「やさぐれ魔法の王女様」18、大抵の物は〝空想の有機物〟
魔の領域から帰ってくるとカレンはエメットと一緒に川で防毒服を洗ってガレージに干していた。
ローレル
「無事だったようね」
カレン
「ええ、お陰様でね。ありがとうね心配してくれて」
カレンはエメットとローレルにお礼を言って自宅に戻った。
自室でカバンを広げると拾ってきた本を開く。そこに書かれていたのは龍の観測記録だった。
カレン
「ここに無いのを疑問に思っていたのよ」
それを一枚一枚丁寧に見ていき、自室に置いてあった本と照らし合わせながら読みふけっていく。昼食も部屋で済ませるとカレンはずっと本と向き合っていた。
しばらくすると部屋をノックする音が聞こえて来た。
ユイ
「カレン様?お客様が来てます。エメットさんです」
カレン
「・・・・」
返事が無いことを心配してユイが扉を開けると、そこには本の山に埋もれているようなカレンが机の上で資料とにらめっこしてた。
ユイ
「カレン様・・・?」
カレン
「ああ、はいはい?エメット?いいわよ、ここへ通してあげて」
ユイ
「良いのですか?・・・こんな汚い場所に案内して」
カレン
「・・・それが彼がここに来た理由よ」
ユイはため息を付くと玄関に向って行き、エメットをカレンの部屋に案内した。
ユイ
「お茶をお持ちしましょうか?」
カレン
「ええ、そうして頂戴な。・・・あと何かおやつ的なモノがないかしら?」
カレンは煙草に火を付けると部屋の窓を開けて空を見上げた。すっかり日が暮れて夜になっていた。コンコンとノックの音が響き渡り、扉の方を見るとエメットが来ていた。
カレン
「そこに椅子があるでしょ?座っていいわ」
本や資料、標本などにまみれた部屋をみてエメットは驚いていた。もっと優雅で豪華な部屋だとばかり思っていたのだろう。カレンの部屋はそんな想像とはかけ離れていた。
カレン
「あなたがここに来た理由は一つでしょ?昼間の話の事ね?」
エメット
「はいそうです・・・あれから少し考えました。確かに村では芋と豆を合わせて作っていましたし、豆を外に持ち出しても上手く行かないのも聞いたことが有りました」
エメットは体を前に出した。
エメット
「ですが、根っこの話が分からなかったんです。人の体には根は有りません。ですがカレン様は有ると言ってました・・・それがどうしても」
カレンはニコニコしながら煙草をふかした。
カレン
「根っこの正体を知る前に、もっと前に知らなければならないことがいくつかあるわ」
カレンは机の上に置いてある本を一冊取り上げるとエメットに渡した。それは植物の育ち方や育て方が書いてある本だった。
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【物語】やさぐれ魔法の王女様
完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。
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