「やさぐれ魔法の王女様」 3、クロム・レトリック
王都から少し離れた地方都市「バンデル」という街でクロムはガルド国王の第12子として誕生した。カレンの2歳下になる。
母親はビタリア・サテモス第9夫人。レトリック王国で有力な貿易会社の社長令嬢。
誰がどう見ても完全な政略結婚であり、ビタリアの父トワイプスは「王族と繋がる」という事に自分の人生と一族の運命を掛けていた。しかし、クロムが生れる直前にトワイプスは病死。クロムが生れた1年後にビタリアも病死してしまう。
そんな様子を見ていた親族は「無理やり魔法を使える王様と一般人との間に子供をもうけたからだ」という全く根拠のないことでクロムを非難し始めた。
クロムの幼少期は悲惨だった。その扱いはある意味「母との死別」を越えるひどい扱い。何よりも厄介だったのがクロム自身に付いて回る第12子という看板。その看板のみを利用されるようになる。
きっかけはビタリアとトワイプス。この2人が急死したことによって貿易会社の経営が徐々に悪化していった。
この会社に恩恵を受けていたのはその親族だけではなく、その地方都市も例外ではなかった。巨大な企業は巨大な雇用を生み出し、巨大な雇用は巨額の税収や他の産業利益、都市の循環を生み出す。街は長い年月を掛けて貿易会社を中心に回るように構築されていった。
意図せずとも貿易会社は独占的に街の経済を操作していたため、多くの恨みを買っていた。そのため経営が悪化してくるとグループ会社を次々と切り離していくが、売却もままならない。そうやって最後に倒産させていくしか道は残されていなかった。
しかし、そんなとき悪魔が誰かにささやきを入れたのである。
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【物語】やさぐれ魔法の王女様
完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。
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