゃべりすぎる池松さん(役)との対比のはなしも。今作の大賀さん(役)は言葉にできない男。でもふたりは表裏一体で、本当に思っていることを言葉にできていない。

わたし自身のいま一番の関心事であり、noteを毎日更新していること自体が「思っていることを言葉にするトレーニング」なので、めちゃくちゃスコーンと入ってきた。

多かれ少なかれ、皆、感情のアウトプットにもどかしさをかんじている。言いたいけれど、考えすぎてしまって言えない。言いたいけれど、ぴったりのことばが思いつかない。最初から、言わないことを選ぶ――。どれもある。わたしは、言葉にしたいならしてみますか、と伴走するひとになりたいのかもな。

今作の太賀さん、中川龍太郎監督の「走れ、絶望に追いつかれない速さで」の主人公とも、なんというか近しいものがある。「走れ~」は、突然自殺しちゃった友人の最後について追いかける話なのだけど。ここでも言葉にするのが苦手な男のひとで。

仲野太賀さんを使いたい監督はいっぱいいるんだろうなあ。と改めて感じる。いびつな感情をうちに秘めて不安定でも一応ちゃんと生きてます、みたいな人間を体現できる。

パンフレットには、監督の台本が書き込み含めて全編収録されているのですが、これが、ごほうびですよね。やっと完結した。
西川美和監督の「ゆれる」のノベライズで、主人公のひとりである香川照之さんが解説を書いているのですが、あのときの救われた気持ちにも似ている。

やっぱり映画っていいなあ。
最高の91分でした。

毎日note更新88日目。

目に触れられず流れていく宙ぶらりんなローカル情報を囃し立てて、自分の住む地域ってなんかいいな、誇らしいな、暮らしやすいな、と感じられる循環を作り出したいと思っています。(team OHAYASHI細川敦子)