「やさぐれ魔法の王女様」 5、「レトリック」と言う歴史
クロムが屋敷に来る事を知ると、カレンは咥え煙草でバケツを手に取り水を入れ始めた。太めのロープを「一般的な玄関」に取り付けてあるいくつかの滑車に手際よく通していく。最後に水の入ったバケツを玄関の外にある天井の上に置いた。
カレン
「今度こそ、ひっかかるわね」
セットしていたのはドアを開けるとバケツから水がこぼれ、その下に居る人が濡れるという発想が小学生で行動が大人という仕掛け。しかも本気でやっているため取り付けてある滑車にはきちんと外壁の色まで塗られていた。
双眼鏡を持ち出すとベランダ越しに道を眺める。するとクロムを乗せている車が現れた。その光景を見ていたユイが「なにしてんですか・・・」とあきれた様子をしていた。
カレン
「ふふん、これがクロムと私の関係性よ。お互いに王族、油断をしているとこうなるの」
ユイはため息を付いた。
クロムが乗った車が屋敷に到着するとメイドがトランクから大きなスーツケースを2つ取り出してクロムに渡した。2人で少し話した後メイドは乗ってきた車に乗り込み、来た道を戻っていく。スーツケースを引きずって玄関の前に来ると、わかっていたかのように上を見上げた。
クロム
「またやってあるよ・・・これで何度目?」
呆れた顔でクロムは少し離れたところに荷物を置き玄関のドアの開く側に立ってドア開けた。するとドアに繋がれたロープが滑車を伝ってバケツを天井から落としてその場に水が散らばった。その光景を見届けたクロムはカレンの部屋の位置を見ると双眼鏡でこちらを見ているカレンを発見した。
カレン
「・・・なかなかやるわね」
クロムがため息を付いているとドアを開けてユイが中から出て来た。
ユイ
「申し訳ありません、クロム様。カレン様に付き合っていただいて・・・」
クロム
「・・・いいんだよ、カレンはそういう奴だから」
2人はカレンの方を見て笑いあうと、後ろに置いてあったスーツケースを転がして屋敷の中に入っていった。クロムがカレンの部屋に通される。
カレン
「バケツに気が付くて凄いじゃないクロム」
クロムはジト目でカレンを見た。
クロム
「・・・何回目だと思ってるの?あのバケツのやつ。そろそろ別の手で来るかなって思ってたけど、ずーっと同じなんだもの。そりゃわかるでしょ」
カレン
「あら?でもこの間ネットをみたら、同じような面白くないネタを馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返していたから・・・それが流行りなのかと思って」
クロム
「そんなの流行ってないよ、そういうことをやるのはただ単に面白くないってわかってないか本当にバカのどっちかだよ。・・・そんなくだらない事ばっかりやってんじゃないよ」
そういうとクロムは持ってきたスーツケースを開いた。
カレン
「その大荷物は何よ?・・・もしかして家出でもしてきたの?」
クロム
「まあ、そんな感じかな」
カレン
「本気?」
クロム
「冗談だよ」
カレンはクロムの頭にチョップをお見舞いした。
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【物語】やさぐれ魔法の王女様
完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。
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