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■要約≪バリュー・プロポジション・デザイン≫
今回はAlex Osterwalaer・Yves Pigneur著の「バリュー・プロポジション・デザイン」を要約していきます。リーンキャンバスを構成する「バリュー・プロポジション」にフォーカスしてプロダクト・事業開発をしていく為に抑えるべきポイントや望ましい手順を体系的に記述した本です。本書はビジネスモデルについて言及した「ビジネスモデル・ジェネレーション」の続編として有名です。
「バリュー・プロポジション・デザイン」
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■ジャンル:IT・経営
■読破難易度:低~中(用語や思考法になれないと読みづらさを感じるかもしれません。豊富な図解とデータを基に記述されているので、慣れていればサクサク読むことが出来ます。)
■対象者:・プロダクト開発に従事する方全般
・仮説検証を伴う業務に従事する方全般
・イノベーションの原理原則に興味関心のある方
≪参考文献≫
■ジョブ理論
■要約≪ジョブ理論≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント
■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■UXデザインの教科書
■要約≪UXデザインの教科書 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪UXデザインの教科書 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
【要約】
■キャンバス
・価値創造キャンバスには顧客プロフィール(お客様をよりはっきりと理解するためのもの)とバリューマップ(顧客のためにどう価値を創造するかを描くもの)の2種類があり、その2つが重なりあう所にフォーカスするべきなのだとされます。「顧客が求めていて、自社がうまく価値提供出来る所」ということです。バリューマップは製品/サービス・ペインリリーバー(悩みを取り除くもの)・ゲインクリエーター(恩恵をもたらすもの)で分解されます。つまり、「何を課題解決し、どんなアウトカムを顧客へもたらすのか?」ということを整理したものです。顧客プロフィールは顧客の仕事(顧客が成し遂げたいことを顧客の視点で記述)・ペイン(顧客の仕事に関係する悪い結果、リスク、障害)・ゲイン(顧客が達成したいこと・顧客が求める具体的な恩恵)の3つに分解されます。
■デザイン
・顧客プロフィールとバリューマップを照合してプロダクトの骨格を明らかにした後は簡単なプロトタイプを作ります。顧客を理解してバリュー・プロポジション・デザインを形作り、その中から更に開発を続けるものを選び(マーケットポテンシャル・競合優位性・実現難易度・収支などを総合的に加味して取捨選択していく、その意思決定プロセスも大事)、適切なビジネスモデルを選定するのが次の段階でやることです。
・事業のコアとなる概念が定まってきたら、そのタイミングでリーンキャンバスの各項目(主なパートナー・主な活動・リソース・バリュー・プロポジション・顧客との関係・チャネル・顧客セグメント・コスト構造・収入の流れ)を埋めることをするのが良いとされます。あくまで「顧客が誰で、どんな資源を活用して価値を提供するか?」を明らかにするのが先決です。そうすればパートナーやビジネスモデル・コスト構造などは自然と規定されるものだからです。技術上の制約条件・顧客のペインについて深い洞察を得ることが重要であり、そこにこそイノベーションの種や「お金を払ってでも解決したいビジネス問題」が潜んでいます。
・プロダクトは顧客のある文脈におけるペインやゲインを支援するものであり、その前後に潜む制約条件や行動の変遷・顧客の価値基準における優先順位付けを把握して急所になる所に閉じて尖ったプロダクトにするのが基本となります。
■テスト
・大事な原則として下記10個が存在します。
「エビデンスは意見に勝る」
「失敗を受け入れることで素早く学びリスクを減らす」
「早期にテストし後で改良する」
「実験と現実が食い違うこともある」
「学習とビジョンのバランスを取る」
「アイデアの決定的な欠陥を見つける」
「顧客を理解する」
「計測できる形で検証する」
「すべての証拠が信頼できるとは限らない」
「取り返しのつかない決定については特に念入りに検証する」
・顧客開発のコアとなる4プロセスは顧客の発見→顧客への実証→顧客の創造→企業の構築です。顧客を定義し、効果的な価値機能の優先順位付け・販売チャネル・マーケティング手法の特定とKSFの特定をすることで事業として成立します。
【所感】
・プロダクト開発・事業開発はいわゆるジョブ理論・デザイン思考・3Cなどのフレームワークを総動員して、水面下で無数のプロジェクトマネジメントを行いながら遂行していくある程度定型化された手法であることが本書の内容から伺えます。モノで溢れた時代において、製品単独で優れた価値(主に機能面)を実現することは不可能であり、文脈(体験価値)に基づいた緻密なUXデザイン・ビジネスモデル・チャネル設計・選定をしていくことで総合的に価値が形成されるものであるということがよく理解できます。
・本書単独で大きな示唆を得たというよりも、これまで読んできたITプロダクト関連の本や自分自身で思考・検証してきたテーマが一本の線に繋がったような体験を得る内容の本でした。確立された手法・お作法があるのであれば遵守して自分で実践することで要諦を掴みながら自分の色を出していくのが大切と再認識した次第です。(認知コストを下げ、後のステークホルダーとの合意形成プロセス迄考慮するとMECEが担保されるフレームワークを使い倒すというのはシンプルながら芯を食っていると感じました。)
以上となります!