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6年間のInstagram APIの変遷を振り返る 〜今のAPIでできること/できないこと〜

テテマーチは、2015年ごろから「CAMPiN」や「SINIS」などInstagram関連のツールを複数リリースしてきました。
これらのツールはすべてInstagram公式のAPIを利用したツールであり、APIが開放または制限されるたびに、その仕様書を読みこんでは対応に追われてきました。

そうして約6年間InstagramのAPIと向き合い続けた結果、Facebook社のデータにまつわる思想が見えてきました。

Instagramのビジネス活用ニーズが高まり「このようなデータを取得することはできないか?」「サードパーティのツールと連携することでアカウント停止のリスクはないか?」など様々なお問い合わせをいただくようになったため、改めて多くの方にInstagramのAPIについて知っていただきたいと思い、noteを書いています。

本noteではInstagramAPIがこれまでどう変化してきたのか、今後どうなっていくのかについて語っていきたいと思います。

そもそも「API」とは?

「API」は「Application Programming Interface」の略で「アプリケーションやソフトウェア」と「プラグラム」をつなぐもの、という意味です。このAPIをベンダーが公開することで、サードパーティのソフトウェアに機能を一部共有できるようになります。 

つまり、Instagramの運営元であるFacebook社が外部パートナーに向けて「このような機能やデータを提供するので、ルールを守って活用してくださいね」と一部の機能やデータを共有している、ということです。

現在、InstagramのAPIは審査制で、「どのような目的で利用するのか?」「どのようなサービスに利用するのか?」など、Facebook社に説明のうえで許可を得られた企業のみが利用できるようになっています。 

APIの公開範囲には制限があり、ベンダー側で公開・非公開を判断しているため、「こういうデータも欲しいのにな...」と思うことも多々あります。

過去のInstagram APIでできたこと

よくいただくお問い合わせの中で「以前のAPIではこういうことができたと思うのですが...」というものがあります。

実は、InstagramのAPIは新旧があります。通称「旧API」にあたるのが「Instagram Platform API」で、「新API」と呼ばれているのが「Instagram Graph API」です。Facebook社が2018年1月に、旧APIの機能を2020年までに段階的に廃止し新APIに移行することを発表しました。
実は、このAPIの移行により、複数の機能やデータの提供が制限されました。

新APIへの移行に伴い利用できなくなった機能を簡単にまとめると...

・任意のハッシュタグ付きの投稿をしたアカウントのデータを取得する
・任意の投稿に対して「いいね」「コメント」を行う
・任意の投稿についたコメントを取得する
・任意のアカウントのプロフィール情報を許可を得ずに取得する
・任意のアカウントがフォローしているアカウントや、フォローされているアカウントの情報を取得する
・Instagramに投稿された画像の位置情報を取得する
・位置情報からInstagram内の画像を検索する

これだけの機能が実装不可能になったのです。

・指定したハッシュタグが付いたフィード投稿およびその投稿アカウントのデータを取得する

旧APIでは、ハッシュタグ付きの投稿から投稿アカウントを特定することができました。
この機能を利用し、当時はハッシュタグ付き投稿キャンペーンがよく実施されていましたが、現在では実施されていません。

・任意の投稿に対して「いいね」「コメント」を行う

旧APIを利用して「いいね」や「コメント」を行いフォローバックを期待する「いいねの自動化ツール」が多数存在しましたが、このような機能はすべて公式APIを用いては実現できなくなりました。

・任意のアカウントの情報を取得する

旧APIでは指定したアカウントのフォロワー数やプロフィール情報、投稿数などのデータを取得することができたため、「競合分析ツール」や「インフルエンサー管理ツール」などに利用されていましたが、新APIでは自由にアカウントの情報を取得することはできません。

すべてを詳細に説明することは控えますが、細かく分類すると10以上の機能・データの提供が終了しました。

その影響で、それまで旧APIを利用していたキャンペーン管理ツールや分析ツールの多くが新APIへの移行に伴う仕様変更を余儀なくされ、さらに新APIの取得ができなかったサービスは終了せざるを得なくなったのです。

なぜ旧APIは廃止されたのか?

では、なぜ旧APIは廃止されてしまったのでしょうか。

その理由はユーザーのプライバシー保護です。

もともと、投稿ハッシュタグから個人を特定したり、投稿から位置情報を収集したり、アカウント名からプロフィール情報を取得することができる状態は、プライバシー保護の観点から適切ではないとFacebook社は判断していました。

そのため、APIの移行は発表されていたのですが、2018年3月ごろに明らかになったFacebookユーザーの個人情報の漏洩疑惑が原因で、移行のスケジュールが大幅に早まりました。 

特にヨーロッパではGDPRをはじめとして個人情報保護に関する規制が非常に厳しくなっています。

SNSのデータにはプライベートな情報が含まれることも多いため、プラットフォーム側も対応せざるを得なかったのでしょう。

新APIでできること

それでは、新APIでできることを簡単にご説明します。

新APIの一番のポイントは、Instagramのインサイトデータが取得できるようになったことです。

Instagramは2016年8月に自分のアカウントのフォロワー属性や投稿のリーチ数などを確認できる「インサイト」という機能をリリースしました。

これは、それまでフォロワー数・いいね数・コメント数ぐらいの数値しか見ることのできなかったInstagramがビジネス活用に近づいた大きな機能追加でしたが、当時はアプリでしかデータを見ることができず、また長期間データを保存することができなかったため、企業のInstagram担当者はアプリでデータを確認してはPCに手動で転記する、という作業を行なっており、大変不便な状況でした。

新APIの登場によってインサイトをPCで閲覧できるツールが開発され、この問題は解決されました。

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新APIで制限されたこと

また、新APIで制限を受けたものの、手法を変えることで旧APIと似たようなことができることもあります。

・ハッシュタグ投稿キャンペーンの管理

旧APIでは、ハッシュタグを指定すればそのハッシュタグが付いた投稿を自動で収集し、投稿者のアカウント名やフォロワー数まで取得することができました。この機能を用いて、ハッシュタグ投稿キャンペーンを実施し、参加者のアカウント名一覧を作成したり、参加者をフォロワー数順に並び替えたりするツールが作られていました。
しかし新APIでは、ハッシュタグ付き投稿から直接アカウントを特定したり、アカウントの情報を取得することはできません。

そのため、下記のような方法で同様の機能を実現しています。

1.「アカウントタグ付け」or「@メンション」をしたハッシュタグ投稿をしてもらう

自社アカウントを投稿にタグ付けするか、自社アカウントに@メンションしたうえでハッシュタグ投稿をしてもらうと、投稿者のアカウント情報が取得可能です(フォロワー数までは取得できません)。

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2.ハッシュタグ投稿のURLからアカウントを特定する

新APIでハッシュタグ付き投稿のURLを取得し、URLから実際の投稿を閲覧することで、投稿しているアカウントを特定することができます。さらに、投稿ごとの「いいね数」「コメント数」は取得することができるので、それが多い順に並び替えれば、効率良くエンゲージメント数の多いアカウントを抽出することができます。

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・競合アカウントの分析

旧APIでは任意のアカウントのフォロワー数や投稿数などの情報が取得できましたが、新APIではそれが条件付きになっており、「プロアカウント」と呼ばれるビジネスアカウントであればデータの取得が可能です。

新APIへの移行により制限された項目は多いですが、個人情報の取り扱いには最新の注意を払わなければならない時代ですから、安心して10億人以上のInstagramユーザーにサービスを利用してもらうには必要な変更だったと思います。

Facebook社のスクレイピングに対する意識

さて、先ほど「いいねの自動化ツール」のところで「このような機能はすべて公式APIを用いては実現できなくなりました」と書きましたが、実は現在もサービス提供をしているツールが存在します。
どのような方法でサービスを継続しているのかについて簡単にお話したいと思います。

このようなツールの多くは、「スクレイピング」と呼ばれる技術でWEB上のデータを無許可で取得したり、ブラウザを機械的に操作して「いいね」などのアクションを行ったりしています。

スクレイピング自体は違法行為ではないですし、節度をもって利用すれば便利な技術なのですが、ベンダーのシステムに負荷がかかったり、ユーザーの情報が必要以上にプラットフォーム外に流出してしまうことから、Twitterの様に利用規約で明示的に禁止している場合もあります。

Facebook社もAPIの仕様変更を行った背景から分かるように、スクレイピングに対して友好的な態度を取っていません。

最近では、以下のような提訴が起きた事例も起きています。

スクレイピングを用いることで、本人に許諾なくインフルエンサーのリストを作成・管理することも可能です。

インフルエンサーを管理するにあたって、自動でインフルエンサーのリストを作成したり投稿データを把握したいという企業のニーズは間違いなくある一方で、APIではそのような情報が取得不可能なことを考えると、このようなスクレイピングはFacebook社の個人情報管理ポリシーを逸脱していると考えるのが自然ではないでしょうか。

Instagramのデータとどう向き合っていくべきか?

最後に、Instagramのビジネス活用の需要が高まり、求められるデータの量や幅も拡張していく中で、「私たちのようなサービス利用者はInstagramのデータとどう向き合っていくべきなのか」という問題について、私たちの見解をお伝えしたいと思います。

「自社のアカウントのフォロワーをリストで抽出したい」
「他社のアカウントがどのようなハッシュタグを使っているのかを一覧で見たい」
「キャスティング予定のインフルエンサーと自社ブランドの相性が良いのかチェックするために、事前にインサイトデータを確認したい」

など、Instagram運用に携わる方が知りたいデータは、施策の幅が広がるごとに増えていくことでしょう。もちろんそれらが取得できれば、より有効な施策を打つこともできるかもしれません。

しかし、「それらはInstagram側が利用を正式に許可しているデータなのか」「そのデータを取得することは不正利用にあたらないのか」といった懸念や配慮は必要です。データに基づいた定量的な判断は必要ですが、それがルールを守らず取得されたデータだったとしたら、健全なマーケティング活動だと胸を張っては言えないからです。

フォロワーのリストを取得することはできませんが、ストーリーズのアンケート機能を利用すればどんなフォロワーが多いのか情報を集めることができます。インフルエンサーのインサイトデータを本人の許可なく把握することは難しいかもしれませんが、インフルエンサーに直接開示を求めることは可能です。

ルールを守った上で、自社にとって最善の取り組みを選択していく、そういったモラルある活動が現代企業には求められているように思います。
テテマーチが提供する「Instagram分析ツールSINIS(サイニス)」は、2018年のサービスリリース以降、日々アップデートされるInstagramのAPIと向き合いながら機能拡張を進めています。

現在も「このようなデータが取れると良いな」と思うことも多々ありますが、Facebook社に要望は伝えつつ、提供されるAPIで最大限、皆様のマーケティング活動を支援していければと考えています。


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