「やさぐれ魔法の王女様」15、辺境の王女様
カレンは屋敷に戻って中を見て回る。台所の水道の蛇口をひねると水が出るのとトイレがとりあえず使えることを確認した。
カレン
「何とかなりそうかしらね」
しかし、灯油がタンクに入っていないことやガスボンベが空っぽの為ためお湯と火が使えない。カレンはローレルにそのことを相談すると「うちのを使えばいいわ」と言ってくれたので今日は風呂を借りることにした。
屋敷はそれなりに古びてはいるもののさすがは王族が使う事を考えて作られたのか、しっかりとした作りをしている。ユイとクロムは取りあえずの物を購入しに隣街へ出かけて行った。
カレンは2人を見送ると広いガレージの中を確認し始めた。そこには様々なモノが置いてある。チェーンソー、エンジン付きの草刈り機、それから4輪バギーにスノーモービル。
アレストの領主の主業務はこの魔の領域に潜んでいる域龍「毒龍」の監視である。ここはその監視の前線基地的な役割を持っている。そのために必要になるだろう道具や乗り物がここに一通り揃っているようだ。
壁にかけてあるゴム製のコートを手に取ると、その掴んだ部分からボロボロと崩れ落ちた。
カレン
「ゴムが劣化していて使い物にならないわねこれ」
防毒マスクや手袋、長靴。ほとんどのゴム製品やビニール製品は紫外線などを浴びて劣化し使い物にならなくなっていた。カレンは壁に掛けてあったマチェットを手に取るとさやから刃を引き出す。
カレン
「・・・これはいけそうね」
窓から差し込む光が刃先を光らせる。しっかり手入れをして仕舞ったのだろう。これだけ錆がほとんどない。マチェットを持って庭に出ると伸び放題になっていた雑草を刈り取り始めた。切れ味は良好である。
カレン
「でもこれ以外はほとんど使いものにならなそうねぇ・・・直したり新しくする必要があるわ」
ここに派遣された過去の王族はもちろんこれらの道具や乗り物を使ってはいない。おそらく全て王宮からの貸与品だろう。ローレルの言う通りこの集落の現状を知ると隣街にある住居を借りてそこに住んでいたのだ。それを王宮は知っていたのだが咎めることはしなかった。
カレン
「まあそれを確かめようなんてする奴がいるわけないか」
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【物語】やさぐれ魔法の王女様
完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。
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